診療内容(乳腺外科について)

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乳がんについて

日本における乳がん罹患数は女性がんの中で最多、年間4万人を超えようとしています

 患者発生数は年齢40歳代と、母親・仕事において最も頼られる年代に多く、家庭や社会への影響が大きく、大きな問題と考えられるようになっています。

集学的治療により優れた治療成績が得られるようになりました

  乳がんは、近年の治療法の発達から手術・化学療法(抗がん剤や分子標的薬)・内分泌療法・放射線療法などを組み合わせて行う集学的療法により、優れた治療 成績が得られるようになりました。手術を行った後に化学療法などの術後補助療法を行った方が良いと考えられる例は、手術症例の50%以上を占めるようになっています。 また手術前に薬物治療を行うことで、乳房温存率を高めることも可能になってきました。乳がんを手術だけで治療する時代はすでに終わっています。

乳がんに対する治療法はこの10年間で大きく変化しました

 乳房切除術は、胸筋合併切除から胸筋温存手術へ、近年では乳房温存手術が半数以上を占めるようにもなり、手術は縮小される方向に進んできています。

  乳がんの手術は縮小していますが、乳房切除術の場合は、乳房の形が失われてしまいます。そこで、乳房再建といって代用物を用いて切除後の乳房を作りなおす 手術も行われるようになってきています。この方法には、自家組織(自分の体の筋肉や皮膚を移動させて乳房をつくる)を用いる方法や人工物(シリコンなど) を用いる方法がありますが、当院では形成外科医師との連携によって適応のある患者さんには再建手術を開始しております。

  乳がんは腫瘍が小さい時期に手術をしても、10年たってから再発することもあり、 手術自体は軽くなっても、完治したのか分かりにくく、病院との長いおつき合いが必要であることも一つの特徴です。 逆に、万が一再発しても、集学的治療を行うことにより、10年余にわたり、 日常生活を営んでおられる患者さんもあります。 消化器がんなどに比べると、性質のおとなしいタイプのがんが多いと考えられ、 生活の質を落とすことなく治療していくことも可能な場合も多く、決してあきらめることはありません。

  乳がん領域の薬剤は、最先端の分子生物学により作り出された新薬がどんどん開発・臨床応用されており、数年前の治療がすでに古くなると言うことが当たり前 になっています。 新しい治療法も積極的に取り入れる事が必要と考えております。私たちは保険診療の枠組みで使用可能なものから、治験段階の最新薬物に至るまで幅広い治療オ プションを揃えております。

チーム医療が進んでいます

  乳がんと診断された時は、精神的にも強い不安をお感じになられることと思います。私たちの病院は、現在チーム医療を進めており、外来でも入院病棟内でも医 師、薬剤師、看護師、放射線技師、検査技師を含めた診療・支援体制を築き、心のケアを含んだ治療に関わるサポート体制を整えております。 治療方法に関しても、患者さんそれぞれの事情を考慮し、いくつもの選択肢をご説明し、ご希望をお聞きした上決定する方針をとっております。

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乳腺外科について

乳腺外科の担当スタッフ

吉田和弘 教授
昭和59年卒業
二村学 客員准教授
昭和63年卒業
名和正人 助教
平成9年卒業
森光華澄 客員助教
平成10年卒業

乳がん症例数

乳腺外科の特徴

'総合診療力の高さ'
'ガイドライン準拠'
'新たなエビデンスを発信する探究心'

診断

  • スタッフは全てマンモグラフィ読影認定医A評価を持ち放射線科と合わせ県内最多の5人在籍しており高い読影能力を有しております。
  • 2013年2月には最新のマンモグラフィが導入され、断層撮影機能 (トモシンセシス)によっていままで発見しにくかった病変に対する診断技術の向上が期待されます。MRI, CTを併用して用いた高いレベルでの乳腺診断も行っております。
  • 超音波機器でもエラストグラフィという「しこり」の硬さを判定する機能や、MRIやCTとの融合画像(RVS, Vnav)機能といった最新技術を用いて、初期診断、治療効果判定、手術手技への応用など幅広く活用しております。
  • これらの検査結果は全症例、乳腺外科症例カンファレンスにて検討し、複数の眼でチェックすることで見落としや、過剰診断を防いでいます。生検(病理)検査は従来の針生検に加え、超音波ガイド携帯型マンモト-ム(バコラ)、ステレオガイド下マンモト-ム(2013.2導入)などあらゆる方法で行い、生検材料は複数の厳しい病理医の眼で判定されます。

手術

  • 乳房全摘から温存手術まで縮小手術を中心として乳腺のあらゆる手術に対応しています。
  • 不要な腋窩リンパ節郭清を避けるためにセンチネルリンパ節生検をいち早く導入し、エピデンスに基づいた縮小手術を行っています。
  • 温存手術も積極的に行い、大学病理医の厳しい判定をもっても断端陽性率は低いです。
  • 全身麻酔は麻酔科専門医にて施行されており併存症をもつ患者さん、高齢の患者さんも安心して手術をうけていただいています。
  • さらに形成外科との連携によって、適応があれば乳房再建手術も施行出来るようになってきています。

薬物治療

  • 薬物療法については基本的に乳癌診療ガイドラインに則った治療を行い、チーム医療を推進しています。当科スタッフにがん診療専従薬剤師、看護師を交えた症例検討会を毎週行い、個々の患者さんの情報検討・収集に努めています。薬剤師は毎回治療前面談を行い、治療にかかわる副作用を細かくチェックし、副作用の早期発見・対策に務めています。看護師は乳腺外来、化学療法室の両方できめ細やかな患者観察・サポートに余念がありません。
  • 特に最近は術前化学療法に力を入れており、従来ならば温存不可能であった症例が温存可能となる症例が増加しています。

放射線治療

  • 乳房温存療法は放射線療法との併用が原則です。当院では放射線治療専門医による最新の照射機器を用いた照射療法を行っています。
  • その他にも、局所病変のコントロール・骨転移などへの緩和照射・ストロンチウム製剤を用いた治療も放射線治療医との連携によって施行可能です。

緩和治療

一昔前は緩和医療という言葉は、終末期の患者さんに対する言葉でした。しかし、現在では治療時期はいつであっても日常の生活を有意義に過ごしていただくためのすべての方法を緩和医療として捉えることができます。私たちはチーム医療ですべての患者さんを支えていきます。しかしながら残念なことに、現在もある一定の割合で乳癌は再発し、終末期をお迎えになられる患者さんもいらっしゃいます。当院では主治医、麻酔科医師、精神科医師、薬剤師、看護師、栄養士、ケアマネージャーが緩和ケアチームを構成し、生活の質(Quality of life)を保つ方法を考えながら治療を進めるよう努力しております。

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研究

臨床研究

一連の臨床研究はすべて岐阜大学医学部倫理審査委員会の厳格な審査を経た上で、患者さんに説明させていただき、同意の得られた患者さんに対して行わせていただいております。

  1. センチネルリンパ節生検に関する研究
    センチネルおよび非センチネルリンパ節への転移予測(臨床・病理学的・分子生物学的)の検出、予測と腋窩郭清省略の検討を行っていきます。
  2. MRI/CT融合超音波診断法の研究
    MRIやCT画像と超音波画像をリアルタイムにfusionさせることで、今まで通常の超音波検査では発見できなかった微小乳がんの発見が可能になってきました。この方法にはRealtime Virtual Sonography (RVS)とVnavという2種類の検出法を使い、過不足ない乳房温存手術への応用のための研究を行っています。
  3. 術前化学療法の新しい評価法の開発
    乳がん術前化学療法を受けられる患者さんの治療効果を超音波で測定し、3次元でのがんのボリューム測定を行い、より簡便で信頼性のある治療効果の新しい判定法の開発に努めています。さらにがんの内部の血流を測定するという別の方法でも有用性を検討しています。
  4. 新規乳がん腫瘍マーカーの開発
    今後有望と思われる新規腫瘍マーカーの候補タンパクを、患者さんの血清から測定し、臨床応用可能かどうかの検証を行っています。
  5. 血中遊離がん細胞に関する研究
    血中の遊離がん細胞と抗がん剤治療効果の関係についての検証を行っています。

基礎研究

  1. HER2陽性乳癌と好中球エラスターゼの関連、Trastuzumab耐性へのTGF-α関与およびsivelestatによる耐性解除の研究
  2. 新規乳がん腫瘍マーカー関連タンパク質の薬剤感受性への関与と、転移能に関する研究
  3. タキサン系抗がん剤耐性遺伝子に関する研究

 

治験・臨床試験

 岐阜地区、全国、国際レベルの様々な試験に参加して、患者さんに最良の治療法を提供しつつ、新しいエビデンスづくりに努めています。

  1. TDM1 および ペルツズマブの有用性に関する国際第3相試験
  2. ベバシツズマブの乳癌における有用性の検証
  3. 新規タキサン系薬剤の術前化学療法における有用性
  4. ホルモン陽性乳がん術後内服抗癌剤投与の有効性
  5. HER2陽性乳癌におけるハーセプチン継続投与の有用性
  6. タモキシフェンと遺伝子多型に関する治療効果の関連性

 

乳房再建術

乳房再建術とは、乳がんの手術によって乳房を失くしたり、大きな変形を来された患者さんに対して、さまざまな方法を用いて乳房を再建する手術です。手 術の目的は乳房のボリュームの欠損を補うことで、大きく自家組織(自分自身の筋肉、脂肪組織など)を用いる方法と、人工物(シリコンなど)を利用する方法 があります。これらの方法によってまた乳房を取り戻すことができる患者さんも現れ、身体的のみならず精神的にも良好な経過を期待できるようになってきました。

自家組織は筋肉組織、例えば背中の筋肉(広背筋)やお腹(腹直筋)の筋肉を用いる方法な どがあります。これらの手術は初回手術につづいて行う場合(一期的)、初回手術後に改めて手術を行う(二期的)場合があります。いずれも保険診療の範囲で の手術が可能です。人工物による再建方法では、初回手術時に組織拡張器(エキスパンダー)などをいったん入れて乳房を膨らませて、後日にシリコンなどの人 工物に入れ替える再手術を行うのが一般的です。この場合は保険診療の範囲外となり、自費診療の範囲に及びます。

当院では形成外科医師との連携によって、自家組織を用いた再建術を中心に行っております。ご希望の方には、乳腺外科医、形成外科医との面談を行い、十分なご説明の後に施行していただけます。

MRI/CT 超音波融合画像による診断 Realtime Virtual Sonography (RVS)

RVS/V navとは、CTやMRI画像と同期させた超音波診断技術のことです。

造影MRIは乳がん検出能が高い検査であり、乳房温存手術の適応や切除範囲を決める際に かくことができません。しかし、しばしば複数の造影部位が認められ、この病変が乳腺のどの部分にあるかが通常の超音波検査だけでは分かりにくい場合があり ます。この技術を使うことで、MRI画像と、超音波画像を同時に確認 しながら検査できるため、多発病巣の確認や乳がん進展範囲 の進展に役立つことが期待されています。実際、通常の超音波検査で発見できなかった微小乳がんの発見に至った例がこれまでにいくつかあります。

この技術は乳がんの大きさを立体的に捉えることができます。これを術前化学療法の患者の 病変評価に用いることで、簡便・短時間に治療効果の判定が出来るようになることを確認しています。この検査は施行中、患者さんにはまったく苦痛がなく、検 査の時、治療効果を患者さん自身にも実感していただくことも可能です。

左のMRI画像において、〇で囲んだ微小乳癌でもRVSの技術を用いることで超音波による腫瘍の同定が可能になり(右矢印)、正確な切除範囲の決定に大きな役割を果たしています。

トモシンセス

 乳がん診断の、基本はマンモグラフィの撮影に始まります。検診においても診療においても欠くことができません。当院でもスタッフは読影技術・診断精度の向上を目指しています。トモシンセシスとは、マンモグラフィの断層撮影技術で、乳腺を(ぱらぱら漫画のように)何層にも分けて撮影することで、乳腺組織深部のしこりの診断がより正確に行えます。岐 阜県内のみならず全国的にもまだまだ導入施設は少ない最新診断装置で、MRIより、短時間・安価で出来るのも強みです(2013年2月導入)。いままで判 定が困難であった症例にも威力を発揮できるものと期待されております。またステレオガイド下マンモト-ムもあるため、石灰化病変の生検も可能になります。

 トモシンセス(左)           従来のマンモグラフィ(右)

小さな腫瘤(しこり:左)や細かい石灰化(右)など、従来のマンモグラフィでは判別困難であった病変が明瞭に描出されています

センチネルリンパ節生検

センチネル(見張り)リンパ節とは、がんからのリンパ流が最初に流れ着くリンパ節のことで、癌が最初に転移するリンパ節と考えられています。

センチネルリンパ節生検とは、がんの周りに色素やRIで標識した粒子を注入して、手術中 にリンパ節を探し出し、このリンパ節に転移があるかどうかを探し出す方法で、乳がん手術にあたってはこのリンパ節をまず取り出して転移の有無を確認しま す。センチネルリンパ節に転移がない場合は残りのリンパ節にも転移がないと考えられるのでリンパ節郭清を省略することができ、不必要な手術を避けることが 可能となり、これに伴う合併症を減らすことができます。(上腕の運動障害や知覚異常、脇の下や腕のむくみの発生頻度が少なくなります。)

センチネルリンパ節生検の病理診断結果によって、さらに厳密な手術適応の検討を行う試みも始めております。

センチネルリンパ節の同定
A(腫瘤)直上にRI標識粒子を注射し、B(センチネルリンパ節)を描出し、検出装置(右)を用いて皮膚から最短距離(下左)にてピンポイントにセンチネルリンパ節を探し出します(下右)。

外来化学療法 

乳がんに治療において薬物治療は欠かせないものとなってきました。代表は抗癌剤で様々なお 薬のレジメン(メニュー)がありますが、当科においては標準的な(現在までに使え、もっと有効とされる)レジメンはほぼ全て使用可能です。さらに、患者さ んによっては最新の治験よる治療を受けていただくことも可能です。目覚しく進歩している分子についても同様です。これらの薬物は基本的に外来化学療法室に て投与されますが、常駐の専任薬剤師、看護師もふくめたチーム医療の実践にて、きめ細かなフォローが受けられることから、患者さんの評判も上々です。