診療内容(食道外科について)

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食道外科について

食道は、喉(咽頭)と胃の間をつなぐ管状の臓器で、口から食べた食物を胃に送る働きをしています。食道がんはその食道に発生するがんのことをいいます。早期の食道がんは、症状がほとんどありませんが、しみる感じや違和感を感じることもあります。食道がんが進行すると喉のつっかえ感、体重減少、声がかすれるなどの症状が現れます。食道がんは、がんのなかでも、治りにくく重い病といわれています。また手術は長時間を要し、体の内外の傷も大変大きなものとなります。私たちの病棟に入院してこられる患者さんは、手術する患者さんだけではなく進行している状態であったり、高齢であったり、他の病気をかかえておられたりと、手術できない患者さんも大勢いらっしゃいます。進行した食道がんの治療は手術放射線抗がん剤が3本柱です。内科・放射線科・頭頚部外科と連携し患者さんにとって一番よい治療法を選択することをスローガンにあらゆる食道がんの患者さんを診療しようと考えております。

担当スタッフ

  • 吉田和弘(教授)
  • 山口和也
  • 田中善宏

この五年間の症例推移

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食道がんのステージ

0期は、がんが食道の粘膜内にのみとどまっている段階です。
Ⅰ期になると、食道の粘膜に留まっていたがんが、すぐ近くのリンパ節まで広がっているか、リンパ節まではいかなくとも粘膜の下層にまで広がっている状態です。
Ⅱ期と分類されるのは、がんが食道の粘膜より下の筋層や、食道の壁の外側にまで出ていると考えられる場合やリンパ節への転移が認められたときはⅡ期に分類されます。
Ⅲ期は、明らかにがんが食道の外へ出ていると判断された場合や、少し距離のあるリンパ節にまでがんが見られている状態です。
Ⅳ期は、周辺臓器、胸膜、腹膜への広がりが見られたり、食道とは離れたリンパ節や臓器への転移が見られる状態です。

食道がん治療方針

食道がんは以前、早期発見も難しく、治療も困難で生存率は厳しいものでしたが、術前診断方法の進歩で比較的早期に発見できるようになったり、手術術式・手術機器・周術期管理の進歩や多種の薬剤を組み合わせた化学療法によってその予後は改善してきています。

治療方針の決定

治療方針に関して、食道カンファレンスを開き決定を行っています。外科・内科・耳鼻咽喉科・放射線科の先生とともに、治療方針を決定します。
食道の手術には、各科の協力が必要です。各分野の専門家の協力の下に、集学的治療を行っています。

当科での食道がん症例への治療方針

Stage 0/Ⅰ → 内視鏡治療 胸腔鏡下食道亜全摘術 もしくは化学放射線療法
Stage Ⅱ  →  術前化学療法(DCF・DGS)+根治切除術
Stage Ⅲ  →
Stage Ⅳa → 化学療法(DCF・DGS)効果得られれば根治切除術、術後化学療法追加
臓器浸潤を認める場合は、TXT・5Fu併用化学放射線療法→遺残あれば切除
(気管露出を認める場合は食道・胃バイパス術先行し、根治化学放射線治療)

内視鏡下粘膜切除

これは粘膜にのみ留まっている早期がんに対して、内視鏡で食道の内側から切除する方法です。早期退院が可能ですが、広範囲に広がっているがんの場合は治療後に食道が狭くなったり、がんの進行程度によっては追加で治療が必要になったりすることもあります。

進行がんに対しては、手術・化学療法・放射線治療が行われます。単独で行うこともありますがこれらを組み合わせて、それぞれの特徴を生かしながら相乗効果を出すための集学的な治療が行われます。

手術

手術は、食道の病巣の完全切除とがんが転移しているかもしれないリンパ節を十分な範囲取り去ることからなります。食道は胸部にあるので開胸が必要となります。また、食道を取り去った後には胃(既に手術で胃を切っている方は小腸や結腸)を持ち上げ、頸で吻合して食べ物が通る経路を再建します。それと同時に胸部、頸部、腹部では、がんが転移しやすい周囲のリンパ節も一緒に切除します。食道手術は頚・胸・腹部におよぶ広範囲なものとなり、外科手術の中でも最も大きな手術の一つになります。

完全胸腔鏡下手術症例も施行しており、術後の愁訴軽減、確実なリンパ節郭清をより一層実現しています。

 

放射線治療

毎日1回放射線照射装置に入り胸・頚に放射線をあてます。
1週間に5回(月~金)全部で6週間かかります。
その後の副作用からの回復期間効果判定などで1ヶ月を要します。

術前化学療法

術前のCT検査などによりリンパ節転移が疑われるような場合は、手術の前に抗がん剤治療を行うことがあります。従来は2種類の抗がん剤を用いた方法が主流でしたが、現在当科では3種類の抗がん剤を組み合わせた治療が行われる場合が多くなっています。この治療方法で起こりうる口内炎などの粘膜障害に対し、2008年からアミノ酸製剤での予防・軽減を開始し、最終的には成分栄養剤(腸管絨毛の維持効果を持ち、腸管免疫能、特に粘膜での免疫能向上効果)を用いて副作用の予防・軽減を計り、化学療法を支持しています。

当科での Chemotherapy regimen

DCF

XT:35mg/m2 CDDP: 40mg/m2 Day 1 15 5Fu:400mg/m2 Day 1-5 15-19

Biweekly docetaxel, cisplatin and 5Fu (DCF) chemotherapy for advanced esophageal squamous cell carcinoma:

a phase I dose-escalation study. Tanaka Y, Yoshida K etal. Cancer Chemother Pharmacol 66: 1159-1165,2010.

DGS

TXT:35mg/m2 CDGP:40mg/m2 Day7 S1:80mg/m2 Day1-14 (2weeks off)

Docetaxel, nedaplatin and S-1 (DGS) chemotherapy for advanced esophageal squamous cell carcinoma:

a phase I dose-escalation study. Tanaka Y, Yoshida K etal. Anticancer Res 31: 4589-4598,2011.

ステント留置

食道がんのため食べ物の通り道が塞がったり気管との間に穴が開いた場合、網状の筒を通し食べられるようにします。がん自体を治す治療ではありません。

バイパス手術

ステント留置をおこなっても十分に食べ物が通過できない場合に胃を筒にして頚の食道につなぐ手術をします。

当科での食道癌治療成績

Stage別治療成績

スライド2.JPG術後5年間での体重推移

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各Stageで非常に良好な全生存率を達成しています。 また術後の体重も平均1~2kgの減少のみでした。

この背景には、

  1. 術後の合併症特に縫合不全率を限りなくゼロに近づける術式
  2. 術前の3剤併用レジメンの使用と低侵襲手術、化学療法支持療法の確立
  3. 周術期の管理の工夫
  4. StageIV症例への積極的栄養介入


が、あげられます。

①安全かつ高い術後の質を保つべく再建方法の定型化

全例亜全胃再建を行い、2008年1月から2013年2月までの食道癌手術症例128例のうち縫合不全は1.5%の2例でした。その術後のQualityの評価も行い、EORTC QLQ-OES18 scoreでも良好な推移を確認し、安全かつ、患者のQOLもよい結果となっています。

縫合不全発症率 2例 ( 1.5 % )
幽門輪から吻合予定部までの胃の距離 29.1 cm( 26~33cm )
吻合部拡張術を要した症例 3例 ( 2.78% )
ダンピング症状 3例 ( 2.78 % )
体重変化(術前との差)(中央値) -1.52Kg(-10~+6Kg )
食事回数 全例半年以内に3回食に

EORTC QLQ-OES18 score

②3剤併用レジメンの確立と、化学療法支持療法の取り組み

DCF/DGS療法の開始で、従来のFP療法やS1単剤での食道癌化学療法の頻度は減少しています。この新規レジメンをふりかえります。これまでの使用経験のPrimary Endpointを奏効率・Down Stage率・R0根治術率・病理学的奏効度、Secondary endpointsを化学療法の安全性としました。DCF療法を16例(StageII2例、III8例、IVa6例)、DGS療法を16例(StageII3例、III4例、IVa9例)で施行しました。RECISTでの評価は、DCF:CR3例・PR12例で、奏効率は93.8%、DGS:CR3例・PR11例で、奏効率87.5%でした。PDはDGSで1例認めました(StageIVa症例)。手術後の最終Stageの変化として、Down stageが得られたのはDCF62.5%、DGS68.8%。全例R0根治術となりました。Grade2以上の病理学的奏効度はDCF:25%、DGS;37.5%でした。Grade 3以上の血液毒性は、DCF:43.8%、DGS:87.5%に認めました。Grade 3以上の非血液毒性は、DCF:25%(下痢・粘膜炎)、DGS:12.5%(同様)でした。Chemotherapy brakeは一例も(1コースも)認めませんでした。術死は認めませんでした。StageII・III症例に現在まで再発はなく、StageIVa症例のDCF2例で肝転移・リンパ節再発をDGS4例でリンパ節再発を認めました(観察期間はDCF群;7~46ヶ月、DGS群;5~36ヶ月)。

NACとしての3剤レジメンのもたらす現状も検討しました。術後の浮腫DCF/DGS群8.44±3.79Kg・NACなし群3.61±1.9Kg(p<0.001)。術後refillingまでの期間はDCF/DGS群81.1±74.16時間・NACなし群37±9.54時間(p=0.017)。術後合併症(嗄声・肺炎)・在院日数に差は認めませんでした。治療中癌関連死は認めませんでした。以上のようにDCF/DGSは高い奏効率を示し、有害事象に粘膜障害が多く、術後third space lossを顕著に認めました。

当科では、このレジメンに特有の強い粘膜障害に対し、2008年からアミノ酸製剤でのとりくみを開始し、最終的にグルタミンでの修復保護作用以上に成分栄養剤が功を奏しました。成分栄養剤は、腸管絨毛の維持効果を持ち、腸管免疫能特に粘膜での免疫能向上効果を確認しました。現在多施設でのPhase2試験へと発展しています。

 

 

③周術期管理の工夫

食道がん周術期において適正な輸液計画を怠ると、肺水腫・心不全・縫合不全・肺炎等重篤な合併症を併発します。当科ではSVV(stroke volume variation)値を指標とした周術期循環管理を行っています。循環動体の把握に中心静脈圧・心拍数・血中乳酸値・O2ERなどがありますが、血管透過性亢進状態と、refillに伴う血行動態を把握する上で、SVVの変動幅が最も的確かつ早期に反応したデータをもとに、術中からSVVを10%前後・ScvO2を70%以上に維持することで、P/Fratioの改善・肺炎の発生頻度減少・早期腸管運動の早期回復と、頻拍発作発症の軽減が実現されています。

④StageIV症例への積極的な栄養介入 ー最期まで患者さんのQOLを大切にー

初診時からの一貫した栄養サポートの患者へのもたらす効果は大きく、BSCまでの栄養介入は高い生活の質をもたらします。腫瘍医として、患者側にたった質の向上に照準をあてています。

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症例提示

Case1:術前化学療法で完全奏効を示した進行食道がん・胃がん手術症例

症例は74歳男性。嚥下障害を主訴に来院。上部消化管造影・内視鏡検査にて頸部進行食道癌(SCC)T4N3M0;StageⅣa・胃体下部から前庭部の進行胃癌(adenocaricinoma)が判明しました。食事摂取は困難な状態であり、8Frの経鼻胃管を挿入し、栄養管理とDGS療法を開始しました。1コース終了時点で食事摂取は可能になり、術前の2コースでCRconfirmedの状態になりました。根治切除術を施行し、n0で組織学的効果判定でGrade3(腫瘍を認めず)となりました。現在術後29カ月無再発生存中です。

初診時画像所見

 

上部消化管内視鏡で頸部食道に3型進行食道癌を認め、同時に胃体下部~前庭部の小弯側に2型進行胃癌を認めました。

 

上部消化管造影で頸部食道に気管を圧排する腫瘤影を認めました。 腫瘍が気管膜様部に接するCT像です。

 

 

DGS2コース施行すると、各腫瘤影はほぼ消失しました。

 

摘出標本に腫瘍は認めませんでした。

Case2:気道・食道閉塞状態から根治切除を行った頸部進行食道がん手術症例

症例は71歳女性。主訴は体重減少(半年で10kg)、嗄声、経口摂取不良。既往歴50年前に虫垂切除術。生活歴タバコ;20本/日×50年。2012年10月、近医耳鼻科受診。喉頭ファイバーにて下咽頭付近の腫瘍性病変を認め、頸部造影CTにて頸部食道を中心とした巨大な腫瘍と、周囲リンパ節腫脹を認めました。経口摂取は不能で、気道の閉塞寸前にて来院時緊急気管切開をおき、8Fr鼻注栄養を開始しました。DGS1コースで腫瘍の縮小を認め、経口摂取は10割に回復し、気管切開を終了しました。2コースを終了後に咽頭喉頭合併食道切除術施行しました。組織学的奏効度はGrade2でごくわずかに腫瘍性病変を確認するのみでした。

  

頸部食道に声門を圧排する3型進行食道癌を認め、PET-CTでは、初診時SUVmax17.5でした。

  

経過中のRBPの推移;栄養状態は鼻注で改善している。フェリチンの動向で奏効度を推定できる傾向にあります(1コースで上昇し、下降)

  

DGS2コースでPRconfirmed。各種検査結果、腫瘍の縮小を認めました。

摘出標本に肉眼的に腫瘍は認めませんでした。

食道癌に対する術前治療効果予測バイオマーカーに関する多施設共同観察研究 (KSCC1307)

はじめに

食道癌の手術に際して、術前治療として放射線療法や化学療法が行われることがありますが、どのような患者さんにその治療効果が高いのかを治療前に予測する有用なマーカーは確立していません。

われわれはこれまでの研究で、治療開始前の内視鏡検査で得られた食道癌組織を用いて癌に関連した蛋白質の発現を調べ、いくつかの蛋白質マーカーが術前治療効果に関与することを明らかにしてきました。しかし、これらの結果は、われわれの施設のみの限られた症例数における研究によるものであったため、複数の施設でのより多くの症例における検証が必要です。

よって本研究により、食道癌に対する術前治療の効果予測マーカーが明らかとなる可能性があると考え、研究を計画しました。

対象

九州消化器癌化学療法研究会(KSCC)の参加施設において、2000年1月1日‐2013年12月31日に食道癌に対する切除術が施行された症例で、以下の基準を満たす症例を対象にしています。

  1. 組織検査で扁平上皮癌であると確認された症例(遠隔臓器転移症例は除く)
  2. 術前治療として、放射線療法や化学療法が施行された症例
  3. 根治的な切除が施行された症例
  4. 術前治療施行前の食道扁平上皮癌の生検標本が保管されている症例
  5. 手術後の病理学的診断がついている症例 本研究の九州大学病院の対象者数は約50名を予定しています。
研究内容

本研究は、多施設による食道癌の患者さんの後ろ向き観察研究です。本研究の第一の目的は、食道癌に対する術前治療の効果を予測するマーカーを明らかにすることです。

すでに実施された診療についてのデータを調べますので、採血などの新たなご負担はありません。当研究で診療データを使用することを希望されない場合は、下記連絡先までご連絡下さい。

岐阜大学大学院・腫瘍制御学講座・腫瘍外科学分野
【TEL】058-230-6235 【FAX】058-230-6236