岐阜大学医学部附属病院がんセンター

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部門紹介

化学療法部門

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当院では,患者さんにより安心して化学療法を受けていただくため,がん治療を専門とする医師ならびに「がん専門薬剤師」を含む薬剤師,「がん化学療法認定看護師」を含む看護師によって化学療法部門を運営しています。そして有効かつ安全な抗がん剤を使用するために,レジメン審査部会において化学療法レジメンを審査しています。また化学療法室運営部門会議を設けて化学療法室の円滑な運営をはかり,より快適な治療を提供できるように努めています。さらに薬剤師や看護師による治療に関する指導も実施しており,抗がん剤の注意点や副作用などについてまとめたパンフレットも作成し,患者さんの不安を軽減するよう常に心がけて取り組んでいます。

化学療法とは

がん治療は外科的治療(手術),放射線治療,化学療法が中心となります。この3つの治療を単独で,あるいは併用してがんの治療を進めていきます。化学療法とは抗がん剤やホルモン剤による治療のことですが,その中には副作用を軽減するための治療なども含まれています。 がん治療における化学療法は近年目覚ましい進歩をとげています。慢性骨髄性白血病におけるイマチニブや大腸癌におけるベバシズマブなど,分子標的薬剤と呼ばれる新しいタイプの抗がん剤が実際の臨床で用いられるようになりました。それにともない,がんの治療成績も飛躍的に改善してきています。われわれがんセンターのメンバーは,この日進月歩のがん治療の世界で,世界標準といわれる高水準の医療を日々提供しています。

化学療法室の紹介

平成25年6月に化学療法室は新設の北診療棟2階に移転しました。これまでは13床の治療室でしたが,現化学療法室は31床に増床し,広々とした明るい空間となりました。リクライニングチェアを27台,治験などにも対応可能な個室ベッドを4床配置しています。患者さんにより快適に治療を受けていただけるように,各ベッドには液晶テレビとDVDプレーヤーを完備しました。

化学療法室では,経験の豊かな専門の医師,看護師,薬剤師が協力してより安全な医療を提供しています。移転にともない,患者さんの急変時に対応可能な処置室も化学療法室内に設置しました。また主治医以外にも,緊急を要する処置に対応できる当番医の体制も整備しています。

薬剤は,無菌調整室で専任の薬剤師が衛生的に調剤しています。化学療法室に常駐している「がん専門薬剤師」を含む薬剤師が患者さんの相談や指導にあたり,「がん化学療法看護認定看護師」を含む看護師が患者さんの看護にあたっています。

外来で化学療法室を利用されている多くの患者さんは,家事や仕事をしながら治療を継続されています。当院では化学療法室の移転にともない,環境,設備,スタッフをより充実させました。チーム医療によって患者さんがより快適な日常生活を送れるように,これからも多職種のスタッフが患者さん個々の症状にあわせたサポートを行っていきます。

スタッフステーション・受付の写真
スタッフステーション・受付
化学療法室の入口を入ってすぐにあります
 
リクライニングチェアの写真
リクライニングチェア
患者さんはテレビを鑑賞しリラックス
しながら治療を受けることができます
化学療法室内にある相談室の写真
化学療法室内にある相談室
薬剤師が患者さんの相談・指導にあたります
無菌調整室の写真
無菌調整室
薬剤は専任の薬剤師が衛生的に調剤しています

化学療法チームによる患者ケアの充実

化学療法室では医師、看護師、薬剤師などの多職種がチームを作り、個々の専門性を活かしてがん治療に取り組んでいます。化学療法においては、患者さん毎により効果的な治療が適切に選択されることはもとより、治療における安全性の確保も大変重要です。抗がん剤治療における安全性の確保として、以下の項目に取り組んでいます。
(1)  抗がん剤治療開始前に患者さんに対して治療や副作用についての内容と副作用への対処法の説明(初回オリエンテーション)
(2)  患者さんの検査値情報(腎機能、肝機能、骨髄機能)に基づいた抗がん剤の投与量や投与スケジュールの管理
(3)  抗がん剤による副作用のチェックと副作用予防もしくは軽減のための対策
(4)  副作用対策に関する各種ガイドラインの整備
(5)  お薬手帳を利用した患者さんおよび調剤薬局への情報提供
(6)  コンピュータによる抗がん剤自動鑑査システムを導入した確実な抗がん剤の調製
(7)  治療内容(化学療法レジメン)の審査および電子カルテへの登録・管理

現在、化学療法室には薬剤師3~4名が常駐し、全ての患者さんに対して面談を行い、治療状況や副作用の有無の確認、副作用対策の立案、残薬確認、などについて調べ、それらの情報を随時、カルテに直接記入しています。患者さんには必要に応じて当院オリジナルのお薬手帳や患者日誌をお渡ししています(図1)。このことで医師の診察が効率的に行えるようになり、また、患者さんへの質問が重複しないようにしています。その結果、治療の効率化が図られ、患者数は年々増加しています(図2)。

担当者は、患者さんが入院された時から、退院後の通院治療に至るまで、切れ目のないように関わるように努めています。

抗がん剤による副作用に対しては、国内外のガイドラインを参考に、適切な対策を立案し、医師、看護師、薬剤師が協同で取り組むことによって予防もしくは症状の軽減につなげています。2013年~2015年の3年間に化学療法室で治療を受けられた延べ約8,600人の患者さんにおける吐き気の状況について調査した結果、吐き気予防の対策は全体の90%に行われており(図3左)、これまでに報告されている値と比べて高く、さらに、94%の方は吐き気や嘔吐は起こりませんでした。

一方、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬は大腸癌、口腔や咽頭部の癌、肺癌などでよく使用されますが、皮疹が高頻度に起こり、ひどい場合には治療を一旦中止しなければならないことがあります。当院では皮疹を予防するための積極的なスキンケア対策を実施しています。この対策を行わなければ85%の患者さんに起こっていた皮疹が、対策実施後には44%まで低下しました。さらに、対策実施後には治療継続期間の延長が見られ(図3右)、この結果は治療効果がより長く持続する可能性を示しています。

これらのこと以外にも治療中に起こりうる様々な副作用に対して速やかに対処できるように準備しています。副作用を軽減することは患者さんの生活の質を向上させるだけでなく、治療効果そのものを向上させる可能性があるため、積極的に取り組んでいます。

外来がん化学療法室における薬剤師による診察前患者面談の実施状況および薬手帳への記録状況の写真
図1. 外来がん化学療法室にて配布している化学療法における注意点を記した当院オリジナルの患者日誌およびお薬手帳(持参されていない患者用)
外来がん化学療法室における診療前患者面談実施前後における商法提案件数の推移と処方提案内容の写真
図2.外来がん化学療法室における患者数、薬剤師による患者面談および診察前患者面談数の年次推移.2008年度から薬剤師2名、2010年度からは3名、2013年度からは4名が常駐し、全患者さんと面談(2011年からは診察前の面談も開始)を行い、副作用をより少なく、軽くすることによって患者さんの不安の軽減と治療効果の向上に取り組んでいます。
外来がん化学療法室における診療前患者面談実施前後における商法提案件数の推移と処方提案内容の写真
図3. 外来がん化学療法室における副作用対策.2013年~2015年の3年間において治療が行われた全患者さん(延べ数8,592)における吐き気予防対策実施率と吐き気・嘔吐のコントロール率(左図)および抗EGFR薬特有の副作用である皮疹の予防対策を行った時の治療実施期間の延長効果.

レジメン審査部会    

 ※レジメン審査部会は組織上、部門の外に組織されています。

がん化学療法では,作用メカニズムが異なる複数の抗がん剤を組み合わせて使用することがよくあります。その主たる目的は抗腫瘍効果を増強することですが,副作用を軽減するために使用することもあります。がん化学療法におけるレジメンとは,使用する抗がん剤の種類,用法・用量,休薬期間だけでなく,輸液や支持療法(制吐剤などの副作用予防目的で使用する薬剤)も含めて,投与に関する全てのものを時系列で示した治療計画をいいます。

抗がん剤を使用する目的は,治癒,手術により取り除けなかったがん細胞の死滅,再発予防,症状の緩和,手術前にがんを縮小させること,などさまざまです。抗がん剤は抗腫瘍効果を発揮する用量と毒性を発現する用量が近いため,用法や用量を間違えると致命的な結果を招くことがあります。さらに,がんの種類や進行度によっても効果が大きく異なります。したがって,抗がん剤による治療の開始にあたっては,使用目的,用法・用量,期待される効果,予測される副作用とその対策,などを明確にするとともに,それらの根拠となる資料が必要となります。

当院では,有効かつ安全な抗がん剤使用を推進するために,平成19年12月にレジメン審査部会を発足しました。この部会は,17の担当診療科の医師各1名,医療安全管理室医師1名,医療情報部医師1名,委員長(薬剤部長),看護師および薬剤師を含む26名の審査委員で構成されています(図4)

審査はまず,専門医およびがん専門薬剤師を含む5~6名の審査委員が予備審査を行います。次にその結果をふまえて,レジメン審査部会において本審査を行います。審査する内容は,有効性を示すエビデンス(調査研究の結果,その治療法がよいと判断できる証拠)の有無,保険適用の有無,抗がん剤の用法・用量,投与速度,休薬期間,適用基準(骨髄機能,肝機能,腎機能,身体状態,がんの進行度など)および副作用対策の妥当性,などです。

承認されたレジメンは,がんセンター運営委員会による承認を得たうえで,電子カルテに順次登録されます(図5)。担当診療科の医師は登録されたレジメンを使用することで,化学療法に必要な薬をもらさず安全に処方することができます。

レジメン審査部会の構成
図4. レジメン審査部会の構成
レジメン審査部会の構成
図5. レジメン審査の流れ