岐阜大学医学部附属病院がんセンター

トップへ戻る

    文字表示

がん治療について

頭頸部がん

トップ > がん治療について > 頭頸部がん

頭頸部がんとは

顔から首までの範囲にできるがん

脳、脊髄、眼球などを除いた、首から上にできるがんの総称です。舌がんを含む口腔(こうくう)がん、咽頭(いんとう)がん(上咽頭(じょういんとう)、中咽頭(ちゅういんとう)、下咽頭(かいんとう)) 喉頭(こうとう)がん、上顎洞がんなどの鼻(び)・副鼻腔(ふくびくう)がん、唾液(だえき)腺(せん)がん、甲状腺がん、耳・側頭骨がんなどが含まれます。

頭頸部がんの特徴

①発生頻度

全てのがんのうち、頭頸部がんの割合は約5%です。2013年の統計データから(国立がん研究センターがん情報サービス)、口腔・咽頭がんの罹患率は2.2%、喉頭癌は0.6%、甲状腺癌は1.8%です。 種類がとても多く、治療法や予後も異なります。頭頸部がんの多くは中高年の男性に発症します。甲状腺癌と下咽頭がんの一部のタイプでは女性の罹患率が高いです。


②どのような症状がでるか?


●口腔がん(舌がんを含む)
 舌の痛み、口内炎様の症状が続く、食事がしみる、出血、首のリンパ節の腫れ

 ●上咽頭がん
 鼻づまり、鼻出血、耳がつまった感じ、聞こえにくい、物が二重に見える、首のリンパ節の腫れ

 ●中咽頭がん
  飲み込むときの違和感、のどの痛み・しみるかんじ、血痰、首のリンパ節の腫れ

 ●下咽頭がん
  飲み込むときの違和感、のどの痛み・しみるかんじ、血痰、声がれ、首のリンパ節の腫れ

 ●喉頭がん
  声のかすれ、飲み込むときの痛み、飲みこみにくい、血痰、首のリンパ節の腫れ

 ●唾液腺がん
  耳の下・前部の腫れ、痛み、顔面麻痺、舌のしびれ、舌の痛み

 ●甲状腺がん
  声のかすれ、むせやすい、前頸部のはれ、首のリンパ節の腫れ


③頭頸部がんの原因

●喫煙
 国立がん研究センター予防研究グループによれば、非喫煙者に対して、喫煙経験者のリスクは2.43倍です。喫煙者の口腔・咽頭上皮では、がん化する前段階においても遺伝子変異が生じています。中咽頭がんでは10パックイヤー(1日1箱を10年:箱数×喫煙年数)がリスク因子になっています。

 ●飲酒
 飲酒指数60以上(sake index: 1日の日本酒換算した合数×飲酒年数;2合×30年=60など)で口腔・咽頭癌のリスクが上昇します。

 ●ウイルス感染
 中咽頭がんで、ヒトパピローマウイルス、上咽頭がんで、EBウイルスの感染との関わりが指摘されています。


④重複癌が多い

他のがんと合併することを重複がんといいますが、斉川らの報告によれば、頭頸部がん症例の14.5%に重複癌が発生しています。発生部位は、食道がんが最も多く、肺がん、胃がん、他の頭頸部がんとの合併がしばしば見られます。
特に重複がんが生じやすいのは下咽頭がん(食道、口腔・咽頭)、中咽頭癌(食道)、舌をのぞく口腔癌(食道)、喉頭がん(肺、食道、胃)です(中溝ら, 1993)。
飲酒や喫煙の影響を受けた領域の粘膜に遺伝子異常がおこり、多発するがん化がおこります。このため、治療前に十分な検索が必要となります。また、2次がん、再発がん予防のために、喫煙、飲酒をひかえることが重要です。10年の禁煙でリスクが低下することが知られています。


⑤生活の質(QOL:quality of life)

頭頸部は、呼吸、食事(そしゃく、嚥下(えんげ))、発声、味覚、嗅覚、聴覚など、生活の質にかかわる大切な機能を持った部位です。顔面や頸部など、外から見える部位でもあります。がんを治療するうえで、がんの根治性と、機能温存や容貌の維持を両立することは、しばしば難しいことがあります。


⑥生存率

がんと診断されてからの生存率(5年相対生存率):口腔・咽頭がんは男性57.3%、女性66.8%、喉頭がんは男性78.7%、女性78.2%、甲状腺がんは男性89.5%、女性94.9%と、がんの種類によって異なります。


必要な検査

治療方針を決めるために、病期診断を行います。腫瘍の大きさ、周囲組織への広がりの状態、転移の状況、重複がんの有無を調べます。
視診、触診、病理組織検査、CT、MRI、PET-CT、超音波などの画像検査、上部消化管内視鏡検査などを行います。


進行度・病期(ステージ)

病期診断は、部位により異なります。
  ●T分類:腫瘍の大きさ、深さ、周囲への浸潤 T1~T4
  ●N分類:リンパ節転移の有無 N0~N3
  ●M分類:遠隔転移の有無 M0またはM1
以上から病期が分類されます。

 病期:0期、I期、II期、III期、IV期 (ステージとも言います)

国外ではUICC分類、国内では頭頸部癌取扱い規約をもとに分類されます。数年ごとに改訂されます。いつの分類かによって、病期が異なることがあるので、説明を受けられる際にご注意ください。

最新の病期分類(2018.5月時点)
  国内:頭頸部癌取扱い規約 第6版 2018
  国内:甲状腺癌取扱い規約 第7版 2015
  国際:UICC TNM悪性腫瘍の分類 第8版 2017

治療

頭頸部がんは単一の疾患ではなく、部位や病理組織学的にも多様です。治療法も、それぞれ異なりますが、外科療法(手術)、薬物療法(化学療法:抗がん剤)、放射線療法を組み合わせた、集学的治療を行うことが一般的です。それぞれの専門医師が集まり、カンファランスを通して診断、治療法を決定していきます。治療中は、看護師、薬剤師、栄養士、放射線治療スタッフなど多職種の医療スタッフとチームで連携して治療サポートしていきます。

①手術治療

上咽頭を除く頭頸部がんでは、手術治療は根治治療のための基本的な選択肢となります。

 ●局所切除
 がん全体を周囲の正常組織を一部含めて取り除きます。早期がんの場合、術後の機能障害を減らす目的で、内視鏡切除や経口切除などの低侵襲な手術療法がおこなわれるようになってきています。
進行がんの場合、広く切除する場合があります。場合によっては発声、飲み込みなどの機能が犠牲となります。

●頸部郭清術
 頸部リンパ節と周囲の組織をひとかたまりで切除する方法です。最近ではなるべく術後の機能を残すようにしています。

●再建手術
 手術で取り除くことにより失われた部分を修復します。主として形成外科医が行います。遊離空腸、前外側大腿皮弁、前腕、大胸筋、腹直筋などを使って、形態を整え、飲み込みなど機能をできるだけ残すような工夫をします。

②放射線治療

上咽頭がんでは標準治療です。その他の部位でも、機能温存、形態温存を目指した根治治療のひとつです。放射線のみの単独治療を行うこともあります。進行がんでは化学療法と併用して治療効果をたかめる、化学放射線療法が標準治療です
手術後の補助治療として行われることもあります。痛みを取る目的で緩和照射も行われます。
当院では強度変調放射線治療:IMRTを用いて、放射線による晩期障害(唾液腺機能低下、嚥下機能低下など)を減らす治療が行われています。
粒子線治療も有効な治療ですが、当院では行われていません。現在頭頸部では軟部肉腫など特殊な病気にのみ保険が認められています。

③化学療法(抗がん剤治療)

根治治療の基本は手術治療と放射線治療です。一般に、静脈内投与が行われます。全身のがん細胞に作用します。頭頸部がんでは、化学療法はおもに以下のような目的で行われます。

●導入化学療法:根治治療の前に行われます。発声機能など、臓器温存を目指す場合、化学療法の治療効果が良好であれば化学放射線療法を選択することがあります。

 ●化学放射線療法:放射線治療の効果を高める目的で行います。

 ●再発、転移に対する化学療法: 生存期間の延長、腫瘍縮小による症状緩和などが目的となります。

頭頸部がんでは根治治療後の補助化学療法に対する有効性は、上咽頭がんを除いて確立されておらず、推奨されていません。

それぞれのがんの標準治療

●口腔がん(舌がんを含む)
  手術(T1・T2N0なら組織内照射も選択されます)

 ●上咽頭がん
  化学放射線療法(T1N0では放射線治療)

 ●中咽頭がん
  T1・T2:手術(経口手術など)または放射線±化学療法
  T3・T4:手術 または化学放射線療法

 ●下咽頭がん
  T1・T2:手術(経口手術など)または放射線治療/化学放射線療法
  T3・T4:手術(喉頭全摘、下咽頭切除/全摘出)、化学放射線療法、導入化学療法

 ●喉頭がん
  T1:喉頭温存手術、または放射線治療
  T2:手術(喉頭温存手術/喉頭全摘)、放射線±化学療法、化学放射線療法
  T3・T4:手術(喉頭温存手術/喉頭全摘±頸部郭清)、化学放射線療法、導入化学療法

 ●唾液腺がん:手術

 ●甲状腺がん:手術