岐阜大学医学部附属病院がんセンター

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がん治療について

肝がん

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肝がんとは

肝がんには,肝臓から発症した原発性肝がんと,他の臓器のがんが肝臓に転移した転移性肝がんがあります.原発性肝がんの85~90%は,肝細胞ががん化した肝細胞がんが占め,約10%が胆管細胞ががん化した胆管細胞がんです.一般的に肝がんというと肝細胞がんを指しています.

2015年の全国統計では1年間におよそ3万人の方が肝がんにより亡くなっています.腹部超音波検査(エコー),CT,MRIなどの検査で発見される直径5cm以内の肝がんであれば,通常は無症状で,直径が5~10cmの肝がんになると,腹満感や腹痛などの症状を起こすこともあります. このようにがんが進行しても殆ど症状が出ないことから,肝臓は「沈黙の臓器」といわれています.病気が進行し,黄疸や腹水という末期症状が出現してからでは治療が困難になります.

肝がんができる要因は?

これまでは肝発がんの原因の約90%をウイルス性肝炎が占めていたため,肝炎ウイルス陽性の患者を対象に定期的な血液検査や画像検査を行い,肝がんの早期発見に努めてきました.ところが近年,糖尿病,高脂血症,高血圧,肥満といった生活習慣病を背景にした非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの発がんが増加してきました.当院でも以前は約10%程度でしたが,2006年以降は約20%に増加しており,肝がんも他のがん同様に生活習慣病の治療が発がん予防に重要であることが分かってきました.早期発見のために,このような患者も対象として検査を行っていく必要があると考えます.

肝がんの発症率(HCV)の写真
肝がんの発生頻度は慢性肝炎が進行した状態や肝硬変で高くなります.
肝がんの発症率(HCV)

検査・診断

肝がんを早期に発見するためには

肝がん発生の危険群といわれる肝がんの治療歴がある方(一年間のがんの再発率30%),肝硬変(一年間のがんの発生率7%),C型肝炎・B型肝炎ウィルス陽性,肝機能異常,大酒家,糖尿病の患者さんに対して腫瘍マーカーとしてAFP,AFP L-3,PIVKA-Ⅱの測定,画像検査として腹部エコー,造影CT,造影MRIなどの検査を定期的に行います.

腹部CTの写真
検査も短時間で客観性があり正確な位置関係がわかります.造影剤を使用する必要があります.
腹部CT
腹部MRIの写真
性質の違いを表現できます.検査に時間がかかります.
腹部MRI
エコーの写真
最も簡単な検査です.
腹部超音波(エコー)
造影剤を使った超音波検査の写真
造影剤を使った超音波検査

肝がんの特徴

  • 肝動脈優位の血流支配を受ける多血性腫瘍(腫瘍の中にたくさん血管があるということ)である.
  • 背景に慢性の肝障害が存在する場合が多く,治療に際しては肝予備能(肝臓の力)の評価が必要である.
  • 肝障害が持続する場合は治療後の再発が極めて多い.(多中心性発がん)

T因子:①単発 ②2cm以下 ③脈管侵襲なし

  T因子 N因子 M因子
StageⅠ T1(すべて合致) N0 M0
StageⅡ T2(2項目合致) N0 M0
StageⅢ T3(1項目合致) N0 M0
StageⅣA T4(すべて合致せず) N0 M0
T1234 N1 M0
StageⅣB T1234 N01 M1
肝がんのステージ(病期)

チャイルド分類:腹水の貯留,脳症の有無のほかに血液検査でアルブミン値,総ビリルビン値,プロトロンビン時間を測定し肝硬変の進行度を点数化します.

点数 1点 2点 3点
ビリルビン 2.0mg/dl以下 2.1-3.0mg/dl 3.1mg/dl以上
アルブミン 3.5mg/dl以上 2.8-3.5mg/dl以上 2.7mg/dl以下
腹水 なし コントロール容易(少量) コントロール困難(大量)
脳症 なし わずか あり
プロトロンビン 81%以上 50-80% 50%未満
合計点数
5-6点 7-9点 10-15点
肝硬変の進行度
肝がん治療アルゴリズム
肝がん治療アルゴリズム(肝癌診療ガイドライン2017年版より)

治療

がんの治療として以下のものがあります.

 ・切除
 ・ラジオ波焼灼術(RFA)
 ・肝移植
  (この3つの治療法は根治できる可能性が高い治療法です.)
 ・肝動脈化学塞栓術(TACE)
 ・放射線治療
 ・分子標的薬


切除:(腫瘍部分を摘出する)

切除された肝がんの写真
切除された肝がん

ラジオ波焼灼術(RFA)

超音波ガイド下に肝がんを穿刺し,ラジオ無線の周波数(450~480kHz)の高周波を用いて,針周囲の組織を熱凝固させる方法です.適応は大きさが3cm以内で,個数が3個くらいまでとされています.

ラジオ波焼灼術(RFA)1の写真
ラジオ波焼灼術(RFA)
ラジオ波焼灼術(RFA)2の写真
ラジオ波焼灼術(RFA)
電極針の写真
電極針

肝動脈化学塞栓術

がんを栄養している動脈(主に肝動脈ですが,近くの臓器から栄養を受けているがんもあります.)に抗がん剤を注入後,塞栓物質にて動脈を塞栓し,兵糧攻めにします.

肝動脈塞栓術(TACE)の写真
肝動脈化学塞栓術(TACE)

また当院ではIVR-CT(血管造影装置にCTがついています.)を導入しており,検査中に3Dの画像を作成し,それを基により詳細な治療をしています.

IVR-CTによる3D画像の写真
IVR-CTによる3D画像

放射線治療
放射線治療の写真
放射線治療

いずれの治療法でも1 回の治療に要する入院期間は2 ~3 週間で,退院後社会生活に支障を来すことはほとんどありません.ただし肝がんはその性質上複数回の治療が必要な疾患ですので,退院後も定期的な通院が必要です.


分子標的薬

肝予備能が良好な根治不能肝がんに対して分子標的薬が登場し,およそ10年が経過しました.大変高価な薬であり,副作用も様々なため管理には医師の経験を必要としますが,当院ではTACEや放射線などの治療を併用することで予後を延長させています.また新しい分子標的薬も開発され治療の選択肢が増えました.

最後に

当院では診断能力の高い装置とそれを読影する専門のスタッフ(放射線科専門医)がレベルの高い読影を行っております.「肝臓に影がある」「できものがある」といわれた際には一度当院での画像再検査をお勧めいたします.

また治療についても慢性肝炎, 肝硬変の患者さんを診療しつつ, 定期的に肝がんのスクリーニング検査を行い,がんの診断がつき次第, 放射線科,消化器外科と相談しながら,病態に応じて最も有効な治療法を行っています.また併存する食道静脈瘤の内視鏡治療では光学診療部の専門チームが治療にあたり,肝硬変の補助療法は栄養学の観点からnutrition support team(NST)が患者さん一人ひとりにあった食事メニューと栄養指導を行っています.最適な時期に最適な治療法を選択し,患者さんがより良く,より長生きするよう努力しています.

患者さんの予後( どのくらい生きられるか) の改善には, 早期発見, 早期治療が大切です.肝がんの危険性が高いグループから効率的に肝がんを発見する事が重要ですが,最近ではB,C型肝炎以外で肝機能が正常な方からもがんが発見されています.

血液検査項目はたくさんあり,採血をしたからといってすべての項目を調べているわけではありません.「肝臓を調べてほしい.」との希望がなければ,項目は調べませんので注意してください.一度は肝炎ウィルスの検査と腹部超音波検査をお勧めします.