岐阜大学医学部附属病院がんセンター

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がん治療について

胃がん

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胃がんとは

胃の一番内側にある粘膜を起源として発症するもので、肉眼的な型として、内側に向かって隆起したものや、その中央に潰瘍のような陥没があるものが多い。一般的には大きくなれば進行してくることになるのですが、胃の壁の外側に向かってどれだけ深く根をもっているかが病状を反映することになります。これを深達度といいます。すなわち、深達度が進むほどリンパ節転移や肝転移の頻度が増加し、胃壁の外側に顔を出す程度まで進行すると腹膜播種の可能性が出てくるわけです。

 関連リンク:日本癌治療学会
胃の壁の構造の写真
図1 胃の壁の構造
胃壁の深達度(T1~T4)の写真
図2 胃壁の深達度(T1~T4)

胃がんの3大転移

リンパ節転移…首のまわり、腋窩、脚の付け根に触れるようなリンパ節がお腹の中にもあり、病変からリンパ管内を通り胃の周囲リンパ節に転移したもの。
肝転移…病変から血管内を流れ出した癌細胞が最初に流れ込む肝臓に転移したもの。
腹膜播種…漿膜をこえて浸潤した胃癌細胞が、腹腔内にこぼれ落ちて骨盤内、腹壁、腸管、腸間膜などに転移したもの。

胃がんの3大転移の写真
図3 胃がんの3大転移

病期

胃癌の病状・進み具合(病期分類、ステージ)

腫瘍の深達度、リンパ節転移の有無や拡がり、肝転移の有無、腹膜播種の有無の因子により表のように決定されます。日本胃癌学会から出された胃癌治療ガイドラインはこのステージ分類に沿った治療方針が示されています。

進行度分類の写真1
図4 進行度分類
進行度分類の写真2

治療

胃癌治療の基本は切除になります。その手段はさまざまであり、病状・病変の部位・大きさなどの胃癌の進行度に対する術前診断を行い、術式を決定します。主な検査方法に、胃透視、胃内視鏡、超音波内視鏡、拡大内視鏡、CT、
CT-colonographyがあり、術前・治療前には受けていただいています。

治療方針の決定にあたって病状から分類すると、1.深達度が粘膜下層までのいわゆる早期癌、2.取り切れると判断される切除可能な進行癌、3.腹膜播種、肝転移、大動脈周囲などの遠隔へのリンパ節転移を有する、手術ではコントロール不能と考えられる進行癌に分けられます。

Ⅰ.『早期胃癌』

深達度が粘膜下層までにとどまるものを便宜的に早期胃癌と呼んでいる。

①粘膜内の癌⇒組織型、大きさ、形から適応が合えば、消化器内科の先生が行っている内視鏡下粘膜下層剥離術。(図5、6)これは胃の切除を行わず、胃カメラの操作により病巣を胃の内側から剥がし取る方法です。この適応に合わなければ、外科的に胃切除術を行うことになります。

早期胃がんの粘膜下層剥離術の写真
図5 早期胃がんの粘膜下層剥離術:ESD
早期胃がんの粘膜下層剥離術の写真
図6 早期胃がんの粘膜下層剥離術:ESD

②粘膜下層までの癌⇒拡がっている可能性が否定できない胃周囲リンパ節の切除(リンパ節郭清)を伴う胃切除術が必要となります。
※①②の場合、当院では積極的に 腹腔鏡手術 を取り入れており、胃癌手術の5割を占めています。また、2017年にロボット手術を導入し、2018年5月から本格稼働しております。

Ⅱ.『進行癌』

●深達度が筋層より深く浸潤している胃癌。

●拡がっている可能性が否定できない胃周囲リンパ節の切除(リンパ節郭清)も含めた胃切除術が必要となります。早期癌よりリンパ節の郭清範囲を広く行うもので、胃癌治療ガイドラインでは定型手術とされるもので、 基本的には開腹ですが、腹腔鏡手術でも積極的に行っています。

●胃癌治療ガイドラインに示されていますが、切除した標本の病理結果(顕微鏡での検索)でStageⅡ・Ⅲであった場合、術後1年間の補助化学療法(再発予防の抗癌剤治療)を行います。StageⅡでは内服の抗癌剤、StageⅢでは治療成績のさらなる向上を目指した臨床試験が行われ、現在では内服と点滴による再発予防を目的とした治療が標準治療となっています。

Ⅲ.切除不能StageⅣ進行癌

抗癌剤治療が中心であり,経口摂取が可能であれば基本的に手術を選択せず治療が推奨されます。約8割の患者さんには内服と点滴の抗癌剤が最初に選択され、外来治療を中心に行っています。残りの約2割の患者さんには内服と点滴の抗癌剤に加えて、分子標的薬(癌を狙い撃ちする副作用の少ない薬剤)も使用した治療を行っています。また、免疫チェックポイント阻害薬を含めた臨床試験や治験に積極的に参加しており、胃癌に対する新しい薬剤や治療法を受けていただく選択肢もあります。肝転移・肺転移・遠隔リンパ節転移などが消失するほどの奏効が得られた場合、手術により癌の遺残なく取りきれると判断されれば切除を行っており、治療成績が向上しています。一方で、病巣による食物の通過障害がある場合、抗癌剤治療に先行して胃と小腸をつなぐバイパス術を行うこともあります。

この場合も抗癌剤が奏効すれば、切除術を行っています。図7のCT画像のように,左頸部、左腋窩,大動脈周囲という遠隔のリンパ節転移を伴う患者さんにおいても、抗癌剤治療で消失し胃切除術を行うことが可能となりました。腹膜播種転移や食道への拡がりを伴う図8の患者さんでは、内視鏡写真に示すような効果が得られれば、胃全摘術を施行し肉眼的に遺残なく切除可能となりました。

進行度分類の写真
TS-1+CDDP療法の写真
図8 TS-1+CDDP療法(抗癌剤) 胃内視鏡所見

Ⅳ.腹腔鏡下胃切除術・ロボット支援下胃切除術

当院では、2002年から腹腔鏡手術を行っており、現在では胃癌手術全体の約6-7割を占めています。当初は深達度の比較的浅い早期癌を対象としていましたが、近年進行癌にも行い、幽門側胃切除術・噴門側胃切除術・胃全摘術のすべての術式で行っています。また、2018年にロボット支援下胃癌手術(ダヴィンチ:da Vinci Xi サージカルシステム)を開始しました。今までの腹腔鏡手術に比べて、3D画像モニターをもとに複雑で繊細な手技が可能となり、鏡視下手術の利点をさらに向上させることができると考えられています。

腹腔鏡下胃切除術の写真
腹腔鏡下胃切除術

写真のように5mm~12mmの創を5カ所設けて、気密に保たれる構造をもったポート(筒状のもの)を留置します。炭酸ガスを腹腔鏡内に注入することで手術操作に必要な空間を確保し、臍部から挿入したハイビジョンの腹腔鏡から得られた画像をモニターで見ながら、主に直径5mmほどの細長い鉗子や超音波凝固切開装置を用いて手術を行います。切除した胃やその周囲リンパ節は臍下部の創あるいは心窩部の小開腹創から体外に摘出します。腹壁のダメージを減らすことで、身体全体の炎症などのダメージを減らすことを可能にし、術後の回復が早くなります。

このように、早期胃がん・切除可能な進行がん・切除不能な進行がんのそれぞれに対して、病状に見合った治療を行っています。