Study

研究内容

Study

主な研究

岐阜大学皮膚科学教室では、これまでの乾癬、アトピー性皮膚炎、膠原病などの研究に加え水疱症など新たな分野にも挑戦していきます。

水疱症の病態解明・新規治療開発

自己免疫疾患の一つ「水疱性類天疱瘡」の水疱形成は、自己抗体と補体など炎症が関与すると考えられてきました。しかし、私たちは必ずしも炎症は必須ではないという仮説を検証すべく、様々な実験を行ってきました。そして、自己抗体により生じる自己抗原の枯渇こそ水疱形成の本質であるということを解明しました。また当皮膚科学教室の自己免疫性水疱症の研究では、ドイツ・リューベック大学とも積極的にコラボレーションをしています。

遺伝性水疱性疾患である「家族性良性慢性天疱瘡(ヘイリーヘイリー病)」は、細胞内のゴルジ体に存在するカルシウムポンプをコードするATP2C1遺伝子に変異が生じてできる疾患です。細胞内の濃度の調整が破綻するこの病気は、未だその病気の機序は不明な点が多く有効な治療法もありません。私たちは、その機序を解明する研究や新たな治療法を探求する研究を行っています。

水疱症の病態解明・新規治療開発

代表論文(一部抜粋)

Im D, Ueda K, Niwa H, Tanaka K, Iwata H:
Low pH condition impairs BP-IgG binding to the basement membrane zone
J Dermatol. 2024, doi: 10.1111/1346-8138.17175
Hirano Y, Iwata H, Tsujuwaki M, Mai S, Mai Y, Imafuku K, Izumi K, Koga H, Ujiie H:
Super resolution imaging detects BP180 autoantigen in IgM pemphigoid
J Dermatol 49: 374-378, 2022
Iwata H, Kamaguchi M, Ujiie H, Ujiie I, Natsuga K, Nishie W, ShimizuH:
Fc-binding proteins enhance autoantibody-induced BP180 depletion in pemphigoid
J Pathol 247: 371-80, 2019
Iwata H, Kamio N, Aoyama Y, Yamamoto Y, Hirako Y, Owaribe K, Kitajima Y:
IgG from patients with bullous pemphigoid depletes cultured keratinocytes of the 180-kDa bullous pemphigoid antigen (type XVII collagen) and weakens cell attachment.
J Invest Dermatol 129: 919-26, 2009

乾癬の病態解明・新規治療開発

「乾癬」は生物学的製剤の治療で病気のメカニズムが徐々に解明されてきました。しかし、炎症性疾患であり遺伝的要因・環境的要因など、病気発症には様々な要因が関与しています。私たちは、乾癬の炎症に関与する分子の発見、真皮線維芽細胞の表皮増殖への関与の解明、さらに顆粒球吸着療法の有効性などについて報告しています。

乾癬の病態解明・新規治療開発

代表論文(一部抜粋)

Iwata H, Haga H, Ujiie H:
The possible role of epiregulin from dermal fibroblasts in the pathogenesis of psoriasis
J Dermatol 48: 1433-1438, 2021
Fujii K, Yamamoto Y, Mizutani Y, Saito K, Seishima M:
Indoleamine 2,3-Dioxygenase 2 Deficiency Exacerbates Imiquimod-Induced Psoriasis-Like Skin Inflammation.
Int J Mol Sci. 21: 5515, 2020
Mizutani Y, Fujii K, Kawamura M, Inoue M, Mizutani YH, Matsuyama K, Doi T, Nagaya S, Seishima M:
Intensive granulocyte and monocyte adsorption apheresis for generalized pustular psoriasis
J Dermatol. 47: 1326-1329, 2020

皮膚バリアと経皮免疫

皮膚には角層とタイトジャンクションの重要なバリアがあります。これらのバリアは生命維持や健康な皮膚の維持、さらには免疫応答に極めて重要なはたらきをしています。私たちは、バリア機能がどのように形成・維持されているか、バリア機能が病気に及ぼす影響などについて解明する研究や新しい治療法の開発研究を行っています。さらに、皮膚を介した免疫反応の研究等も行っています。

皮膚バリアと経皮免疫

代表論文(一部抜粋)

Imafuku K, Iwata H*, Natsuga K, Okumura M, Kobayashi Y, Kitahata H, Kubo A, Nagayama M, Ujiie H:
Zonula occludens-1 distribution and barrier functions are affected by epithelial proliferation and turnover rates
Cell Prolif. 56: e13441, 2023.
Imafuku K, Kamaguchi M, Natsuga K, Nakamura H, Shimizu H, Iwata H:
Zonula occludens-1 demonstrates a unique appearance in buccal mucosa over several layers
Cell Tissue Res 384: 691-702, 2021

膠原病に関する研究
~全身性強皮症発症におけるα2APの役割~

「全身性強皮症」は皮膚の硬化と全身諸臓器の線維化を特徴とする膠原病の一種で、その病因はまだ完全に解明されていません。私達は同志社女子大学との共同研究のもと、強皮症の発症にプラスミンのインヒビターであるα2-antiplasmin (α2AP)が深く関与していることを報告してきました(以下論文1、2、3)。
これまでの研究結果を踏まえ、今後線維化を抑制する強皮症の新たな治療戦略の開発を目指していきます。

膠原病に関する研究~全身性強皮症発症におけるα2APの役割~

代表論文(一部抜粋)

Kanno Y, Shu E:
α2-Antiplasmin as a Potential Therapeutic Target for Systemic Sclerosis
Life (Basel). 12: 396, 2022
Niwa H, Kanno Y, Shu E, Seishima M:
Decrease in matrix metalloproteinase‑3 activity in systemic sclerosis fibroblasts causes α2‑antiplasmin and extracellular matrix deposition, and contributes to fibrosis development
Mol Med Rep. 22: 3001-3007, 2020
Kanno Y, Shu E, Niwa H, Kanoh H, Seishima M:
Alternatively activated macrophages are associated with the α2AP production that occurs with the development of dermal fibrosis : The role of alternatively activated macrophages on the development of fibrosis
Arthritis Res Ther. 22: 76, 2020

アトピー性皮膚炎サイトカイン環境の解析

アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能異常とアトピー素因に基づくTyep2炎症が相互に作用してサイトカインの働きが暴走して生じます。アトピー性皮膚炎の主要サイトカインはTh2サイトカイン、つまりIL-4、 IL-5、 IL-13、 IL-31などですが、加えてTh17サイトカインであるIL-17、Th22サイトカインであるIL-22、Th1サイトカインであるIFN-γなどの関与も指摘されています。
我々はIFN-γが皮膚角層脂質のセラミド(バリアに必須な脂質)の脂肪酸側鎖を短鎖化することでバリア機能を低下させることを示してきました。アトピー性皮膚炎は単一のフェノタイプでなく、サイトカインプロファイルも異なる可能性が示唆されています。そこで、実際の患者の皮疹部にニトロセルロース膜を貼付し、そこに吸着したサイトカインを抗体で検出する方法(スキンブロット法)を用いて、個々の患者のサイトカインプロファイルを明らかにすることでオーダーメイド治療の基礎にできないかと考え、研究を進めています。

アトピー性皮膚炎サイトカイン環境の解析

代表論文(一部抜粋)

Tawada C, Kanoh H, Nakamura M, Mizutani Y, Fujisawa T, Banno Y, Seishima M:
Interferon-γ decreases ceramides with long-chain fatty acids: possible involvement in atopic dermatitis and psoriasis.
J Invest Dermatol 134: 712-718, 2014
Kanoh H, Ishitsuka A, Fujine E, Matsuhaba S, Nakamura M, Ito H, Inagaki N, Banno Y, Seishima M:
IFN-γ Reduces Epidermal Barrier Function by Affecting Fatty Acid Composition of Ceramide in a Mouse Atopic Dermatitis Model.
J Immunol Res. 2019, doi: 10.1155/2019/3030268

酸化ストレスと皮膚疾患

酸化ストレスとは酸素分子に由来する反応性に富む一連の分子群で、バランスがとれた状態では生理的シグナルとして作用しています。
しかし酸化ストレスが少し増加すると細胞増殖や血管新生、中等度増加すると炎症や免疫反応の亢進、高度に増加すると細胞死を誘導します。
皮膚疾患でも酸化ストレスが上昇することが知られており、当教室では酸化力と抗酸化力を表すd-ROMsやBAPの測定を行ったり、酸化ストレスマーカーを用いて組織の免疫染色等を行い、その関係を調べています。
酸化ストレスから皮膚科疾患のメカニズムを研究することにより、新たなる視点から治療に結び付けることができればと思い、研究を進めています。

酸化ストレスと皮膚疾患

代表論文(一部抜粋)

Matsuo M, Tawada C, Tanaka K, Ichiki N, Niwa H, Mizutani Y, Shu E, Iwata H:
Oxidative stress and dermatomyositis: Report of d-ROM measurements in 13 cases.
Int J Rheum Dis. 2024 Jan;27(1):e14931. doi: 10.1111/1756-185X.14931. Epub 2023 Sep 28.
Tozaki N, Tawada C, Niwa H, Mizutani Y, Shu E, Kawase A, Miwa Y, Ohnishi H, Sasai H, Miyako K, Hosokawa J, Kato A, Kobayashi K, Miyazaki T, Shirakami Y, Shimizu M, Iwata H:
A case of VEXAS syndrome (vacuoles, E1 enzyme, X-linked, autoinflammatory, somatic) with decreased oxidative stress levels after oral prednisone and tocilizumab treatment.
Front Med (Lausanne). 2022 Dec 5;9:1046820. doi: 10.3389/fmed.2022.1046820. eCollection 2022.