診療内容

股関節外科

スタッフ

整形外科 教授
秋山 治彦
整形外科 大学院生
宮川 貴樹

概要

股関節外科班は,岐阜大学整形外科の最も伝統ある診療班の一つで、現在に至るまで約2500症例の股関節外科手術を行っています.取り扱う疾患は,小児から成人まで幅が広いのが特徴で,小児では先天性股関節脱臼・ペルテス病・大腿骨頭すべり症などの手術的治療を主に行っており,成人では変形性股関節症・大腿骨頭壊死症・関節リウマチなどに対して,それぞれの病状に合わせて関節温存手術(骨切り術など)や人工股関節置換術を行っています.また,近年増加傾向にある人工関節のやり直し手術(再置換術)や人工関節術後感染に対する治療なども多く行っています.

変形性股関節症

関節の軟骨がすり減り,その結果骨や関節が変形する病気で,成人の股関節疾患では最も多い病気です.我が国では,先天性股関節脱臼や骨盤側の骨の発育が悪い臼蓋形成不全に起因するものがほとんどです.進行すると痛みや関節の動きの制限などのため,歩行や日常生活動作が障害されます.

変形股関節症の病期分類:レントゲン画像での変形の程度により,4つの病期に分類されています.
前期:臼蓋形成不全などはあるものの関節裂隙(軟骨のすき間)は保たれる。
初期:関節裂隙の狭小化を認める。
進行期:関節裂隙が一部消失する。
末期:関節裂隙がほとんど消失し,高度の変形を認める。

前期 初期 進行期 末期

治療は,薬物治療や運動療法など保存的治療も行いますが,改善が得られない場合は積極的に手術治療を行います.手術には,病気の進行の予防や関節の再生を図るいわゆる関節温存手術と人工股関節置換術があり,変形の程度・患者さんの年齢・社会的背景・希望などを考慮して手術方法を決定しています.

臼蓋形成不全症の手術治療

寛骨臼回転骨切り術

臼蓋を球状にくり抜くように骨盤の骨切りを行い、臼蓋を回転移動させ,骨頭の被覆を改善させる手術です.軟骨の摩耗が少ない臼蓋形成不全で,股を開いた(外転)状態で関節適合性が良好となる場合に適応があります. 年齢は50歳前後まで行うことができ,術後2−3週から部分荷重を始め,5−6週で一本杖歩行で退院します.

臼蓋形成不全症(術前)と寛骨臼回転骨切り術後のレントゲン
臼蓋形成不全症(術前)と寛骨臼回転骨切り術後の3D-CT

臼蓋形成術

臼蓋の外側に骨盤から採取した骨を移植することによって骨頭の被覆を改善させる手術です.寛骨臼回転骨切り術よりも比較的若い患者さんや関節適合性が不良な股関節に適応が有ります。

変形性股関節症の手術治療

(1)大腿骨骨切り術

大腿骨を大転子付近で骨切りし,骨頭の向きを変えて金属プレートやスクリュー再固定し関節の適合性を改善させる手術です.当科では,骨頭の変形があり軟骨の摩耗が進んだ状態に対して,大腿骨外反骨切り術を行っています.臼蓋形成不全の強い場合には,骨盤から骨を採取し臼蓋上方に棚状に骨移植する臼蓋形成術を併用します.

変形性股関節症(術前)と骨切り術後のレントゲン

(2)人工股関節置換術

軟骨の摩耗・関節変形が進行し,症状が強い場合に行う手術で,骨頭を切除し臼蓋を掘削した後にインプラントを設置します.除痛効果に優れ,早期機能回復が可能で,術後2日目から全荷重での歩行訓練を開始し術後3週間程で杖歩行にて退院が可能です.インプラントの固定には,骨とインプラントの間を骨セメントで固定するセメント人工関節とインプラントと骨が直接癒合するセメントレス人工関節があり,岐阜大学整形外科では、CTおよびレントゲン写真による2D、3Dコンピューターシミュレーションや3Dプリンタにて実物大立体モデルの作成を行い、患者さんそれぞれの関節および骨の形状に最も適した手術手技やインプラントを選択しています.人工関節の長期成績は,手術手技の進歩・インプラントのデザイン・材質の改良により耐久性が著しく向上しており,20〜30年の長期成績が期待できます.当科では,世界的に優れた長期成績を有するデザインのインプラントを使用しつつ,生体活性チタン合金やより低摩耗の摺動面(関節の動く部分)の採用など最新の技術を導入しています.また,通常でも10−12cmほどの皮膚切開で手術を行っていますが,関節変形の程度に応じて筋肉・腱を切離しない最小侵襲手術(MIS)も行っています.

変形性股関節症(術前)と人工関節置換術後のレントゲン


2D,3D CT画像とCTデータから作成した実物大立体モデル


最新のセラミック(左)とセラミック化金属(右)のインプラント(骨頭部分)

摩耗を最小限に抑えたポリエチレンソケット
生体活性チタン(緑色の部分)を用いた人工関節インプラント

 

(3)人工股関節再置換術

人工関節を長期間使用すると,インプラントと骨の結合の緩みやインプラントの移動が起こります.また,ポリエチレン(プラスチック部分)の摩耗粉により骨溶解が発生することがあります.このような場合に人工関節の入れ替え手術(再置換術)が必要になります.再置換術では,大きな骨の欠損が生じていることが多く,インプラントをしっかりと固定するためには骨の再建が必要です.当科では,同種骨移植(殺菌処理行いボーンバンクに冷凍保存)や金属補強器具を用いて骨量を回復させ,Impaction Bone Grafting法など様々な技術・インプラントを駆使して手術を行っており,初回人工股関節と変わらない良好な成績を得ています.

セメント人工股関節の弛み(左)と
同種骨・金属補強プレートを用いた再置換術(右)

大腿骨頭壊死症

大腿骨頭を栄養する血行が障害され,骨頭の骨が壊死を起こす病気です.壊死した骨は弱くなり,体重を支えきれずにつぶれてしまい(圧潰),激しい疼痛が出現します.放置すれば,変形性股関節症に進展します.大腿骨頸部骨折・股関節脱臼の後など原因がはっきりした続発性と原因のわからない特発性に分けられ,特発性の中ではステロイドホルモン剤をたくさん投与された方やアルコールを多飲された人に起こりやすいことがわかっています.この病気は、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されていて、治療は現在のところ確立された薬物療法はなく,年齢・壊死の大きさや位置・骨頭圧潰の程度等を考慮して手術治療決定します.若年者で壊死範囲が小さく骨頭圧潰の少ない場合は,自分の骨頭をできるだけ温存する骨切り術をまず考慮し,高齢者や骨頭圧潰の進行してしまった場合には,人工骨頭置換術や人工股関節置換術を行います.

大腿骨頭壊死症の骨切り術

壊死範囲を荷重部から移動させ健常な骨で体重を支える様にすることを目的としており,主に大腿骨弯曲内反骨切り術と大腿骨頭回転骨切り術があります.弯曲内反骨切り術は壊死範囲が比較的狭く骨頭外側部に健常部がある場合に,骨頭回転骨切り術は壊死範囲が比較的広く骨頭の前方または後方に健常部がある場合に適応があります.

  大腿骨頭壊死症のMRIとレントゲン(左)  大腿骨弯曲内反骨切り術(右)
  大腿骨頭壊死症のMRIとレントゲン(左)  大腿骨前方回転骨切り術(右)

大腿骨臼蓋インピンジメント(femoro-acetabular impingement FAI)

最近注目されている疾患概念で,大腿骨頭から頚部と臼蓋の辺縁が股関節の動きによって衝突(インピンジメント)し,その結果関節唇や軟骨が損傷され,疼痛が出現します.臼蓋辺縁の骨が突出するピンサー(Pincer)タイプ,大腿骨頭から頚部の骨が盛り上がるカム(Cam)タイプ,及び2つの混合(mixed)タイプがあります.多くの場合,保存的治療で改善しますが,症状が続く場合は,股関節鏡や関節切開により骨の突出を削る手術を行います.

混合タイプのFAI
術前3D-CT 股関節鏡所見 術後3D-CT

業績

2015年

  1. Takigami I, Otsuka H, Yamamoto K, Iwase T, Fujita H, Matsuda S, Akiyama H. Proximal femoral reconstruction with impaction bone grafting and circumferential metal mesh. J Orthop Sci 20: 331-9, 2015

2013年

  1. Akiyama H, Yamamoto K, Kaneuji A, Matsumoto T, Nakamura T. In vitro characteristics of cemented titanium femoral stems with a smooth surface finish. J Orthop Sci 18: 29-37, 2013.
  2. Takigami I, Ito Y, Matsumoto K, Ogawa H, Terabayashi N, Shimizu K. Primary total hip arthroplasty with a spongy metal surface acetabular component for hip dysplasia. J Arthroplasty 28: 172-7, 2013.

2012年

  1. Akiyama H, Hoshino A, Iida H, Shindo H, Takakura Y, Miura H, Yamamoto K, Yoshiya S, Hasegawa Y, Shimamura T, Kurosaka M, Otsuka H, Kawanabe K, Kawate K, Harada Y, Nakamura T; Implant Committee, Japanese Orthopaedic Association. A pilot project for the Japan Arthroplasty Register. J Orthop Sci 17: 358-69, 2012.

2011年

  1. Akiyama H, Kawanabe K, Yamamoto K, So K, Kuroda Y, Nakamura T. Clinical outcomes of cemented double-tapered titanium femoral stems ~ A minimum five-year follow-up~. J Orthop Sci 16: 689-97, 2011.
  2. Akiyama H, Yamamoto K, Tsukanaka M, Kawanabe K, Otsuka H, So K, Goto K, Nakamura T. Revision total hip arthroplasty using a Kerboull-type acetabular reinforcement device with bone allograft: minimum 4.5-year follow-up results and mechanical analysis. J Bone Joint Surg Br 93: 1194-200, 2011.
  3. Akiyama H, Kawanabe K, Yamamoto K, Kuroda Y, So K, Goto K, Nakamura T. Cemented total hip arthroplasty with subtrochanteric femoral shortening transverse osteotomy for severely dislocated hips ~Outcome with a 3 to 10 year follow-up~. J Orthop Sci 16: 270-7,2011.
  4. Takigami I, Ito Y, Mizoguchi T, Shimizu K. Pelvic discontinuity caused by acetabular overreaming during primary total hip arthroplasty. Case Rep Orthop 2011: 939202, 2011.

2010年

  1. Ogawa H, Ito Y, Takigami I, Shimizu K. Revision total hip arthroplasty for a Vancouver type B3 periprosthetic fracture using an allograft-cemented stem composite by the telescoping technique. J Arthroplasty 26: 665, 2010.
  2. Akiyama H, Goto K, So K, Nakamura T. Computer tomography-based navigation for curved periacetabular osteotomy. J Orthop Sci 15: 829-33, 2010.
  3. Takigami I, Ito Y, Ishimaru D, Ogawa H, Mori N, Shimizu T, Terabayashi N, Shimizu K. Two-stage revision surgery for hip prosthesis infection using antibiotic-loaded porous hydroxyapatite blocks. Arch Orthop Trauma Surg 130: 1221-6, 2010.
  4. Akiyama H, Kawanabe K, Iida H, Haile P, Goto K, Nakamura T. Long-term results of cemented total hip arthroplasty in developmental dysplasia with acetabular bulk bone grafts after improving operative techniques. J Arthroplasty 25: 716-20, 2010.
  5. Ogawa H, Ito Y, Itokazu M, Mori N, Terabayashi N, Shimizu K. Cementless total hip arthroplasty using a spongy metal surface hip prosthesis with a collarless, proximally porous-coated stem. J Arthroplasty 25: 375-80, 2010.

2009年

  1. Akiyama H, Kawanabe K, Ito T, Goto K, Nangaku M, Nakamura T. Computed Tomography-Based Navigation to Determine the Femoral Neck Osteotomy and Location of the Acetabular Socket of an Arthrodesed Hip. J Arthroplasty 4: 1292, 2009.

2008年

  1. Takigami I, Itokazu M, Itoh Y, Matsumoto K, Yamamoto T, Shimizu K. Limb-length measurement in total hip arthroplasty using a calipers dual pin retractor. Bull NYU Hosp Jt Dis 66: 107-10, 2008.
  2. Takigami I, Itoh Y, Itokazu M, Shimizu K. Radio-opaque marker of a surgical sponge appearing as an intra-articular foreign body after total hip arthroplasty. Arch Orthop Trauma Surg 128: 1167-8, 2008.
  3. Ogawa H, Ito Y, Itokazu M, Mori N, Shimizu T, Terabayashi N, Ishimaru D, Shimizu K. Morcellized bone grafting for acetabular deficiency in cementless total hip arthroplasty. Orthopedics 31: 10, 2008.

2007年

  1. Akiyama H, Kawanabe K, Goto K, Ohnishi E, Nakamura T. Computer-assisted fluoroscopic navigation system for removal of distal femoral bone cement in revision total hip arthroplasty. J Arthroplasty 22: 445-8, 2007.

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