DEPARTMENT
pediatrics/AYAgeneration
AYA(Adolescent and Young Adult, アヤ)世代とは、15〜39歳の思春期・若年成人を指す言葉ですが、この世代は身体の成長、発育が成人に向かっていく時期であるだけでなく、学校、就職、結婚など様々なイベントがあります。このような時期に、がんや難病に罹った場合は、いろいろな悩みを抱えることになります。
岐阜県小児AYA世代のがん等成育医療相談支援センターでは、こうした不安や問題を抱える患者さん、ご家族に相談の場を提供するために活動しています。また、医療従事者を対象とした研修会や県民の方々を対象とした県民公開講座の実施や、AYA期の患者さんの支援として、高校生の学習支援、長期入院患者の復学支援、移行期支援、がん生殖医療などについて取り組んでいます。
0歳から14歳までの小児期に発生するがんを「小児がん」といいます。年間、国内で約2,000人が発症しますが、成人を合わせたがんは年間100万近く発症しますので、全体のわずか0.2%と非常に少ない希少がんです(※1)。発生数が多いものから順に、白血病、脳腫瘍、リンパ腫、神経芽腫と続き、その他に胚細胞腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、肝芽腫、腎芽腫など様々な種類のがんが発生します。
一方、成人世代では、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなどが患者数の多いがんですが、「AYA世代がん」は、小児と成人の中間にあたるため、小児がんと成人がんの両方のがんが発生します(※2)。
思春期(Adolescent)、A世代は中学校、高校など就学期にあたります。体格は大人並みに大きく成長しますが、まだ精神的には、発達段階であり自立に向けて準備している段階です。当然、就労していないため、経済的自立はもちろんのこと、未成年であり、意思決定についても親に委ねられています。性的にも発達途上です。この時期に発生するがんは小児がんの種類が多く、小児科医が担当しています。入院治療中の学習のことや、学校の友人関係が途絶えること、脱毛などのアピアランス(外見)の問題など、多くの悩みを抱えます。
若年成人(Young Adult)、YA世代は大学生、または就労期となり、20代、30代は結婚、出産、家族形成など人生の様々なターニングポイントを迎える時期です。精神的・経済的に自立過程であり、意思決定は本人となります。しかし、がんを発症した場合は、休職を余儀なくされるでしょうし、やはり家族や職場など周囲の人から様々なサポートが必要となります。また家庭を築く時期であり、妊孕性についても非常に問題となります。成人に多いがん腫を発症することが多く、部位は乳房、子宮、脳・脊髄、造血器、卵巣などで、診療科は産婦人科、乳腺外科、血液内科、脳神経外科、消化器内科など様々です。身体的問題、精神心理的問題、社会的問題などに対応するサポートのリソースが充足していない現状があります。
本センターでは、小児科、血液内科、産婦人科、小児外科、脳神経外科、乳腺外科、整形外科の医師、担当診療科の看護師、がんセンターの専任看護師、医療ソーシャルワーカーなどで構成されています。院内ではがんセンターの中の小児・AYA世代部門として機能しているため、院内の関係者と直接コンタクトを取り、相談内容に適した部署、担当者と迅速に対応が出来る体制となっています。
【高校生の学習支援】
がん治療は半年から1年といった長い入院治療となります。そのため、これまで通っていた学校に普通通り通うことは困難となります。小中学校は院内学級が設置されているため、転校手続きを取ることで、入院中も授業を受けることができます。しかし、高校は設置されていません。
その中で、岐阜県教育委員会では入院児童生徒への教育保障体制整備にいち早く取り組まれ、当院でも平成30年から原籍高校と病院をネットで繋いだ遠隔授業を実施しています。実際、単位を取得され、卒業、大学進学された患者さんもおられます。入院後、すぐに対応しますので、お気軽にご相談ください。
(参照:岐阜県教育委員会HP、高等学校の特別支援教育)
【復学支援】
長期の入院、外来通院でのがん治療中は、もともと通っていた学校での学習は困難となるため、小中学校では院内学級に転校します。また退院後でも感染にかかりやすい状態が続いたり、状態が不安定な場合は院内学級を利用することもあります。こうした状態が長いと、原籍校に戻る際に、学習のギャップはもちろんですが、患者さんの状態によっては、移動やアピアランス(外見)に関する配慮など、本人や家族は様々な不安を抱えています。当院ではこうした患者さんが無理なく、原籍校に戻れるよう、患者さんごとに復学支援を行なっています。具体的には、原籍校の先生と院内学級の先生、医師、看護師が集まり、本人、家族を交えて話し合い(復学カンファレンス)を実施します。これによって、お互いの不安を解消し、スムーズに復学することができています。
(参照:岐阜県教育委員会HP、長期入院児童生徒のための復学支援マニュアル)
【がん教育】
日本人の2人に1人ががんにかかる時代となりましたが、大人も含めて正しい知識を知る機会がとても少ないのが現状です。また、がんは不治の病という誤った認識がいまだ残っているのが現状です。しかし、最近では検診などによって早期発見・適切な治療を行えば9割以上の人が治りますし、また生活習慣を整えるなどの予防も大切です。こうした正しい知識を小・中・高等学校にて学ぶことを「がん教育」と呼んでいます。岐阜県では平成30年度より、文部科学省の「がん教育総合支援事業」のモデル校にてがん教育を開始し、その他の学校でも行われています。その中で、学校教諭ではなく、医師やがん経験者が外部講師となる授業が効果的であることが示され、本部門においても、岐阜県、岐阜市のがん教育推進に積極的に関わっています。
(参照:岐阜県 学校におけるがん教育の手引きを公開します)
【がん・生殖医療】
詳しくは、がん・生殖医療外来のページをご参照ください。
日本全国で「つながる」「楽しむ」「学ぶ」1週間です。
~ 一緒に知ろう 共に語ろう AYA世代のがんのこと ~
がんと向き合っていくことに世代は関係ありませんが、大人に比べてAYA世代の方への「がん」サポートがまだまだ整っていない現状があります。学校、働き方、将来の暮らし方、恋愛や結婚、妊娠など選択肢がたくさんある世代だからこそ、いろんなサポートが必要です。
私たちは、若者世代のがんの今を発信することで、あなたやあなたの大切な人の今と未来の選択肢につなげたいと考えています。
医師や看護師などの医療従事者だけではなく、患者さんや支援の団体、企業、学生さんやクリエイター、ITのプロや学校の先生も。
職業も、年齢も、性別も、関係なく全国のサポーター達(=AYAメイト)が、がんの正しい理解や若いあなたの未来を願い、いろんな企画を通じて、AYA世代とがんの今を発信していきます。
岐阜県小児・AYA世代のがん等育成医療相談支援センターでは、小児・AYA世代(0~39歳)の相談をお受けするための専用メールを開設しました。
ご相談はメールでお受けし、相談員がご相談の内容を確認し、お返事いたします。
がんやてんかんなどの長期療養をされている方の不安や悩みを、メールで気兼ねなくご相談ください。
本センターへ送信された相談メールの受理については、原則翌日に折り返しメールで受理のご返信をします。(休前日、休日の場合は休み明けとなります。)