新手術棟完成

Vol.50

2022.06.29

特集

新手術棟完成
2022年4月に最先端の設備を備えた新手術棟が完成。
より高度な医療が幅広く提供できる環境が整いました。

スクリーンショット 2024-07-19 141319.png

患者さんの待機時間を減らし、より多くの手術が行える体制を整備

 岐阜大学医学部附属病院は、岐阜県における高難度の疾病に対応する病院として、幅広い医療を提供しています。どの診療科においても、岐阜県のみならず、東海地方、さらには日本をリードするような医師が勤務しており、さまざまな検査や薬物療法、放射線治療、リハビリテーションなどの各分野で活躍しています。手術治療もその一つであり、例えば、悪性腫瘍においては、都道府県がん診療連携病院として岐阜県内の進行がんや合併症の多い患者さんの治療を積極的に行っています。
 しかしながら、大学病院をはじめとした手術件数の多い医療機関では、どうしても手術の待機期間が数カ月に及んでしまうという問題を抱えています。実際、岐阜大学医学部附属病院においても、がんと診断されてから実際に手術を行うまでに数カ月かかるといった診療科も出ていました。こうした問題を抜本的に解消するため、私たちが以前から望んでいたのが手術室の増加でした。ただ、既存の手術棟では新たなスペースを確保する余裕がなかったことから、この度、既存の手術棟と併用する形で、新手術棟を設置することにしたのです。
     2022年4月に新手術棟が完成したことで、これまで12室だった手術室が5室増え、全部で17室となりました。既存の手術室に比べてどれも非常に広く、余裕のあるスペースを確保しています。現在の手術は、顕微鏡、内視鏡、ロボット、外視鏡、ナビゲーション、出血量を減らすエナジーデバイスなど、さまざまな医療機器を必要とします。さらに、大学病院では、複数の診療科による合同手術が数多く行われるのに加え、大学でしか対応できない県内外の患者さんも数多くご紹介いたただきます。そのため、新手術棟には、最先端の医療機器を用いることで幅広い手術に対応できる機能を持たせています。
 

ハイブリッド手術室の導入に加え、ロボット手術は充実の2台体制に

 新手術棟で新たに導入された代表的な設備が、ハイブリッド手術室とロボット手術の2つです。ハイブリッド手術室とは、手術台に血管造影装置を組み合わせた手術室のこと。これにより、高画像の透視や3D撮影を活用した最先端の医療が提供できるのが大きなメリットです。新手術棟にはこのハイブリッド手術室が2室設けられました。
 ハイブリッド手術室が導入されたことで、心臓血管外科においては、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル的大動脈弁置換術、胸腹部大動脈に対するステントグラフト内挿術、下肢ASOに対する経カテーテル的血管形成術、弁膜症に対する人工弁置換術、狭窄症に対する冠動脈バイパス術が行われるなど、最先端の設備を活かした高難度な疾患の治療が幅広く行えるようになりました。
 一方、67㎡のゆとりある広さを確保したロボット手術室では、最新鋭の手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を2台導入しました。当初、泌尿器科から適用が始まったロボット手術ですが、徐々に保険適用が広がるなかで拡大を続けており、現在では、泌尿器科を筆頭に、消化器外科、呼吸器外科、産婦人科などの患者さんに対して1日最大3件のロボット手術を実施。今後もさらなる増加が予想されています。

     そのほかにも、既存の手術棟に比べて大幅に面積を拡張したバイオクリーンルームを備えているのも特長の一つです。空気中の微細なちりも除去できる非常に清浄度の高い手術室で、これまでの1.5倍に広くすることで、整形外科の手術などをより安全に行える体制を整えました。さらに、最先端の手術内映像システムを採用し、患者さんの安全の確保や、業務の効率化を図るのと同時に、災害時の対応などにも備えています。新手術棟の完成を機に、将来のメディカルDX(デジタルトランスフォーメーション)を見据えた先行投資も進めており、今後はARやVRなどの最新技術を取り入れながら、低侵襲かつ精密な手術が受けられる環境をさらに拡充させていきます。
 

    高難度の手術に対応することで、患者さんが安心できる医療を提供します

       手術部は、執刀する外科医のみならず、麻酔科医師、看護師、臨床工学技士、薬剤師、放射線技師、事務職員といった多くの医療スタッフで運営されています。新手術棟が完成した今年度は、「多職種連携を強化し、安心、安全、良質な手術を提供する」という部の目標を掲げました。今後もさらなる手術件数の増加が見込まれますが、その中でも患者さんが安心して手術を受けていただけるように、これまで以上にチームワークを発揮していきたいと考えています。
       岐阜大学医学部附属病院では、手術のみならず、内科系、放射線科なども含めた全診療科を通して、高度な医療を提供し続けていますので、安心して受診いただければと思います。
     



     

    Q.「ハイブリッド手術室」とは?

    A. 従来の手術台と心・血管X線撮影装置を組み合わせた手術室です。従来は別々の部屋で行われていた手術を一つの部屋で行うことで、より高度な手術が効率的かつ安全にできます。今回、当院には心臓血管外科用と脳神経外科用の2つのハイブリッド手術室が導入されました。これにより「経カテーテル的大動脈弁置換術・TAVI(タビ)」のように、ハイブリッド手術室で行うことが必須条件になっている治療が実施できるようになり、治療の選択肢が広がりました。

    Q.患者さんへのメリットは?

    A. ハイブリッド手術室は、手術中にC T(コンピューター断層撮影)の撮影が可能です。これにより三次元CT画像をもとに、術者が手術部位を正確に確認しながら高度で精密な作業ができます。さらに、放射線の被ばく量や造影剤の使用量を抑えられます。また、麻酔専門医の全身麻酔管理のもと安全に手術を行えるほか、血管損傷などの重大な合併症発症時にもスムーズな外科的修復を 実行できます。

    Q.国内でのハイブリッド手術室の導入例は?

    A. ハイブリッド手術室そのものは10年以上前に国内に導入されました。最新のハイブリッド手術室を2つ持つ国立大学病院はほとんどありません。新手術棟が完成して数カ月ですが、既に心臓血管外科用のハイブリッド手術室では大動脈瘤に対するステント治療、脳神経外科用のハイブリッド手術室では脳動脈瘤塞栓術などの血管内治療を行っており、今後もさまざまな治療を導入していく予定です。
     


     

    Q.「ダヴィンチ」とは?

    A. 世界で最も普及している手術支援ロボットです。低侵襲技術を用いて複雑な手術を可能にすることを目的に開発されました。内視鏡、鉗子、メスなどを装着したロボットを術者が3Dモニターを見ながら操作して手術を行います。ロボットが自動的に手術をするといったイメージを持つ患者さんもいますが、あくまで操作は医師が行います。これまで保険適用外だった手術についても保険適用が拡大されており、日本国内での導入事例や手術件数も増加傾向にあります。

    Q.患者さんへのメリットは?

    A. 傷口が小さく、出血が少ないため、術後の回復が比較的早いことが最も大きなメリットです。術者にとっては、3Dモニターによって肉眼の10~15倍の拡大視野で術部を見ることで、より細かく組織や血管が認識できます。また、ロボットのアームは人の手首や腕よりも大きく曲がって回転するため、人体の可動域を越えた手術操作が可能です。人体よりも繊細で緻密な手術操作によって、患者さんへの負担が少なく済みます。

    Q.岐阜大学医学部附属病院での手術例・実績は?

    A. 当院は、泌尿器科、消化器外科、呼吸器外科、婦人科手術にロボット手術を積極的に導入しています。これまで前立腺手術は約300例、腎部分切除術を50例、膀胱全摘除術は70例程度行っています。また、年間30例以上の患者さんに膀胱の手術を行っていますが、これは全国では第3位、大学病院の中では日本一の症例数です。当院はロボット手術の豊富な実績がありますので、安心して相談いただければと思います。  


    お話を聞いた人・・・
    岐阜大学医学部附属病院 手術部
      部長
    1. 小川 武則先生

    2. 副部長
    3. 長瀬 清 先生

    4. 副部長
    5. 村瀬 妙子 看護師長


    6. ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

      副病院長
    7. 土井 潔先生

    8. 副病院長
    9. 古家 琢也先生