感染制御室の役割

Vol.51

2022.10.30

特集

感染制御室の役割
2022年4月に開設された感染制御室。
新型コロナウイルスの感染拡大が長期化し、一層の対策強化が求められる社会情勢において果たすべき役割とは?



コロナ禍でも必要な医療を止めないためには、
患者さん一人ひとりの感染対策へのご協力がとても重要です。


 岐阜大学医学部附属病院では、今年4月から新たに「感染制御室」を開設しました。当院では、これまでも生体支援センターで感染対策に取り組んできましたが、感染対策の組織であることをより明確化するため、新たな部署を立ち上げるに至ったのです。
 感染対策を考える上で大事なのは、「そもそもなぜ感染制御が必要なのか」という視点です。例えば長期間入院してベッドでの生活が続くと、患者さんの体力、免疫力が低下します。どうしても治療の過程で患者さんが感染症にかかりやすい、重症化しやすい状況が生まれてしまうわけです。ご自身の病気を治すために当院に入院されているにも関わらず、それ以外の感染症で治療がうまくいかない事態が起こるのは避けなければなりません。そこで、感染制御室では、感染対策のルールやマニュアルを策定し、それが遵守されているかを巡回して指導を行っています。また、院内のデータや報告をまとめ、問題が起きていないかどうかをチェックする役割も果たしています。

 もう一つの活動の柱となるのが、細菌の増殖を抑制する抗菌薬の適正使用の推進です。1990年代以降、抗菌薬の不適切な使用により薬が効きにくい薬剤耐性菌が生まれ、社会問題となっています。新たな耐性菌を生まないよう、各科の医師に対して抗菌薬の正しい使い方の助言や支援などを行っています。

 
     コロナ禍以降は、より徹底した感染対策を求められています。入院時にコロナウイルス感染がわかると、患者さんにとっても、本来受けるべき手術や治療を受けられないリスクが生じます。いかに入院前や入院中の感染を防ぐかがとても重要です。すべきこと自体は、手指消毒、マスク着用など、一般的に重要といわれていることと変わりありません。予定通り治療を進めるために、患者さんご本人とご家族には感染対策を徹底していただき、入院・手術に備えていただくようお願いします。また、入院中も面会を原則禁止にするなど、一般社会より厳格な管理にご協力ください。

     感染対策は、私たち医療従事者だけでなく、患者さんにも一緒に取り組んでいただくことが重要です。特に入院や手術を控えている方は、改めて基本的な感染対策を徹底していただければと思います。
 
お話を聞いた人・・・
岐阜大学医学部附属病院 感染制御室
    室長
  1. 馬場 尚志 先生