医療の質管理室

Vol.51

2022.10.31

特集

医療の質管理室
近年、「医療の質」に対する世間の関心の高まりを受けて、全国の医療機関で医療サービス向上への取り組みが行われています。当院でも「医療の質」向上のため2022年4月に立ち上がった「医療の質管理室」の活動を紹介します。


病院全体で「医療の質」に対しての意識を高め、向上していきたい。

一般企業では、製品のコストを下げたり、作業プロセスを見直したりするために、昔から業務の質を測定・評価する取り組みが行われてきました。今では当たり前のこととして世の中に広く浸透しています。その一方で、医療機関では、一般企業に比べると旧態依然とした部分があり、近年こうした状況に変化が見られ、「医療の質」を管理するという動きが全国的に広がりを見せています。
 医療の質と一口にいっても、その定義にはさまざまな解釈が存在します。治療の実績、最新機器の導入状況など、何をもって「質が高い」「良い病院」と判断すべきなのかという問題はあるものの、医療の質の向上を目指した専門部署を新たに立ち上げ、継続的な活動に取り組む医療機関が徐々に増えてきました。こうした流れを受け、岐阜大学医学部附属病院においても、今年4月から「医療の質管理室」を新たに立ち上げました。

 医療の質管理室は、5年に1度、第三者機関から評価を受ける「病院機能評価」のプロジェクトメンバーを引き継ぐ形で組織されています。当院では、最先端の治療を安全に提供するため、定期的に病院機能評価を受けていますが、求められる「質」が高まっており、継続的な取り組みが求められるようになってきています。そこで、2年ほど前に委員会を立ち上げ、これまで見過ごされてきた病院全体の課題をあぶり出すところから活動を始めました。その結果、今年2月には、無事に5年間の病院機能評価の認定を得ることができたのですが、今後取り組むべき病院の課題がクリアになったことを受け、そのままプロジェクトを終了させるのではなく、「医療の質管理室」がプロジェクトを継承する形で活動を継続させていこうと考えたのです。
 医療の質とは、非常に多岐にわたる概念です。医療安全にも密接に関わりますし、患者さんへのサービスなども医療の質を大きく左右します。もちろん、最新の治療ができているか、手術の実績がどうか、といった部分も関係します。そこで、私たち医療の質管理室がまず取り組むべきは、医療の質を測るための指標を作ること、そして、さまざまなデータをより簡単に抽出できるシステムを構築することだと考えています。

 今年4月に立ち上がったばかりの組織で、まだ手探りの部分が多いですが、その中でも今年は4つのプロジェクトを進める計画です。1つ目が、手術のインフォームドコンセントの同席率調査です。これは医師からの説明の場に看護師にも同席してもらうことで、分からない部分を看護師からサポートし、患者さんの理解を深めるための取り組みですが、その実施状況を調査します。2つ目は、長期入院している患者さんや、退院後にすぐ再入院してしまう患者さんの割合を調べる調査です。3つ目は、手術後の患者さんがいつ頃から歩き始め、食事を食べ始めることができるのかを、電子カルテのデータをもとに調査するプロジェクトです。そして4つ目が、入院時のビデオ説明などの理解度を図る患者さんへのアンケート調査です。
 医療の質管理室が中心となり、さまざまな診療科で取り組みを進めていますが、実は、看護部や薬剤部、放射線部などでは、ずっと前から非常に進んだ取り組みが展開されています。ただ、残念ながら、こうした活動が病院全体に十分周知されていないのが実情です。そこで今後は、年に数回、病院内で講演会をするなど、医療の質に関する先進的な取り組みを病院全体で共有していくことができればと考えています。

病院機能評価認定について

     当院は2022年2月4日付けで、公益財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価認定を受けました。病院機能評価とは、医療機関が提供するさまざまな医療サービスが、患者さんの望んでいる内容と質で提供されているか、診療活動の中で発生する問題点をきちんと改善できているかなどの病院の現状と問題点を明確にするため、第三者である公益財団法人日本医療機能評価機構が評価を行い、一定の水準を満たした病院に対して認定証を発行するものです。評価は、4つの領域について「書類審査」「訪問審査」で行われます。
     当院は「一般病院3」の区分において認定を受け、10項目において評価S(秀でている)を獲得しました。
 
お話を聞いた人・・・
岐阜大学医学部附属病院 医療の質管理室
    室長
  1. 土井 潔 先生