厚生労働省の「脳卒中・心臓病等総合支援センターモデル事業」に選定され、
2024年6月に設置された『岐阜県脳卒中・心臓病等総合支援センター』。
県を代表するセンターとして、さまざまな支援や連携が期待されています。
2024年6月、県を代表する支援センターとして開設
脳卒中や心臓病は、ある日突然発症するケースがほとんどです。心の準備ができていない状況で治療が始まり、退院後の生活が一変する人も多くいます。今もたくさんの患者さんが、後遺症も含めた何らかの症状に不安を抱えながら生活しています。「岐阜県脳卒中・心臓病等総合支援センター」は、そうした患者さんやご家族を支えることを柱に、他機関との連携や啓発活動、情報発信など包括的な支援を行なっています。「脳卒中センター」と「循環器センター」、そして「総合患者サポートセンター」が連携し、当院の患者さんだけでなく広く県全体を対象にした「岐阜県脳卒中・心臓病等総合支援センター」として、今年6月にスタートしたばかりです。当センターの事業内容は多岐にわたります。内部的には医療従事者に向けての研修・勉強会の開催、地域の医療機関との連携や活動支援などもありますが、一般の皆さんに直接関係する内容としては、「相談支援窓口」の開設や、県民向けの公開講座や情報発信といった「普及啓発活動」が挙げられます。脳卒中や心臓病に限らず、どんな病気にもいえることですが、早期発見や早期治療がとても重要です。そのために正しい情報にアクセスできること、早期発見のための知識を身につけてご自身や家族の異変に気づくことも大切です。
脳卒中は突然起こる脳疾患で、「急性脳血管疾患」を意味します。主に、脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血の3つの病型があります。命の危険があるのはもちろん、一命を取り止めても後遺症をきたすケースも多く、発症を機に要介護となることもあります。
虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、弁膜症、心筋症、大血管疾患や末梢動脈疾患、心不全といった、心臓に関する病気の総称をいいます。日本人の死因の第2位を占める心臓病。高齢化と生活習慣の変化により、患者数は増加傾向にあります。
専門家による相談支援窓口 悩み解決の"道しるべ"に
当センターは、担当診療科の医師はもちろん、看護師や薬剤師、理学療法士、作業療法士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどの多職種によるチームで構成されています。今年8月、患者さんやそのご家族を対象とした「相談支援窓口」を開設しました。病気や診療内容については従来通り医師へ直接相談していただきますが、それ以外の不安や心配事について、対面や電話、Webなどで気軽に相談することができます。
患者さんは、脳卒中や心臓病を発症した直後の急性期はもちろん、その後の回復期、自宅に戻ってからの生活期まで、長いスパンで病と向きあっていくことになります。また、発症による日常生活動作(ADL)※の低下は、「退院後の生活が心配」「仕事が続けられないかもしれない」といった、生活面・就労面の不安を招きます。しかし、そうした悩みに戸惑いながらも誰に相談していいか分からず、一人で抱え込んでしまうケースが多いのも現状です。「病院で先生に聞くほどではないかも...」と、医療機関での相談をためらってしまう人もいます。
今回開設した相談支援窓口は、リハビリや服薬、食事に関する相談から、介護・福祉サービスの利用、医療費についての心配事、そして在宅療養や職場復帰に向けた悩みまで、さまざまな相談をお受けし、解決に向けてどうすればいいのか、その糸口をつかんでいただくための窓口です。患者さんからの相談を直接お聞きするのは、当センターの医療ソーシャルワーカー(MSW)。小さな不安や悩みの種を見逃すことなく聞き取り、適切な支援や治療など、次のアクションへつなぎます。まずはMSWと一緒に、悩み解決の"道しるべ"を見つけていきましょう。また、センターとしてはそれぞれの病気に関する幅広い相談に答えられる専門家「脳卒中療養相談士」や「心不全療養指導士」の育成にも注力し、チームの底力をさらに上げて支援を強化していきたいと考えています。就労支援や両立支援については、産業保健センターなどの関係施設と連携し、両立支援コーディネーターとの協力体制を築きながら、患者さんにとって最適な解決策を、一緒に見つけていくお手伝いをしていきます。
※日常生活動作(ADL)...日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作(Activities of Daily Living)のこと。主に、起居動作、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容動作を指す。
それぞれの地域と共に 「オール岐阜」で取り組む
当センターは厚生労働省のモデル事業として、岐阜県と連携して運営しています。決して当院だけの組織ではなく、岐阜県民に広くひらかれた場であることを、より多くの方に知っていただきたいと思っています。地域住民を対象とした普及活動としては、セミナーなどの県民公開講座や小中学校での普及啓発活動のほか、公式Webサイトの開設や情報提供など、情報発信活動にも注力していきます。岐阜県はとても広大で、医療圏も東西南北に広く分かれています。当センターが県の中心的存在を担っていくことは確かですが、県内の全ての患者さんに直接アプローチすることは物理的に不可能です。今後は県内の各医療圏の基幹施設にもその一端を担っていただき、双方向の情報共有を重ねて地域の医療機能を把握したうえで、患者支援体制を構築していくことが求められると思います。そうした基幹施設の中枢機関として当センターが十分に機能していけるよう、医療機関や各関連施設とこれまで以上に密な連携を取っていきたいと考えています。センターの設立はゴールではなく、患者さんをもっと支援していくための"土台"が完成したということです。各地域と互いに力を合わせながら、「オール岐阜」で取り組んでいきます。
患者さん本人の 「病気に立ち向かう力」を支援する
人は、突然重い病が降りかかってくると、想像以上に弱気になってしまうものです。はじめてのことで「どうしていいかわからない」「解決策がない」と感じると、途端に負のスパイラルに陥ってしまい、本来持っているはずの「病気に立ち向かう力」を、どこかに置いてきてしまうのかもしれません。この事業の根幹は、患者さんが「病気に立ち向かう力」を発揮できる環境や心境を支えていくこと。不安や悩みを一つずつ解消していくことで、きっと「もう少しがんばってみよう」「きっと回復してみせる!」という勇気に変わっていくはずです。また、患者さんの中には、元気そうに見えても実はかなり行動制限があり、以前のように働くことができない人もいます。職場の理解も得られにくく、思い悩んでしまい、まだ働きたいのに諦めざるを得ない、という人も少なくありません。でもそれはもしかすると、周囲に正しい知識を持った人がいて、支援していく体制があれば、患者さんは治療と両立しながら働く道もあったのかもしれません。そういった意味でも当センターでは、脳卒中や心臓病という病気について理解を深めてもらうための公開講座の開講やセンター発の情報発信も、積極的に続けていきたいと考えています。
「回復したい!」という想いから湧いてくる力の大きさは、年齢や体力的なものだけではありません。周囲が患者さんやご家族の不安に寄り添い、解決に向けて共に進むこと、悩みを知って支えてくれる人がいるという事実が、前を向いて進む力になると思います。患者さんご本人が「病気に立ち向かう力」を持ち続けられるよう、我々はさまざまな人たちと手を取り合い、地域全体としての患者支援体制の充実を図っていきます。患者さんやそのご家族の"心"にどこまでも寄り添いながら、しっかりと力強く支えていける存在になることが、私たちの使命の一つだと考えています。
県民への普及啓発活動として
「健康ハートの日2024 in GIFU」を開催
「健康ハートの日(8月10日)」にあわせて「岐阜の心臓病診療を知る ~心臓病診療の今までとこれから~」を開催しました。大倉先生による講演会「ここまで進んだ狭心症の診断と治療」、参加希望者の実演参加による心肺蘇生講座、座談会などが行われました。「チームで行う、心臓カテーテル治療最前線」と題したデモンストレーションでは、ステージに手術室内そっくりの状況が準備され、術者らが登場。参加者らが見守る緊迫した雰囲気の中、手術の一部始終を再現し、会場からは拍手が湧き起こりました。
▲(左)講演の様子(じゅうろくプラザにて) (右)脳卒中や心臓病についてのパネル展示
「健康ハートの日2024 in GIFU」を開催
「健康ハートの日(8月10日)」にあわせて「岐阜の心臓病診療を知る ~心臓病診療の今までとこれから~」を開催しました。大倉先生による講演会「ここまで進んだ狭心症の診断と治療」、参加希望者の実演参加による心肺蘇生講座、座談会などが行われました。「チームで行う、心臓カテーテル治療最前線」と題したデモンストレーションでは、ステージに手術室内そっくりの状況が準備され、術者らが登場。参加者らが見守る緊迫した雰囲気の中、手術の一部始終を再現し、会場からは拍手が湧き起こりました。
Information
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TEL:058-230-7049(平日9:00~17:00/休診日・土日祝除く)
ホームページはこちらhttps://www.hosp.gifu-u.ac.jp/origin/gifu-noushin-center/