病気や生活への不安や悩みを支援の輪につなげていく役目
人は誰でも、病気や事故、加齢などによって、これまでと同様の生活や仕事ができなくなったり、生活が立ち行かなくなったりと、さまざまな困難に遭遇する可能性があります。そのような、想像もしていなかった問題に直面したときの相談相手が、 医療ソーシャルワーカー(MSW) です。私たちは、患者さんの事情はもちろん"心"にも寄り添いながら、利用できる社会保障制度やサポートできる専門職や事業所がないか、さまざまな解 決策を共に考えています。MSWは、ご本人がもっている力を大切にし、人と制度、人と人、人と社会の「つなぎ役」となる福祉の専門職※です。MSWの主な仕事のひとつに「退院支援」 があります。患者さんの入院前からお話をお伺いし、各診療科の医師や看護師らとカンファレンスを行い、退院後の生活を見据えて安心して治療を続けられるようお手伝いをして います。治療費や家族のサポート体制のことはもちろん、退院後も仕事や学業を続けやすいよう、生活相談にも対応しています。入退院を繰り返している方や、自宅療養をしながら長く通院している方など、 長期療養の患者さんに対してもさまざまなサポートをしています。
※ MSWは、社会福祉士や精神保健福祉士等の国家資格を有する専門職です。
カンファレンスの様子。
患者さんの入院1週間以内に話し合いを行います。
多機関・多職種の連携でやさしくつなぐネットワークを
岐阜大学医学部附属病院は「難病診療連携拠点病院」に指定されています。医療機関と行政、 関連機関による難病医療ネットワークを構築するため、私は「 難病診療連携コーディネーター」として事業の企画運営などにも携わっています。当院のような急性期病院は、治療の早い段階で医師・看護師・薬剤師・リハビリ専門職・栄養士が連携して対応できるのが強みです。一方、在宅医や訪問看護をはじめとした地域支援者は、何度も訪問を重ねながら細やかに患者さんの生活に寄り添っていけることが強みです。そうした多機関多職種をつなぐことで連携体制を整え、それぞれの弱みをカバーし、強みを生かすことができます。 特に難病支援については疾患の進行に合わせて、連携機関の長所を発揮できるようなネットワークづくりを目指しています。私は以前、後方支援医療機関や地域支援者側にいた経験がありますが、今改めて、大学病院と地域の連携の重要性を感じています。また、支援者向けに研修会などの啓発活動をしていくことも、「難病診療連携コーディネーター」の重要な仕事の一つだと考えています。患者さんが一人で悩みを抱え込んだり、孤立したりしないために、親身になって寄り添えるよう、日々努めています。 私たちMSWにできることは、その困難を乗り越えるための支援の糸を「つなぐ」こと。患者さんが 元の生活に戻ったときに頼れる人たち、例えばケアマネジャーや在宅医、 訪問看護師、関係機関のスタッフなど、支援者のネットワークがあることは、大きな支えになると思います。患者さんが助けを求めてふっと手を伸ばした先に、いつでもその手をやさしく取ってくれるような輪をつくっていくことが、目標であり使命だと思っています。
岐阜県難病医療連絡協議会事務局
難病患者さんに関わる地域支援者のネットワークづくりのために、調査研究についての検討、研修会の企画開催などを行っています。「難病診療連携コーディネーター」としての活動も野口さんの大切な仕事の一つです。
医療ソーシャルワーカー(MSW)の皆さん
お話を聞いた人・・・
岐阜大学医学部附属病院
医療ソーシャルワーカー
難病診療連携コーディネーター
岐阜大学医学部附属病院
医療ソーシャルワーカー
難病診療連携コーディネーター