がんの新たな治療法として注目を集める「光免疫療法」。
日本では「頭頸部がん」のみに適応され、
県内でもまだ症例数の少ない治療法です。
耳鼻咽喉科・頭頸部外科長の小川先生に、詳しくお聞きしました。
A. 光に反応する薬を投与して光を当てることで、がんだけを狙い撃ちする、新しい治療法です。
光免疫療法は「薬剤を投与したあとに、光を当てる」治療法で、日本では頭頸部がん※で行われています。がん細胞のみにくっつく抗原を点滴投与し、その抗原ががんに集まってから光を当てることで、がん細胞だけを破裂して死滅させる仕組みです。すべての頭頸部がん患者が対象となるわけではなく、まずは手術や放射線療法が優先されます。再発や切除不可など、従来の治療法の選択肢では助けられなかった人を救えるかもしれない、頼もしく新しい選択肢だと、私は感じています。
※頭頸部(とうけいぶ)がん...顔面から首(鎖骨から上)の範囲に発生するがんのこと。鼻、口、のど、上あご、下あご、耳などのがんを指します(脳、眼球は除く)。
光免疫療法のしくみ
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治療前日に、2時間以上かけて
点滴で薬剤を投与します
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20~28時間後、薬剤が
行き渡ったところに光を照射します
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色素が化学反応を起こすことで
がん細胞を死滅させます
A. 治療後に日光や室内灯に当たることで「光線過敏症」を起こす可能性があります。
治療に使うレーザー光はX線やγ線とは異なり、日光などにも反応することから、治療後は「光線過敏症」に注意が必要です。体内の薬剤が光に反応する期間が退院後も続くため、強い光に当たると皮膚が赤くなったり、皮膚や眼に痛みが出る可能性があります。入院中は光を遮った暗い部屋で過ごしていただきます。投与後4週間は直射日光に当たらないように気をつけ、退院後も外出を極力避けてカーテンなどで自然光を遮り、室内照明もできる限り暗くした部屋で過ごしましょう。光線過敏症以外の副作用には、がんがあった部分の痛みや腫れなどがありますが、この治療法は正常細胞へのダメージが少ないため、免疫機能の低下などは考えにくく、比較的生活の質を維持しやすい治療法ともいえます。
治療に使われるレーザー光の波長は690nm(ナノメートル)で、人間の目で見ることができる光の範囲(可視光線:380~780nm)内にあります。レントゲンのX線や放射線治療のγ線とは異なり、人体への影響が少ないため、正常細胞はダメージを受けません。
A. 光を照射したがん細胞を破壊するだけでなく、
免疫を活性化する効果の波及にも期待しています。
光免疫療法は今も研究中の治療法ですが、直接がん細胞を破壊するだけでなく、がんに対する免疫を活性化する可能性についても期待されています。これが認められると、転移がんへ効果を発揮することも夢ではないと思っています。また、光免疫療法と「免疫チェックポイント阻害薬※」の併用により、免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ(ブレーキがかかるのを防ぐ)効果も期待されており、今世界中で臨床試験が行われています。当院はどの診療科においても、信頼のおける医療チームが形成されています。専門医らが職種の壁を越えて一つのチームとなり、こうした新しい治療法も含む多くの選択肢の中から、患者さんにとって最善の方法を一緒に考えながら、共にがんと闘っていきたいと考えています。
※免疫チェックポイント阻害薬...免疫ががん細胞を攻撃する力を保つ薬。がん細胞がリンパ球などの免疫細胞の攻撃を逃れる仕組みを解除する働きがあります。
「世界頭頸部がんの日」
プロ野球の始球式に小川先生が登板しました
新たながん治療に向けた開発を進める楽天メディカルが、「世界頭頸部がんの日(7/27)」に、楽天イーグルスの一軍公式戦で「楽天メディカル頭頸部がん克服デー」を開催。日本頭頸部癌学会の代表として、小川先生が始球式に登板しました。さすが元ピッチャー、会場が湧き立つナイスピッチングでした!
▲2024年7月27日 楽天モバイルパーク宮城