58号 うぶねトピックス「最先端個別化医療推進室」

Vol.58

2025.02.28

トピックス・お知らせ

58号 うぶねトピックス「最先端個別化医療推進室」



「個別化医療」の窓口を一本化、ゲノム医療をより多くの方へ

     がん治療の新たな選択肢としても注目されている「個別化医療」。患者さん一人ひとりの遺伝子情報をもとに、その人に最適な治療法を個々で見つけることが可能になり、今、個別化医療の実現は加速し続けています。2024年秋、その窓口である「最先端個別化医療推進室」を、岐阜大学医学部附属病院がんセンター内に新設しました。
     個別化医療の最大の柱となるのは「がんゲノム医療」。これは、がん細胞の遺伝子異常を調べ、その結果をもとに治療方針を選択する医療のことをいいます。治療法を決定するうえで重要な「がん遺伝子パネル検査」は、2019年の保険適用以降、当院でも検査数が年々増加しています。岐阜県内でも検査のニーズは高まっており、今回の推進室開設で窓口を一本化することによって、受診のハードルをできるだけ下げ、がんゲノム医療の恩恵を受けられる患者さんを一人でも増やしていくことが大きな目的です。
 


最適な治療法のための独自の検討体制

     岐阜大学医学部附属病院は、厚生労働省より指定された「がんゲノム医療連携病院」であり、県内で唯一「自立型エキスパートパネル」を持ちます。全国的にも自立型エキスパートパネルを持つ連携病院はまだまだ少なく、全体の10%未満となっています。エキスパートパネルとは、患者さんの遺伝子情報をもとに、ゲノム医療の専門家や薬物療法の専門家など多職種の医療従事者が集まり、担当医を交えて最適な治療法の推奨を決定する、ゲノム医療の肝とも言える重要な会議体のことです。当院ではこのエキスパートパネルを院内で実施できる体制を整えており、検査結果をより迅速に患者さんにお伝えできることが大きな特徴です。
     そしてもう一つ、質の高い医療を提供するためには、専門知識を持つ医療従事者の育成が欠かせません。同推進室では、定期的に講習会や勉強会を開催し、岐阜県内の医療機関と連携しながら、人材育成にも力を注いでいきたいと考えています。
 


全ゲノム解析がもたらす 医療の新時代

     がん治療にとどまらず、「全ゲノム解析」と呼ばれる新たな技術への期待が今、高まっています。これは、すべての遺伝子情報を解析することで、従来発見が難しかった遺伝子の異常を明らかにし、それに基づいた治療につなげるものです。まさに医療の新時代が到来しつつあり、早期発見だけでなく、解析を通じて新たな治療法が開発されることで、これまで治療が難しかった疾患が克服される可能性もあります。将来的に保険診療への導入も期待されており、多くの患者さんにとって希望の光となると思います。
    「最先端個別化医療推進室」の設立は、患者さん一人ひとりに適した治療を提供し、選択肢を広げるための重要な一歩となりました。どれほど優れた検査結果が得られても、それを的確に解析し、治療に結びつける強力なチームが必要不可欠です。当院では診療枠の拡大を進めるとともに、地域の拠点病院との連携をさらに強化し、一人でも多くの患者さんに最適な医療を届けるため、これからも着実に歩みを進めていきます。
 

がん遺伝子パネル検査について



お話を聞いた人・・・
岐阜大学医学部附属病院 がんセンター
    副センター長・最先端個別化医療推進室 室長
  1. 牧山 明資

  2. 血液・感染症内科 助教
  3. 生駒 良和

  4. 消化器外科 医員
  5. 近石 和花菜