CAR-T(カーティー)細胞療法とは?

Vol.58

2025.02.28

最先端医療

CAR-T(カーティー)細胞療法とは?

患者さんの免疫細胞を活用する最新の治療法、
「CAR-T(カーティー)細胞療法」が今、世界中で注目されています。
その仕組みと可能性を、血液·感染症内科の兼村先生にお聞きしました。






CAR-T細胞療法とはどんな治療法か教えてください!

A. 遺伝子改変した免疫細胞により、がん細胞をやっつける、新しい治療法です。


「CAR-T細胞療法」は、患者さん自身の免疫細胞であるT細胞(Tリンパ球)を使ったがん治療法です。「CAR-T細胞」とは、T細胞にCAR(※)遺伝子を組み込んだもので、がん細胞を見つけて攻撃·破壊する働きをします。治療の流れとしては、患者さんの血液内のリンバ球からT細胞を取り出し、遺伝子改変させてCAR-T細胞を作成します。これを試験管内で増殖させ、点滴で患者さんの体内へ戻します。CAR-T細胞療法は、従来の抗がん剤治療などで効果が得られなかったり、再発を繰り返したりする雞治性の血液がん患者さんに対して、非常に有効な治療法として注目されています。
※CAR...Chimeric Antigen Receptor(キメラ抗源受客体)。がん細胞を認識するためのタンパク質。










患者さん側の副作用やリスク、現在の課題はありますか?

A. 「サイトカイン放出症候群」という副作用に注意が必要です。


この治療法の副作用に「サイトカイン放出症候群」があり、CAR-T細胞が体内で増殖する際に炎症性物質が大量に放出されることで発症します。主な症状は高熱、血圧の低下、呼吸困難などです。高齢者や体力の低い患者さんにはリスクが大きいため、事前に慎重な評価が行われ、治療に耐えられると判断された場合のみ実施されます。当院でこれまでにCAR-T細胞療法を受けた患者さんの最高齢は75歳です。また、CAR-T細胞療法を実施するには、製剤の取り扱いや細胞を海外へ輸送するための体制、そして徹底した無菌管理が求められます。こうした治療を行うには高度な設備や厳格な基準が必要であり、それを満たした施設でしか対応できません。県内でも、当院をはじめ、限られた施設のみが認可を受けているのが現状です。


    1. リンバ球を採取
    2. CAR-Tをつくるため患者さん自身のリンバ球を採取します。

     
    1. リンバ球を輸送
    2. 厳重な体制のもとに管理され、海外に輪送されます。

     
    1. CAR-T細胞の作製
    2. T細跑にCARを組み込みます。生成した細胞を治療に必要な量まで増やします。

     
    1. CAR-T細胞の輸送
    2. 徹底した無菌管理のもと当院に運ばれます。

     





こうした免疫療法に期待していることはありますか?

A. がん治療の新時代をを切り拓いていく、免疫療法の大きな進歩に期待しています。


CAR-T細胞療法は条件が厳しく高額ですが、とても有望な治療法です。これまでのがん治療は、手術、抗がん剤、放射線治療という三本柱が中心でした。しかし近年、新たな武器としてさまざまな免疫療法が登場し、これまでの治療法を上回る効果も期待されています。CAR-T細胞療法はまだ新しい治療法で、現在は再発·難治性の患者さんが対象ですが、今後は初発の段階からの治療や、他の免疫療法との併用も検討され、今世界中で治験が行われています。こうした免疫療法の進展により、現在の標準治療の風景が、数年後には大きく変わっている可能性が高いです。医療が大きな変革期を迎えている今、こうした新たな治療の可能性に、私自身もとても希望を感じています。




お話を聞いた人・・・
岐阜大学医学部附属病院 血液・感染症内科 医局長
    准教授
  1. 兼村 信宏 先生