脳神経外科

出雲 剛
科長
出雲 剛

脳神経外科では脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)や重症頭部外傷などの中枢神経救急疾患、脳腫瘍、顔面けいれんや三叉神経痛、不随意運動などの機能的脳疾患、中枢神経系奇形、脊髄脊椎疾患の治療をはじめとして、外来診療では頭痛、めまい、しびれ、意識消失発作などの診断治療、近年増加しつつある脳梗塞の危険因子管理や二次予防、てんかんに対する薬物治療などを行なっています。 突然の激しい頭痛、一側の手足の麻痺、言葉がしゃべれない、片方の目が見えないといった症状がある場合には脳卒中や脳腫瘍の疑いがありますので、たとえその後に症状がよくなったとしても、早目に専門医の診察を受けられることをお勧めします。一方、慢性の頭痛やふらつき、しびれなどのほとんどは脳に異常を認めない心配のない症状ですが、中には重大な脳の疾患の初期症状であることもありますので、「脳の病気では?」とご心配になったら、ご遠慮なくご相談ください。

主な疾患・診療内容

脳血管障害(脳卒中)

脳血管障害(脳卒中)は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分類されます。 脳梗塞は脳の血管が詰まってしまう病気で、突然手足の麻痺や言語障害を生じますが、脳の血管が動脈硬化などで徐々に細くなっておこる場合(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)と、不整脈などにより心臓でできた血の塊(血栓)が流れてきて脳の血管に詰まっておこる場合(心原性脳塞栓)があります。脳の血管が動脈硬化で細くなってきた場合には、抗血小板剤などの内科的治療や脳卒中危険因子(リスクファクター)の管理が重要ですが、中には頚部内頸動脈血栓内膜剥離術、頸動脈ステント留置術や頭蓋外内バイパス術などの外科治療が脳梗塞の予防に有効な場合があります。一方、心原性脳塞栓の場合には、発症後早期であれば薬で血栓を溶かす治療(血栓溶解療法)が、またそれらのうち主幹動脈(脳の太い血管)が閉塞した場合には血栓回収デバイスを用いた血管内治療が極めて有効です。治療までの所要時間に制限があるため、当科ではいつでも緊急対応ができるように診療体制を組んでいます。 脳出血のほとんどは高血圧が原因です。血腫量が少ない場合には保存的治療を行いますが、血腫量が多い場合には開頭や穿頭による血腫除去術を行います。 くも膜下出血は突然激しい頭痛をきたし、重症の場合にはそのまま死に至る大変怖い病気です。脳の血管に出来た脳動脈瘤というコブが破れることが原因で、動脈瘤はいったん破れると繰り返し破れてしまうため、一刻も早く再破裂を防ぐ手術が必要です。開頭術(クリッピング術)と血管内手術(コイル塞栓術)の二つの方法がありますが、当科ではどちらの治療法も経験が多く、症例に応じて最適な治療法を選択しています。 最近では、脳ドックなどで動脈瘤(未破裂動脈瘤)が見つかることが増えています。未破裂動脈瘤が破れる確率はおよそ年間1%と考えられておりそれほど高い頻度ではありませんが、動脈瘤の大きさや形、場所などによる破れやすさや治療に伴う危険性などを患者さんとご相談の上、治療方針を決定しています。

脳血管障害(脳卒中)

脳血管障害(脳卒中)は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に分類されます。 脳梗塞は脳の血管が詰まってしまう病気で、突然手足の麻痺や言語障害を生じますが、脳の血管が動脈硬化などで徐々に細くなっておこる場合(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞)と、不整脈などにより心臓でできた血の塊(血栓)が流れてきて脳の血管に詰まっておこる場合(心原性脳塞栓)があります。脳の血管が動脈硬化で細くなってきた場合には、抗血小板剤などの内科的治療や脳卒中危険因子(リスクファクター)の管理が重要ですが、中には頚部内頸動脈血栓内膜剥離術、頸動脈ステント留置術や頭蓋外内バイパス術などの外科治療が脳梗塞の予防に有効な場合があります。一方、心原性脳塞栓の場合には、発症後早期であれば薬で血栓を溶かす治療(血栓溶解療法)が、またそれらのうち主幹動脈(脳の太い血管)が閉塞した場合には血栓回収デバイスを用いた血管内治療が極めて有効です。治療までの所要時間に制限があるため、当科ではいつでも緊急対応ができるように診療体制を組んでいます。 脳出血のほとんどは高血圧が原因です。血腫量が少ない場合には保存的治療を行いますが、血腫量が多い場合には開頭や穿頭による血腫除去術を行います。 くも膜下出血は突然激しい頭痛をきたし、重症の場合にはそのまま死に至る大変怖い病気です。脳の血管に出来た脳動脈瘤というコブが破れることが原因で、動脈瘤はいったん破れると繰り返し破れてしまうため、一刻も早く再破裂を防ぐ手術が必要です。開頭術(クリッピング術)と血管内手術(コイル塞栓術)の二つの方法がありますが、当科ではどちらの治療法も経験が多く、症例に応じて最適な治療法を選択しています。 最近では、脳ドックなどで動脈瘤(未破裂動脈瘤)が見つかることが増えています。未破裂動脈瘤が破れる確率はおよそ年間1%と考えられておりそれほど高い頻度ではありませんが、動脈瘤の大きさや形、場所などによる破れやすさや治療に伴う危険性などを患者さんとご相談の上、治療方針を決定しています。

脳腫瘍

脳腫瘍と聞くと大変怖い病気だと思われる方が多いと思いますが、実は原発性脳腫瘍の 6 、 7 割は髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫といった良性の腫瘍です。良性腫瘍は手術で摘出できればなおりますし、大切な神経細胞や脳神経、血管などを傷つけないために少し腫瘍を残したとしても、短期間に大きくなることはありません。また、まわりの脳組織を障害すること無く、残存した腫瘍だけを放射線で治療することもできるようになりました(定位的放射線治療)。 一方、脳腫瘍の中には脳に染み込むように浸潤する悪性の腫瘍もあります。このような腫瘍の場合には神経症状を悪化させることなく手術で全摘することは非常に困難です。当科では MRI や PET という検査で、大切な運動中枢や言語中枢と腫瘍との関係を十分に調べ、手術中はニューロナビゲーターや神経刺激を行い、大切な神経中枢を温存して神経症状を悪化させること無く最大限の腫瘍切除を行うようにしています。大切な神経機能を残すため、手術中にいったん麻酔をさまして、神経症状を確認しながら手術を進める覚醒下開頭術も行っています。このようにして、可能な限りの切除を行った後に追加するレザフィリン治療を東海地方に先がけて導入しました。この治療は腫瘍細胞をできるだけ選択的に(つまり正常脳にダメージを与えずに)治療する方法です。レザフィリン(タラポルフィン)という注射薬を手術前日に投与すると、腫瘍にだけ薬剤が取り込まれます。手術によって腫瘍をできるだけたくさん摘出した後、摘出面(浸潤細胞が残っているところ)にレーザー光線を当てることによって、タラポルフィンが強い殺細胞効果を発揮します。腫瘍の栄養血管も閉塞するので、より強い抗腫瘍効果が高まります。その他、抗がん剤や放射線治療(外照射や定位放射線治療)を行うことで、治療成績の向上を図っています。

脳腫瘍

脳腫瘍と聞くと大変怖い病気だと思われる方が多いと思いますが、実は原発性脳腫瘍の 6 、 7 割は髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫といった良性の腫瘍です。良性腫瘍は手術で摘出できればなおりますし、大切な神経細胞や脳神経、血管などを傷つけないために少し腫瘍を残したとしても、短期間に大きくなることはありません。また、まわりの脳組織を障害すること無く、残存した腫瘍だけを放射線で治療することもできるようになりました(定位的放射線治療)。 一方、脳腫瘍の中には脳に染み込むように浸潤する悪性の腫瘍もあります。このような腫瘍の場合には神経症状を悪化させることなく手術で全摘することは非常に困難です。当科では MRI や PET という検査で、大切な運動中枢や言語中枢と腫瘍との関係を十分に調べ、手術中はニューロナビゲーターや神経刺激を行い、大切な神経中枢を温存して神経症状を悪化させること無く最大限の腫瘍切除を行うようにしています。大切な神経機能を残すため、手術中にいったん麻酔をさまして、神経症状を確認しながら手術を進める覚醒下開頭術も行っています。このようにして、可能な限りの切除を行った後に追加するレザフィリン治療を東海地方に先がけて導入しました。この治療は腫瘍細胞をできるだけ選択的に(つまり正常脳にダメージを与えずに)治療する方法です。レザフィリン(タラポルフィン)という注射薬を手術前日に投与すると、腫瘍にだけ薬剤が取り込まれます。手術によって腫瘍をできるだけたくさん摘出した後、摘出面(浸潤細胞が残っているところ)にレーザー光線を当てることによって、タラポルフィンが強い殺細胞効果を発揮します。腫瘍の栄養血管も閉塞するので、より強い抗腫瘍効果が高まります。その他、抗がん剤や放射線治療(外照射や定位放射線治療)を行うことで、治療成績の向上を図っています。

脊髄、脊髄疾患および機能的脳疾患

手足のしびれ、麻痺、痛みは頭の病気だけではなく、首や腰の骨(脊椎)が変形して神経や脊髄を圧迫して起きることもあります。症状が強い場合には椎間板の摘出や、骨を削ることで症状を軽くすることが可能です。当科では顕微鏡を用い、小さな傷口で体に優しい手術を行っています。骨の固定にはチタンやセラミックの固定具を用いており、手術後の安静も1、2日と短く、術後 1 週間程度の入院で済むように工夫しています。 頭蓋内の血管が顔面神経を圧迫すると顔面けいれん(眼周囲のぴくつきから始まり、ひどい場合は口角にも広がります)、三叉神経を圧迫すると三叉神経痛(顔面の突発的な痛み)を生じます。これらに対して、薬物療法はもちろん、顔面けいれんに対するボツリヌス毒素の注入、また血管と神経の圧迫を解除する手術も積極的に行っており、良好な結果を得ています。 その他にも、薬物治療が困難なパーキンソン病などの不随意運動や疼痛、てんかん発作に対し外科的治療を行っています。

脊髄、脊髄疾患および機能的脳疾患

手足のしびれ、麻痺、痛みは頭の病気だけではなく、首や腰の骨(脊椎)が変形して神経や脊髄を圧迫して起きることもあります。症状が強い場合には椎間板の摘出や、骨を削ることで症状を軽くすることが可能です。当科では顕微鏡を用い、小さな傷口で体に優しい手術を行っています。骨の固定にはチタンやセラミックの固定具を用いており、手術後の安静も1、2日と短く、術後 1 週間程度の入院で済むように工夫しています。 頭蓋内の血管が顔面神経を圧迫すると顔面けいれん(眼周囲のぴくつきから始まり、ひどい場合は口角にも広がります)、三叉神経を圧迫すると三叉神経痛(顔面の突発的な痛み)を生じます。これらに対して、薬物療法はもちろん、顔面けいれんに対するボツリヌス毒素の注入、また血管と神経の圧迫を解除する手術も積極的に行っており、良好な結果を得ています。 その他にも、薬物治療が困難なパーキンソン病などの不随意運動や疼痛、てんかん発作に対し外科的治療を行っています。