リハビリについて知る
脳卒中のリハビリ
脳卒中リハビリテーションとは
脳卒中によって引き起こされる身体機能障害は、多岐にわたります。
片麻痺や運動失調などの運動障害、しびれや痛みなどの感覚障害、意識の障害、認知症、失語症、失認、失行、抑うつなどの高次脳機能障害、さらに嚥下障害、眼球運動障害、構音障害といった脳神経障害があります。これらの症状に対し、発症直後から理学療法、作業療法、言語聴覚療法を行うことが大変重要です。
リハビリテーションは、患者さんの機能回復を目指して、専門的なアプローチで支援します。理学療法では筋力やバランスの改善、日常生活に必要な基本的動作や歩行能力の向上を図ります。作業療法ではより応用的な日常生活動作をスムーズに行えるようにサポートし、言語聴覚療法ではコミュニケーション能力や嚥下機能の改善を目指します。
脳卒中リハビリテーションに関わるスタッフ
脳卒中のリハビリテーションには下記の専門スタッフが関わります。
脳卒中リハビリテーションの流れ
脳卒中リハビリテーションは、一般的に急性期、回復期、維持期の3つの段階に分けられます。それぞれの段階で異なるアプローチが取られ、患者さんの回復を支援します。
急性期のリハビリテーション(発症直後から数週間)
脳卒中発症直後の治療と並行して、体の機能低下を最小限に抑えるリハビリが行われます。身体機能の観点からは、上半身を起こして座れる程度に回復するまでの期間が急性期です。この期間は症状の重さによって異なり、数日から数週間かかることがあります。意識障害が続く場合でも、筋肉や関節の機能低下を防ぐため、ベッド上での関節運動などが行われます。早期のリハビリ開始が回復状況を良くすることが知られており、容態が安定していれば発症当日から始まることもあります。
回復期のリハビリテーション(数週間から数か月)
入院中の医療施設や専門のリハビリ施設で、集中的なリハビリが行われる期間が回復期です。急性期の病状が落ち着いた(=専門的な治療の必要性や状態悪化の可能性が少なくなった)時点で、速やかに回復期の集中的なリハビリに移行するのが理想的です。直接の自宅への退院が難しい患者さんでは、この時期のリハビリは最も重要です。この期間に、日常生活に必要な動作や機能の回復を目指します。回復期の長さは症状の重さによって異なり、数週間から数か月以上かかることがあります。
維持期のリハビリテーション(数か月から6か月以降)
自宅に戻り、回復期に取り戻した機能の維持を図る期間が維持期です。日常生活の自立と社会復帰を目指します。退院後も日常生活動作やそれを応用した訓練を自然に取り入れることが、機能の維持につながります。この時期には脳卒中による後遺症を受け入れながら生活できるような環境の整備、心理的な支援、介護者の負担の軽減、社会活動への参加の促進など、地域社会からのサポートも重要になります。
各段階で、リハビリテーション科の医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家がチームを組んで患者さんを支えます。
退院後にも、脳卒中相談窓口などを通じて、患者さんの悩みを社会的、心理的に軽減できるようサポートします。
最大限の回復を目指して、一歩一歩確実に進んでいきましょう。
心臓病のリハビリ
心臓リハビリテーションとは
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)とは、心臓病の患者さんが体力を回復し、自信を取り戻して、快適な家庭生活や社会生活に復帰することを目指す総合的なプログラムです。また、再発や再入院を防止することも重要な目的です。心臓リハビリには運動療法だけでなく、生活指導やカウンセリングも含まれています。
心不全、心筋梗塞、狭心症、心臓手術後などの患者さんは、心臓の働きが低下していることや治療中の安静により、運動能力や体を調節する力も低下しています。そのため、退院後すぐに強い活動をすることは難しく、どの程度の活動が安全なのかが分からないため不安を感じることもあります。心臓リハビリでは、こうした不安を解消し、適切な運動療法を行うことで、安心して生活を再開できるようサポートします。
さらに、心臓病の原因となる動脈硬化の進行を防ぐため、食事指導や禁煙指導も行います。心臓リハビリには、専門知識を持った医師、理学療法士、看護師、薬剤師、臨床心理士、検査技師、ソーシャルワーカーなど、多くの専門職が関わります。これらの専門家がチームを組んで、患者さん一人ひとりの状態に応じた効果的なリハビリプログラムを提案し、実施します。
心臓病リハビリテーションに関わるスタッフ
心臓病のリハビリテーションには下記の専門スタッフが関わります。
心臓リハビリテーションの効果
心臓リハビリの効果は、多くの研究によって実証されています。
具体的には、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患の患者さんが心臓リハビリを行うことで、行わなかった場合と比べて心血管病による死亡率が26%低下し、入院のリスクが18%減少します。また、心不全の患者さんが心臓リハビリを行うと、入院のリスクが25%減少し、心不全による入院は39%減少することが証明されています。
さらに、心臓リハビリの運動療法には以下のような多くの効果があることが報告されています。
筋肉量の増加・体力の向上
基礎体力の向上で、体が楽に動けるようになり、心臓への負担が減ります。その結果日常生活で心不全の症状(息切れなど)が軽くなります。
心臓機能の改善
心臓の働きが良くなります。
血液循環の向上
血管が広がりやすくなり、末梢の血液循環が良くなります。
動脈硬化の進行抑制
既にできている動脈硬化性プラーク(血管の壁の盛り上がり)が小さくなります。
高血圧の改善
血管が広がりやすくなり、高血圧の改善が期待できます。
血糖値の改善
インスリンの効きが良くなり、血糖値の改善が期待できます。
自律神経の安定
不整脈の予防になります。
生活の質の向上
運動を行うことで仕事や家庭生活、社会生活の満足度が高くなります。
心臓リハビリに参加することで、生活の質が向上し、毎日をより快適に過ごせるようになります。
これらの効果を最大限に引き出し、患者さんが健康で充実した生活を送れるよう、心臓リハビリは重要な役割を果たします。
心臓リハビリテーションの種類
心臓リハビリは、自宅やスポーツジムなどで一人で行う運動とは異なり、運動療法だけでなく様々な専門職種が連携して包括的に行うプログラムです。医師、看護師、理学療法士などの専門スタッフが、患者さんの体調管理から薬や食事についての指導、生活や仕事の相談まで、総合的にサポートします。
運動療法
心臓リハビリでは、心拍数や血圧・心電図を確認しながら、安全で効果的な運動療法を行います。専門知識を持ったスタッフが、患者さんの病状や体力に合わせた運動プランを提供し、不整脈などのリスクを監視しながら進めます。
生活指導
日常生活での健康管理も重要な要素です。食事指導や禁煙指導など、心臓病の原因となる生活習慣の改善を図ります。これにより、再発予防や病気の進行を防ぐことができます。
メンタルサポート
心臓病の治療には、精神的なサポートも欠かせません。臨床心理士などがカウンセリングを行い、患者さんが不安やストレスを軽減できるよう支援します。
教育プログラム
心臓リハビリでは、患者さん自身が病気について理解し、自己管理できるように教育プログラムも提供されます。これには、心臓病の基礎知識や、日常生活での注意点などが含まれます。
心臓リハビリは、これらの要素を組み合わせて、患者さん一人ひとりに最適なプランを提供します。心臓病の患者さんには、専門スタッフのサポートを受けながら、安心して心臓リハビリを行うことを強くお勧めします。
心臓リハビリテーションの流れ
心臓リハビリは、退院して終わりではなく、退院後も外来通院によるリハビリを継続することが重要です。
死亡率の低下や再入院の予防といった心臓リハビリの効果は、退院後に外来心臓リハビリを続けることで得られます。外来通院が難しい場合も、在宅での運動療法や民間の運動施設を利用することで、生涯にわたり運動療法を継続することがとても大切です。退院は大きな目標ですが、その後も心臓や血管の病気を再発させず、再入院を防ぐことが最大の目標となります。
急性期のリハビリテーション
急性期とは、入院直後のICUや病棟で行うリハビリテーションです。この期間は、急性期治療により身体の状態を安定させることが最優先されます。同時に、体力の低下を防ぐために、できる範囲で活動時間を増やしていきます。
回復期のリハビリテーション
回復期は、入院中の病棟でのリハビリテーションから、退院後の外来通院によるリハビリテーションを指します。この期間には、運動療法による体力の回復だけでなく、服薬や食事の指導、カウンセリングなどが行われ、日常生活での注意点や社会復帰に向けた生活習慣の改善を目指します。
維持期のリハビリテーション
維持期は、生涯にわたるリハビリテーションを指します。この期間には、回復期に獲得した生活習慣を継続し、再発予防に努めます。具体的には、在宅での運動療法や地域の運動施設を利用しながら、定期的に医療機関でのフォローアップを受けることが推奨されます。
心臓リハビリは、患者さん一人ひとりの状態に合わせたプログラムを提供し、長期的な健康維持と生活の質の向上を目指します。心臓病の再発を防ぎ、安心して日常生活を送るために、継続的なリハビリを行いましょう。