緩和医療チームの役割

緩和医療チームの役割

緩和医療チームの役割

  • 痛みやその他の身体的な症状の軽減と精神的、社会的、スピリチュアルな問題への支援を行い、安全かつエビデンスに基づく質の高いケアの提供を心がける。
  • 患者・家族とのコミュニケーションを通じて患者・家族の治療や療養に関する意思決定を支援する。
  • 鎮静(セデーション)や輸液療法の適応を始め、DNR(Do Not Resuscitate)などについて、倫理的な側面から助言を行う。
  • 家族ケアは患者療養の全経過を通じて行う。特に終末期においては家族に対して適切なケアを行う。
  • オープンな話し合いやチーム・ミーティングを通じて医療従事者の支援を行う。
  • 継続的な緩和ケアを行うために地域病院、福祉、介護との連携を図る。
  • 医療従事者に対し緩和ケアの意識と技術の普及に努める。
緩和医療チームの役割

身体的ケア

がん患者さんの身体的なつらさの代表として痛みがあります。
がん患者さんの約70%は何らかの痛みを経験するといわれていますが、鎮痛薬の適確な使用に加え放射線治療や神経ブロックなどをあわせることによってその痛みの多くをコントロールできるよう努めています。

また、がんのつらさには、痛み以外に倦怠感・食欲不振・悪液質・悪心・嘔吐・便秘・腹水・呼吸困難・不眠などがあり、それらの治療として色々な薬物治療に加え非薬物ケアを併用することによって苦痛を緩和出来るよう多職種チームで対応しています。

これらの症状が重症化してくると患者さんの日常生活は非常に制限され人間としての尊厳を損なうことにもつながるため精神的なケアに留意することが重要です。

そのためにわれわれはがんと診断された時から患者さんに対して身体症状の緩和と並行して精神的苦痛の緩和も一緒に取り組み患者さんが安楽に過ごせるように努めています。

精神的ケア

こころのケアというと2011年3月11日に起こった東日本大震災を思い出します。

そのキーワードは「喪失」でしょうか。がんという病気においても、私たちは様々な喪失を体験します。

体の機能、社会的役割、重要な人間関係などの領域において、私たちは病気による喪失を受け入れ、そして病気に制限されつつも、新たな機能、役割、関係を身につけていきます。

そのような人間の自然な生きざまを援助することが緩和ケアの役割でしょうか。

看護ケア

看護師は、あなたの心配ごと、困りごとなどについて聞かせていただいて、一つひとつ整理し、解決したり、軽くすることで、あなたやご家族が安心して療養できるようにお手伝いしています。

人はがんと診断されたとき、再発の診断をされたとき、治療方法の選択などに対して戸惑い、悩み、病気や治療に向き合うまでに葛藤を抱える方が多くいます。

このようなときにも、あなたやご家族の方の思いを確認し、お一人おひとりの方が、自分の気持ちを整理し、納得して病気や治療に向き合えるようお手伝いしたいと考えています。

具体的には痛みの強い方には痛みの専門の先生と、不安が強い方には心の専門の先生、そして病棟の担当の先生、看護師、栄養士、ソーシャルワーカー、退院調整看護師、リハビリと連携を取り、チームであなたが辛いと考えている様々な症状やあなたの気がかりに焦点を当て、それらが緩和できるように努めています。

まずは、困りごと、気がかりなことがありましたら、担当の先生、看護師にお話ししてください。
私たちはあなたの療養生活が少しでも快適なものになるように願っています。

お食事

緩和ケアとは、以前は終末期をイメージされておりましたが、がん治療の初期段階から必要であり、緩和ケアにおける栄養管理もがんの進展に伴う病態の悪化を抑制し、患者さんのQOLの維持や向上を目的とします。

栄養素を摂取することによって、がん細胞の増殖を促進するというエビデンスはありません。治療をしていく中で、がん患者さんの約半数に体重減少がみられ、そのことによって手術・化学療法・放射線療法といったがん治療に支障をきたします。

がん患者さんの栄養管理は、
①がん治療を行うため、栄養状態の改善を目的とした積極的に栄養療法を行う時期
②がんによる代謝が正常な代謝を上回る状態(がん悪液質)になった場合には、食事の楽しみや心地よさを目的とした命を支える栄養療法を行う時期
の2通りがあります。

よって、がん患者さんの病態を正確に把握し、適正な栄養療法を行うことが重要になります。入院中は、管理栄養士が定期的に病室に伺い、化学療法・放射線療法の副作用(悪心・嘔吐・味覚異常・口内炎・下痢など)による食事摂取量の低下がみられる患者さんには、適正な栄養摂取ができるようサポートします。また、必要に応じて食事の他に栄養剤の併用も行います。

終末期に向かい、強制栄養や輸液が患者さんのQOL向上につながらない場合には、食事自体の楽しみを感じてもらえるようにできる限り個々の嗜好にそった食事内容で提供します。

栄養指導は、入院中や外来、化学療法を受けながらも行うことが可能ですのでお気軽にご相談ください。

お薬

こんにちは、緩和ケアチームの薬剤師です。

私たちの仕事は、薬という手段を通じて患者さんの様々な苦痛を軽減し、がん治療に前向きに取り組むためのサポートを行うことです。

苦痛の種類は人それぞれですので、痛みやだるさ、気持ち悪さなど身体的なもののみでなく、不安な気持ち、不眠などの心のケアも同時におこないます。

私たちは、患者さんの苦痛の程度や性質を確認し、それに応じて薬の増減量や種類・剤形・服用タイミングの変更を提案しています。

薬の使用、特に医療用麻酔の使用はしばしば便秘・嘔気・眠気などの副作用を伴いますが、きちんと副作用対策をすることで、安全かつ効果的に薬剤の使用を続けることが可能となります。

このように、薬剤の服用が患者さんにとって負担にならず、効果が最大限発揮され、副作用がなるべく少なくなるよう適宜情報の提供を行っています。

あなたの苦痛について教えてください。

療養との向き合い方

"がん"の診断を告げられ時に、「信じられない」「まさか自分が」「なんで自分が」「夢であってほしい」と考えるのは自然な感情です。

また、再発、転移が告げられれば、初回とは異なるつらさが生じるでしょう。これらのつらい気持と向き合いながら、この状況を乗り越えるために、周りの人の力も借りながら、がんと向き合い、現実的に考えて行動していく必要があります。

ひとり一人、生き方が異なるように、がんとの向き合い方、治療の進め方も同じではありません。自分らしい向き合い方を考えてみましょう。

がんによる痛みやその他のつらい症状があると、正しい判断や治療を選択することができなくなります。そのような場合には、まずその症状を和らげるための治療を受けることが大切です。

痛みに限らず、体や心のつらさを和らげ、自分らしさを大切にする考え方を緩和ケアといいます。治療を続けながら、緩和ケアも受け、自分らしく過ごせる方法を周囲の方と共に考えましょう。

療養の場の選択について

治療を進める中で、先生から「がんの治療は難しい」、あるいは「緩和ケアを中心に進めましょう」「在宅で過ごすか、緩和ケア病棟、もしくはホスピスに転院してはどうか」などと伝えられることがあるかもしれません。

病気を治すことが難しい事実を受け入れることは本当に辛いことですし、先生から見放されたように感じることもあるでしょう。しかし、このような状況でも、辛い症状、不快な症状を楽にしたり体調を整える緩和ケアは受けられます。

事実を冷静に理解した上で、あなたやご家族がどのような治療や生活をしていきたいかを考え、担当の先生や周囲の方と相談していくことが重要です。

当院は特定機能病院のため、長期間にわたり入院・療養していただくことは難しい施設ですが、あなたにとって療養生活が少しでも快適なものになるように適切な場で過ごしていただくため地域との連携に努めていきます。

どこで過ごすかを決めるのは、あなた自身が何を大切にしたいかです。がんを治す治療ができなくても、あなたが何もできないわけではありません。

ご家族の方と住み慣れた自宅で生活するのも一つの選択ですし、緩和ケア病棟やホスピスで過ごすことも一つの選択です。

あなたが療養の場を選択するに当たっては、退院調整看護師、ソーシャルワーカーと共に情報提供を行い、必要な調整をしていきます。

まずは、『あなたはどのように過ごしたいか、あなたの大切なことは何か』について考えていただき、どこで過ごすことがあなたらしく過ごせるかを共に考え、選択できることをお手伝いしていきたいと思います。

家族のケア

大切な家族にがんの診断がされることは、患者さん以外の家族もとても苦しい状況に置かれます。

そのような苦悩している状況でありながら、家族は患者さんを支える存在として、支援を提供する役割を担うものと周囲から期待されがちです。そして家族自身もそのように思っている場合がよくあります。

患者さんのためにできる限りのことをしたい、そのためには自分が頑張らなければいけない、でも頑張れない...そういった思いから家族も疲れを感じたり、落ち込んだり、体調を崩したりする場合もあります。

家族も自分の生活を大事にすることが大切です。家族も心身を休めること、必要なときはいつでも支援を受けることが大切です。

何をしたらいいのか分からない、どのように患者さんと接すればいいのか分からない、子どもに、親に、患者さんの病状をどのように伝えればいいのか分からない...このような家族の心配ごと、困りごとなどについてもお話を聞かせていただいて、一つひとつ整理し、解決したり、軽くするようお手伝いしています。

まずは困りごと、気がかりなことがありましたら、担当の先生、看護師にお話してください。