病院長を支える仲間たち ~縁の下の力持ち~
みなさんは病院で働いている職員といえばどのような人を思い浮かべるでしょうか?医師、看護師、受付スタッフ・・・。様々な職種の方がいますが、おそらくみなさんが想像する以上の方々の働きで岐阜大学病院は成り立っています。
この「病院長のゆかいな仲間たち」は、病院長である小倉真治先生と、様々な職種の職員とのお話しを通じて、岐阜大学病院のよさや、病院で働く職員がどのようなことをしているのかということを発信することで、より当院を身近に感じてもらうために企画しました。
第1回は、保安職員のお二人と病院長とのお話です。
病院内でどんな仕事をしているのか、働く上で苦労やモチベーションなど、ふだん病院を利用するだけでは分からない様々な話が展開されています。
今後広報誌うぶね、当ホームページ等で随時連載の形でお届けしていきますので、岐阜大学病院のことをもっと知っていただけたらと思います。お楽しみに!
病院長×保安職員
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
保安職員 森下 優 杉岡 武
犯罪を起こさない"サービス"を提供
小倉 病院職員が困った時に助けてくれるのが、保安職員のお二人ですね。
森下 警察OBということで、主にトラブル対応などの業務ですが、行政的なお願いをされることもあります。基本的には院内の安全確保の観点から、暴言暴力、クレーム対策ですね。
小倉 モンスターペイシェントもいますね。
森下 最近テレビでも取り上げられましたが、キレる高齢者も増えていますね。
小倉 どういうもんなんですかね。
森下 病気の症状をなかなか受け入れられない、なかなか治らないといった患者さんの場合があると思います。高齢の患者さんは、家庭的、環境的な問題を抱えておられ、誰からも関心を持ってもらえないなどのケースがあります。
小倉 キレる人と一人の方は重なるんですか。
森下 結構重なりますね。
小倉 クレームをおっしゃる患者さんの対応はお二人にかかって来ますが、書類を読むと、やむを得ないなあ、こっちが悪いなあというのも中にはあるし、これはちょっとお医者さんやナースが気の毒だなあというのもあるし。その時の対応は変わるんですか。
森下 暴力を振るう恐れや大声での暴言を吐く可能性のある患者さんについては、医師からの依頼がある場合は、診察室の近くにいることもあります。場合によっては診察する先生に同席して、安全の確保と正常な診察ができるように配慮して対応しています。
杉岡 やっぱり言動ですね。病院側に多少ミスがあった時の対応ですね。どうしても謝罪より先に説明してしまいます。患者さんにとっては言い訳にしか見えないんですね。
小倉 まずは謝らないと、ということですね。
杉岡 患者さんに多少の過失があったとしても、「大変な思いをされましたね」と最初に声をかけるのが適切ではないでしょうか。
森下 患者さんによっては、最初からクレームを言うために来ているような人も結構多くいます。「お前なんや、いつもの先生と対応が違うやないか」と強い言葉で言われると、先生も焦られて、冷静に診察ができないケースもありますね。
小倉 そういう状況を作っちゃうんですね。
杉岡 受け答えに対して、言葉尻を取られて、次々と突っ込んできます。本論からどんどん離れていくこともよくあります。そうなると、対応が全く取れない状態になります。
森下 今どこで何が起こるかわからない時代です。県内でもお医者さんが刺されたり、暴力行為で逮捕されたりする事案がありました。病院内でこうしたことが起こらないように警備員が巡回警戒に当たっているほか、私たちも病院内外をランダムに巡回して、犯罪が起こらないように未然防止に努めています。
小倉 制服がないのでわからないですよね。
森下 制服だと警備員がいますからね。私たちは私服です。
杉岡 私服だと第三者的な立場の人と思われて、冷静さを取り戻してくれることもありますね。
小倉 お二人は元々の警察官でしたが、当時の仕事と病院の中の仕事って、どこが一緒でどこが違うんですか。
森下 警察の場合は、法律があってそれを盾に悪い者を捕まえるので、事件性の判断は厳しく検討して進めます。立証して公判まで持っていけるかが勝負です。病院の場合は、悪い者、やかましい者を「叱りとばせば済む」とか「つかまえとけばいい」ということではないので、傾聴したり、なだめたり、ほかの患者さんになるべく迷惑にならないように、コントロールしながら、説得できる人には説得します。できない人には犯罪になるかどうかの判断をして対応します。
小倉 じゃあ病院のほうが難しいですね。
森下 患者さんは身も心も病んでいる方がここにいらっしゃるわけですから、そうした事情も理解しながら、何で怒っているんだろうか。怒ったことに対して、どう対処したらいいだろうか。瞬時に判断して対応することが求められています。
小倉 確かに怒らなくてもいいことも怒ってしまうということはありえますよね。
杉岡 患者さんは、心身が痛いというのと、一方では精神的な問題を抱えていらっしゃいます。ここで働くことになり、「病院はサービス業なんだ」ということをつくづく思いました。
小倉 岐阜大学附属病院のビジョンの一行目には、「最高の患者サービスを提供する最高の病院を」とうたっています。サービス業ですよね。それ以上の犯罪を起こさないようにするサービス業です。そういう意味で、お二人には大いに感謝しています。やっぱり、ガーッとなっているのを冷めることができるような環境を作っていただけるというのが一番僕らにはできない。あとは接点ですね。事件や事故など、病院、患者さんにつきもの。お二人にご相談するというのが大事なところ。最高の患者サービスを提供するためには、そういう思いを共有していただいているまさに保安官。
杉岡 年の功じゃないですけど、年寄りが顔を出して「どうしたんですか」と聞くことで、若干気持ちが収まることもあると思います。
小倉 年の功です(笑)。
森下 好奇心が旺盛なものですから、医療の現場でお役に立てればありがたいなあという気持ちでここに来させてもらっています。実際に病院では、警察まで上がってこないトラブルや犯罪となる事案がかなり多いことを知りました。
小倉 お二人の存在は、本病院にとって重要です。ぜひこれからもお体に気をつけながら、われわれを助けてください。
森下 患者さんの安全確保と病院の全スタッフの皆さんが安全で安心して仕事のできる環境づくりに万全を期する所存です。
杉岡 著しい高齢化が言われる現在、働けるうちは働いて、お役に立つことが生きがいだと思っています。
【保安職員とは】
病院内での各種犯罪やトラブル事案を未然に防止するという業務を担っています。仮に犯罪やトラブルなどが発生した場合、適切に対応して処理するなど、病院内の平穏な秩序を維持する業務に努めています。また、病棟の屋内や屋外をパトロールするなど、犯罪の予防や警戒活動を行っています。患者さんからの苦情や困りごとの相談にも対応しています。