【医療支援課・クラーク】患者さんと医師との間に立つ潤滑油
病院長×クラーク
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
医療支援課・クラーク 早川 美咲 小寺 麻衣 安井 由美
手術の証明登録、診断書に情報入力
小倉 クラークのお仕事についてお聞きしていきたいと思います。
早川 「文章」「外科」「内科」「頭頸」という4つのグループを作って、誰かが休んだとしても誰かが入れるようにしています。私はそのリーダーをしています。普段は休みの管理、外来のお手伝い、外科の手術の症例登録をインターネット上で登録するNCDという仕事をしています。
小倉 NCDは診療科ごとに分かれているんですね。
小寺 先生の代わりに診断書の入力や記入をしています。担当は口腔外科、整形外科などです。書類担当は10人で、それぞれが担当する科を持っていて、入力、チェックを行い、先生に渡しています。
小倉 ひな型はあるんですか。
小寺 いろいろな保険会社がありますが、入力台紙がパソコンに入っていて、サマリーやカルテから病名、手術内容などを入力していきます。登録台紙がない時は、診断書をコピーして手書きで記して先生に確認してもらい、清書しています。
小倉 特に救急現場では事故の場合が多く、一つの事故で診断書が5枚から10枚に及ぶので、その作業をしていただけると現場のドクターは本当に助かっていますよね。
小寺 先生方がそうおっしゃってくださると、やりがいがありますね。
安井 私は休みへの対応やNCDの登録をしています。外科担当のクラークは、お子さんをお持ちだったり、家族の介護があったり、お休みされることがあるので、そこに代わりに入っています。
小倉 普段は主な担当を持たないということですか。
安井 はい、特定の科を持たずに、どこにでも入れるような体制を取っています。空いている時間帯はNCDを入力しています。
小倉 外来で患者さんと直接お話することはありますか。
早川 はい、接する機会は多いです。このような格好でも看護師さんと呼ばれることもありますね。
小倉 どういう時に接することが多いですか。
早川 初診の患者さんを案内したり、検査の場所を案内したり。待ち時間が長い時には声を掛けることもあります。
32時間の研修 やりがいと責任を感じて
小倉 この数年間で、クラークの人員を増やしましたが、今は何人くらいですか。
早川 37人です。
小倉 最初のころは14、15人という記憶がありますが。ほとんどが文書しかやれていなかった時期だと思います。クラークの仕事には、医者の仕事を助けるという意味合いがあって、いずれは入院の時でも医者がすることを手伝ってもらえるようにと、一気に倍増する計画を立てました。
早川 担当する診療科を持つことで、やりがいや責任感が芽生え始めて、率先して仕事をもらうという姿勢も見られますね。
小倉 ドクターからも、「これやって」という依頼がありますか?
3人 あります。
早川 近くにいたら声を掛けてもらえるので。
小倉 専門的知識はいるんですか。
早川 あったほうが良いですね。
安井 特に資格はありませんが、入職してから32時間の研修があります。
小倉 結構なもんですね。1日8時間としても4日だからね。どんな内容ですか。
早川 実際、現場に入って、先輩クラークが指導して、その横でやるというOJTを行っています。
安井 外部の講師を招いて、医療事務や医師法など法律関係の話を聞くこともあります。
小倉 看護師には男性がいるけど、クラークは女性というイメージがありますよね。女性のほうがきめ細かくて、誠実で、男性より特異性がある感じがしますよね。
早川 外来に入ると、女性のほうが柔らかい感じは確かにあるかもしれませんね。
安井 どちらにしろ、気配りができることが大切だと思います。
小倉 確かに同じことを言っても印象で変わるからね。
早川 聞いてもらっているという感じがしますね。
小倉 保安職員さんの場合は、手のかかる患者さんもいると聞いているけど、女性だからきつく言われるということもありますか。
早川 思いをぶつけてこられる方もいますね。その時はひたすら謝っています。お話をお聞きして、そこからほかのスタッフと考えるというようにしています。
小倉 機嫌の悪いままドクターのところに行くと、しなくてもいい喧嘩になってしまうから助かりますね。
同じような境遇でお互いを分かち合う
小倉 あらためてじっくりユニフォーム見ましたが、なかなかいいですね。僕が選んだわけではないけれど。清楚で、まさに誠実でという雰囲気がありますね。入院センターとはまた雰囲気が違いますよね。みんな病院で制服着ていたら、看護師さん?と思われてしまうけれど。
早川 制服は全部で2パターンあって、ベストに白いブラウスというバージョンもあります。好みで選んでいます。
小寺 外来は動くので暑いんですよね。書類の部屋も動いていなくても暑いので、半袖がちょうどいいくらいです。
小倉 クラーク職として、働きやすい、働きにくいという課題はありますか。
小寺 書類担当では、同じような年齢で同じように子どもがいて家族がいるというメンバーが集まっているので、休みやすい環境です。例えば、子どもに熱が出た時、隣にいる人が「大丈夫だよ。帰っていいよ」と理解してくださり、誰かに任せられるのがありがたいです。
小倉 そういう人を選んでいるわけじゃなくて。
小寺 はい、そうではなくて(笑)。「お互い様だから」と言い合えるメンバーに巡り合えたのでやりやすく、続けていきたいと思っています。
小倉 病院勤務は大学病院が初めてですか。
小寺 結婚する前に病院勤務はありましたが、個人病院でしたので、代わりがいなくて、1人休むと大変でした。申し訳ないという状況で休んでいましたが、大学病院では、誰かに助けてもらえるので、本当に働きやすいです。
安井 私もお休みをしても大丈夫と思えるのは、お子さんがいるスタッフが多くて、分かり合えるというのは精神的にも気兼ねせず、続けられていると思います。
患者さんの目線や心情を常に意識
小倉 クラークという仕事で大切にされていることは。
早川 自分が受診して嫌だと思うことはしたくないので、例えば、「あまり声がかからない」とか「忘れられていないだろうか」と患者さんが感じないように努めています。
小倉 患者さんに近い場所に立ってお仕事をされているので、患者さん目線を意識されているということですか。
早川 はい、みんなそうです。
小倉 課の雰囲気も和やかですか。
小寺 はい、和やかです。
早川 連携を取りあっています。
小倉 仕事のやりがいや誇りに思っていることは。
早川 地味な仕事ですけど、先生の役に立っていると思える時が、やりがいを感じます。「ありがとう」の一言を患者さんからも言われると、やっていてよかったなあと思います。
安井 「ありがとう」と言われると、素直にうれしいです。
小倉 システムがうまく回る潤滑油のような感じですかね。患者さんとドクターの間に立って。ナースも潤滑油的なことも期待はされているけれど、より業務のほうが優先されるので、そのあたりのところを、まさにドクターの隣でサポートしてくださっている気がしています。
小寺 患者さんは書類は先生が作っていると思われている方がほとんどだと思いますので、患者さんからのありがとうという言葉はありませんが、先生からすると手間のかかる仕事とよく聞くので、先生に信用してもらって、先生が別のことで時間を使えるようになっていると思うとうれしいですね。
小倉 医療なので、信頼関係は本当に大事ですね。特に保険会社の診断書はまさにお金が絡んでくるので。皆さんの活躍は話では聞いていましたが、システムにしてよかったと思っています。本当に縁の下の見えないところで支えていただいているのがよく分かりました。これからもよろしくお願いします。
【過去の様子】