【㈱トーカイ】病院内の清掃、リネン管理を長年にわたり担当
病院長×㈱トーカイ
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
㈱トーカイ 清掃担当 安田 慎一 リネン管理担当 日下部 示知子
手指衛生に注力 感染管理を徹底
小倉 清掃やリネン管理をお願いしていますが、あらためて仕事内容を教えてください。
安田 清掃業務では、外来や病棟の清掃をはじめ、専門部隊が特殊の機械を使いながらワックスをかけています。現在は、約50人のスタッフが携わっています。以前の司町のころから清掃業務を受託していて、思い入れのある病院です。
小倉 今一番に取り組んでいらっしゃることは。
安田 清掃の基本ということで、目に見える汚れを取ることだけに注力しがちですが、目に見えない汚れということで、感染管理、手指衛生に注力して取り組んでいます。手洗いはアルコール消毒、手指消毒剤を常に携帯して、病院内と医学部棟で一作業ごとに手洗いすることを励行しています。また、2カ月に1回、院内をラウンドしながら、できているかどうかを確認しています。
小倉 医学部棟でも手指衛生をしているのは初めて聞いて驚きました。リネン管理はどのようなお仕事になりますか。
日下部 病棟のリネン庫にパジャマやシーツを納品させていただいたり、汚品を回収したり、付き添いベッドをお出しして使い終わったら集金に伺うなどの業務をしています。患者さまのシーツ交換や、退院された方のベッド清掃、院内洗濯の業務も請け負っています。
小倉 何人くらいでされていますか。
日下部 私を含めて23人います。
小倉 どれくらいの量のシーツや病衣になりますか。
日下部 工場からこちらに納品するシーツの数は160~180枚ほど。病衣はサイズによって異なりますが、全サイズで300枚ほど、毎日注文しています。交換する分は台車に、それ以外はリネン庫に入れています。
小倉 シーツ交換はどのようにされていますか。
日下部 定期は、師長さんや夜間勤務の看護師さんから、翌朝、指示書が出ていますので、その指示通り動いて、交換をさせていただいています。患者さま第一ですので、今日はしんどいという方には、看護師さんにお伺い立ててから交換しています。
小倉 病衣はどうですか。
日下部 冬の場合は週2回、夏場の7、8、9月は週3回交換しています。
小倉 僕は汗かきなので、毎晩、着替えているんですが、そういう要望はありますか。
日下部 私たちは直接患者さんにお配りしないので分かりませんが、要望があれば、看護師さんがお出ししていると思います。私たちとしては毎日変えていただいても大丈夫ですので、リネン庫に必ず補充させていただいています。
トイレは1時間に1回清掃 きれいな状態を保つ
小倉 具体的に1日の流れはどのようになりますか。
安田 清掃は、朝早い勤務ですと7時からごみの回収、外来の清掃から始まります。8時くらいから病棟に上がり、シャワー室の清掃などを朝9時までに終えます。その後は通常の各病棟、担当エリアの清掃を実施します。遅くても午後3時から4時くらいまでに病棟の清掃が終わります。外来担当は、外来のトイレの保安も兼ねて、清掃しながらチェックしています。朝7時から夕方4時くらいまで、1時間に1回は、1階と2階に分かれて、清掃しながら巡回し、きれいな状態を保つことに努めています。日勤帯が4時に一段落すると、夜間帯が5時くらいから10人ほどが、夜8時から9時くらいまで、外来を中心に、診察の清掃を行っています。
日下部 リネンは午前8時半から午後5時半までの勤務になっています。定期のベッドメイキングの業務は午前中に1~2部署、午後1時半からもう1部署、曜日別に行っています。退院のベッド清掃は2チームあって、9時に病棟へ出発して、午前中は11時半までに終えるようにしています。パソコンに追加分が入っていると、午後5時くらいまでに終えるようにしています。洗濯室は院内に洗濯機、乾燥機がそれぞれ3台ありますので、フルに動かして、種類別に分けて納品しています。
病院のメンバーとして接遇教育に重点
小倉 患者さんからすると、皆さんの接遇が大学病院の印象を与えることになりますが、努めていらっしゃることは。
安田 新人を採用する際の入職時の教育を必ず実施していますが、最初の1ページ目は、「病院とは」から始まります。おこがましいながら、「私たちはトーカイではなく、岐阜大学病院のメンバーである」と伝えています。私たちが、病院の評価を上げさせていただくこともあれば、下げることもあるという意識をもって業務にあたるように徹底しています。また、年1回、接遇教育があり、その際にも岐阜大学病院のメンバーであることを再確認しています。
小倉 契約上は業務を委託していますが、私たちも職員の一員と認識しています。その中で、おそらく、私たちが職員に対して行っている接遇教育以上のことをされていると伺い、非常に心強く思いました。患者さんと接する機会もありますが、心掛けていらっしゃることはいかがですか。
日下部 接遇に一番重点を置いています。普通の会話でお話しすることは一番簡単なことですが、患者さまなので、なんでもしゃべっていいわけではありませんので。とにかく仕事に集中して、患者さまに不愉快な思いをさせないように努めています。
安田 私たちの業務は直接、患者さま、職員の皆さんに関わるサービス業と思っています。それ故に、接遇、マナーを大事に取り組んでいます。
小倉 誰でもいいなら簡単だけどね。大事にされているのはコミュニケーション能力ですか。
安田 はい。病室に入る時に一声かけるにしても、診療中だったら入ってはいけないとか、お見舞いの患者さんがいる時は入らないようにするなど教育しています。
小倉 マニュアルに書いてあっても、その人のセンスが問われますよね。
安田 「失礼します」の言い方ひとつにしても、投げるように言ってしまうと、伝わる印象が良くなくなってしまいます。
小倉 リネンの交換も同じですよね。
日下部 患者さま第一に考えていますので、お部屋に入る時に言葉と同時にカーテンを開けないなど、一呼吸置いてからカーテンを開けるように指導しています。
最高の患者サービスを最前線で実践
小倉 国立大学病院の病院長同士で話をすることがあって、岐阜大学に来ることもあります。そうすると、うちよりも新しい病院長が、「岐阜大学病院のほうが古いはずなのに、きれいだよね。どうして?」と聞かれたことがありました。業務を委託しているパートナーが良い仕事をしてくださっていると実感しました。
安田 岐阜大学は、看護部の皆さんを中心に、委託業者がやりやすいように努めていただいて、その結果が患者さまのサービスにつながると考えていただいているところが大きいと思います。ほかの病院さまから言っていただくのは、「カーペットがきれいに維持できている」と言われます。通常、カーペットは10年で張替えというサイクルですが、10年経過しても良い状態です。ほこりをしっかり取れるように、病院に特化したフィルターを付けた業務用の掃除機を使っていますが、大きな音がするのが難点でした。以前、患者さまから、音が大きいというご指摘をいただいた時に、当時の看護部の方が、「清潔さを維持するためには必要なんです」と、入院の案内文に、清掃に関する文言を入れていただいたのは、本当にありがたかったと感謝しています。音が小さい掃除機もありますが、静かな分、しっかり吸い込み切りません。専用の掃除機を使わせていただくことにご理解をいただきました。しかし、運用も毎日、患者さまに負荷はかけてはいけないので、行う時間や曜日を決めさせていただいて、患者さまのサービスにつながるように努めています。
日下部 私たちも感謝の気持ちで、日常の業務にあたっていますが、病院長から、そのようなお褒めのお言葉をいただくと、すごくうれしく感じ、やりがいを感じます。
小倉 最高のサービスを患者に提供する病院というのをまさに一丁目一番地で実践していただいていますからね。
安田 今後、私たちに期待していること、望まれることはありますか。
小倉 トーカイ全体としては、人手不足を何とかクリアして、今の質を保っていただきたいと思っています。今の良い状態が続いていけば、病院にとってもありがたいです。まさに毎日の積み重ねで、クオリティーを維持していくというのは、非常に大変でもあり、重要なことです。ラグビーの全国大学選手権で9連覇を達成した帝京大学の岩出雅之監督にお話を伺ったら、確実に4年間で強くなっているとおっしゃっていました。レギュラークラスの4年生が寮のトイレ掃除をして、1、2年生はのびのびとラグビーをやらせるそうです。人が嫌がることを行うという4年間の育て方をしているので、人間力も養われ、チームワークもできて、強さが続くような気がしました。継続した組織づくりは難しいですが、トーカイさんもぜひ"40連覇"以上していただきたいと思います。
【過去の様子】