【医療支援課・アシスタントコンシェルジュ】
入院する患者さんと病院をつなぐ
病院長×アシスタントコンシェルジュ
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
医療支援課 アシスタントコンシェルジュ 安田 弘美 堀端 麻里恵
入院時のファーストタッチを担う
小倉 大学病院ではこれまで、入院する患者さんがいろんな部署を回って、入院の準備をしていました。患者さんにあちこち行っていただくのではなく、最初に「入院センター」に行っていただいて、アシスタントコンシェルジュ(AC)の皆さんと、入院に関する手続きなどの確認を1カ所で行えるような流れを作りました。サービス業という発想に立っている病院は、ACを置いているところが多いと思います。皆さんには、患者さんと病院をつなぐという役割を担っていただいています。
安田 2016年5月に入院センターが立ち上がった時に、アシスタントコンシェルジュが設けられました。当初は耳鼻科から始まりましたが、徐々に診療科を増やしていき、2017年6月からはすべての診療科が対象になりました。最初は2人での船出で右も左もわからないまま手探りでスタートしました。
小倉 今何人くらいですか。
安田 2017年7月から11人体制です。早番、中番、遅番の3交代制で、6時間勤務のシフトを組んでいます。入院センターでは、案内係が1人いて、当日入院する患者さんには、番号札をお渡しして入院窓口にご案内しています。後日入院される患者さんは、ACが対応します。
堀端 入院センターにはカウンターがあって、それぞれ対面しています。また、バックヤードでは入力したり、薬剤師や看護師がいるスペースがあり、分からないことがあれば相談したりしています。
安田 入院センターでの流れは、患者さんがいらっしゃったら、まず、入院時情報シートに患者情報を記入していただくようにご案内します。ご年配の方が多いので、一つひとつ説明して記入していただきます。書くのが難しいという方には代筆しています。次に服用されているお薬や使用しているお薬の情報をお聞きします。お薬手帳をお持ちでない患者さんに対しては、同意書を書いてもらった上で、処方している薬局や病院などに私たちや薬剤師さんがお電話してお薬の情報を教えてもらい、入力します。その後は、看護師さんが面談し、面談後に患者さんの情報をシートに入力していきます。
小倉 まさに入院する時のファーストタッチになりますね。空港でいうと、チェックインカウンターような感じですね。
「お待たせしました」という気持ちで対応
小倉 患者さんに対して気を付けていることは。
安田 入院される方は1日の最後にいらっしゃいます。それまで、診療や検査で待ち続けて相当疲れてこちらに来られるので、「お待たせして、すみません」という気持ちで対応させていただいています。中にはかなり怒られている方もいらっしゃいます。そういう方への対応が難しいのですが、丁寧に対応するようにしています。
小倉 どんな感じで怒るんですか。
堀端 何度も入院されている方は、「以前は書類だけでよかったのに、どうして時間がかかるんだ」と言われる方もいらっしゃいますね。
安田 最初に情報シートを書いていただいたり、面談したりすると、どうしても時間が必要になります。
小倉 入院したことがある患者さんでも、あらためて対応が必要になるんですね。
安田 変更点だけの確認になりますが、それだけでも嫌がられる方はいますね。書類だけでいいという方が多いのですが、「確認させてください」と協力をお願いしながら進めています。帰えられてしまう方もいるので、そういう時は対応が難しいですね。
小倉 始まって間もないので、そのような患者さんがいらっしゃると思います。ご苦労をおかけしていますが、新しい入院患者さんの数は当然、これから増えていくわけですだから、1、2年でそういう人も減っていくと思います。たとえ、時間が多少かかったとしても、実際に入院した時に説明が減ったのを実感したら、心境も変わっていくと思います。
親切に丁寧に入院案内 患者さんからも好評
小倉 アシスタントコンシェルジュという仕事に就かれて、やりがいを感じるのはどういう時ですか。
安田 患者さんと対応していてうれしかったことは、「他の病院に比べて、きちんとしっかり親切に丁寧に教えてもらえるからいいわよね」というお言葉をいただけると、やっていて良かったなあと思います。
小倉 そのお仕事を反映した言葉ですよね。
堀端 よく来られる患者さんの場合、入院センターで手続きをしたのは一度だけでも、外来で週に1回来られるようになってから、来られる度に毎回顔を出されるという方もいらっしゃいます。「今日も来たよ」と声を掛けてくださって、待っている患者さんがいらっしゃらない時はお話しています。帰り際に声を掛けてくださる方もいらっしゃいます。
小倉 素晴らしいじゃないですか。
堀端 病院に来る時に悩んでいることもあるかもしれないのですが、その方はいつも笑顔なので、こちらも笑顔になれます。本当に良かったなあと感じさせてくれます。
小倉 それは想定もしていないいいお話だね。
慎重に言葉を選びながら接遇
小倉 患者さんに対して、とても気を使う部署でもありますが、大切にされていることはありますか。
安田 患者さんによってさまざまなので、話をしたいという方には耳を傾けて、聞かれたくないという方には必要以上にお聞きしないように努めています。医療に関することは分からないので、「後は看護師さんが面談しますので、いろいろ聞いてくださいね」とおつなぎします。中には重病の方もいらっしゃるので、そういう方に対しては、言葉を慎重に選びながら対応させていただいています。
堀端 募集要項を最初に見た時は、患者さんの情報入力と書いてあったので、実際に初めて入院センターに行った時に、安田さんたちが患者さんの対応しているのを見て驚きました。今まで接客業は経験してきて、笑顔を意識していましたが、患者さんが相手となると、病状が患者さんによって全く違い、中には余命宣告されたばかりの方もいらっしゃいますので、最初のころはどのようにお声を掛けていいか悩みました。
小倉 安田さんは創設時のメンバーですが、これまでのご苦労はいかがですか。
安田 最初の立ち上げから関わりましたが、私自身も医療現場での経験がありませんでしたので、まさに手探りでした。それまでの土台もなく、何も分からない状態でしたが、看護師さんや薬剤師さんにいろいろと教えていただき、サポートしていただきながら、何とかスタートすることができました。
小倉 本当にゼロからのスタートでしたから、マニュアルもなかったということですよね。
安田 大まかなマニュアルとしては、私が作成したものと、入院センターが作成したものがあります。
小倉 教育マニュアルも作られたんですね。そういう人が最初にいたから、成功したんだよね。
安田 本当は最初2人いましたが、辞めて1人という時もありました。
小倉 パイオニアは本当に苦労するね。形になってきた感触はありますか。
安田 日々、保険制度が変わっていくので、情報の更新なども含めて、覚えることが増えているのが現状です。
小倉 病院はそういう宿命がありますからね。
安田 それでもみんな頑張っていて、ありがたいことにAC全員、仲間意識を持って、協力しながらやれているので助かっています。
堀端 今は分からないことがあると、安田さんに頼ってしまうことが続いているので、みんなで分担していく体制が整っていくといいと思います。
安田 1人の患者さんに対して、薬剤師さんと看護師さん、さらには医療事務をされているニチイ学館さんもいますので、関係性を持って、協力しながら相談しやすい職場づくりができていくと良いと思います。
小倉 入院センターで業務を1本にまとめて、患者さんが戸惑わないようにしようというコンセプトでスタートしましたが、生みの苦しみがありながらも、現在のような形になっていったことに、ご苦労とご努力を感じました。しかしながら、徐々に体制が整っていると伺ったので、ぜひこれからも患者さんの一人でも多くの喜びの声を吸い上げていただいてほしいです。また、入院センターはまさに病院の玄関ですから、これからも当院を代表する看板娘として頑張っていただきたいと思います。
【過去の様子】