【総務課】病院の根幹を支える医療事務職の要
病院長×総務課
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
総務課 調達係 梅村 彩貴子 人事労務係 丹下 保菜美
「総務」「人事労務」「管理」「調達」の4係が担当
小倉 総務はまさに医療事務職の扇の要といえますが、どのようなお仕事か、あらためて教えてください。
梅村 総務課には総務係、人事労務係、管理係、調達係の4つの係があり、30人ほどいます。私は調達係で、病院の診療で使われる物品の契約や管理を担当していきます。
小倉 管理って検収するところまでしているんですか。
梅村 物流センターでも物品を扱っていますので、そちらでいろいろ問題が起きた時にも対処しています。
小倉 物品の管理はパートナー企業がやっているので、そちらをコントロールするということですか。
梅村 そうですね。日本ステリさんの物流担当者から、相談も受けることもあり、協力しながら取り組んでいます。
小倉 納入する時に、正しいかどうかというチェックは。
梅村 品番など、患者さんに使う高額な商品については、物流センターで、ロットや期限などを控えています。
小倉 入口のところでチェックして、院内の組織である物流センターに置いた後は、日本ステリが管理しているということですね。値段交渉するのも仕事?
梅村 そうですね。仕事の半分は値段交渉ですね。
小倉 最近は専門的な事務職も出てきましたね。人事労務係はどのような仕事になりますか。
丹下 主に担当しているのは福利厚生に関わる事務で、新たに採用された方や退職された方の健康保険の加入や変更の手続きをしています。また、職員の方が出産や病気などで休む時に、休んでいる間でもしっかりとした生活が送れるように、例えば、保険料の免除や傷病手当金などの申請の手続きをしたり、労働災害に遭った時の事務的な手続きをしたりしています。そのほか、職員の方の勤務時間の管理や報告を本部にする仕事もしています。
小倉 気づかずにいたら抜けてしまいそうだけど、本人が気づかないうちにバックアップしてくれているということ。
丹下 本人がそういう手続きができることを知らなくても、「休みます」という情報が回ってきた時に、「こういう申請ができるので、書類を出してください」という感じで、こちらから職員の方にお知らせしています。
小倉 結構抜けそうな気がするんですけれど、抜けないための工夫はありますか。
丹下 休んでいますよという情報が、自分のところまで必ず来るとは限らないので、同じ係の別の人に情報が入ってくることも考えて、月末に自分から「今月休んでいる人はいないですか」と尋ねて、漏れがないようにしています。
小倉 情報を取りにいくんだね。それをやるかやらないかが大きな仕事の境目ですね。安心しました。管理係はどういう仕事になりますか。
梅村 駐車場などの管理をしている誠仁会と職員の間を取り次いだり、先生方の旅費を精算したり、ポスターや通信などの管理をしています。ドクターヘリの飛行数もカウントしています。
小倉 総務係は。
梅村 一番幅広い部署ですね。厚生労働省や文部科学省など外部とのやりとりをはじめ、式典や会議の調整をしたり、規則の改訂や公文書を作成したり、中期計画、年間マニュアルの策定などなど。広報も担っていて、報道機関への対応やホームページ、うぶねという会報も担当されています。そのほか、職員アンケート、ICカードの管理、クレームなどにも対応していています。全部の外線がかかってくるので、外部と関わる仕事をつないでいる部署で、フルな感じですね。
小倉 放射線業務も手続きが特殊なので、担当してもらっていますね。
病院職員の力になれる仕事がしたい
小倉 いろいろな職種がある中で、どうして人事を希望したの。
丹下 自分が採用された時に、最初に関わるのは人事関係の方になりますよね。研修をやっていただいたり、書類の手続きをしてもらったりしている中で、身近に感じました。自分もこれから来られる方と最初に関わりたい、携わりたいと思って希望しました。
小倉 その感覚はわかるよ。岐阜大学に戻ってきた時の人事係長が、採用手続きから何から何までやってもらって。
丹下 もともと人と関わる仕事をしたいと思ったんですけど、就職活動していく中で人事の人と関わることが多くて、自分も力になれたらと思いました。
小倉 なるほどね。調達係はどうして。
梅村 入職して1カ月間、研修期間があり、いろいろな部署を見せていただきました。大学職員として入ったのに、病院も行けるんだなと思って、興味を持ちました。もともと経理関係に興味があって、その中間というところで、調達係に入れていただいたと思います。
小倉 企業でいうと購買と言われる部署になるんですよね。トヨタのかんばん方式は、在庫を自社には持たず、外に置いて、必要に応じて取り寄せるというシステムに近いことをやっていただいています。
一つひとつの工程を確実に
小倉 業務で大変なことは。
梅村 業者さんと交渉するのですが、相手は診療材料のプロなので、「価格を下げてください」と言ってももちろん下がりません。知識がないなりに、業者さんの知識を教えてもらおうという気持ちで話を聞くようになりました。そうやって話をしていくうちに、業者さんともコミュニケーションを取れるようになってきましたし、しっかり話すことは大事だなと思いました。
小倉 同じ会社で物を仕入れるのにあたって、1年目と2年目で価格は下がっていますか。
梅村 確実に変わっていますね。自分なりに目標を持っているので、それを目指して頑張っています。数字で目標を立てられる部署なので。
小倉 人事も年度替わりは忙しくなるね。
丹下 書類の提出が必要になることが多くなるので、自分でも理解しておいて、相手にきちんと理由を説明してお願いするようにしています。
小倉 大事ですね。仕事の充実感ややりがいを感じることは。
丹下 窓口業務が主な仕事になるので、自分がやった手続きで、ちゃんとした職員生活を送れるように手助けになると思うと、すごくやりがいを感じます。対面なので、直接お礼を言われることが多くて、うれしいです。
梅村 看護師さんから「急ぎでどうしても今これがないと困るんだけど」と言われた時に、いろいろ調べて、業者さんに連絡して、段取りを進めて早めに届けられた時は、感謝されてうれしいですね。
小倉 一つ工程がずれただけで大変になるので、事前の準備は大切だよね。現場に行けば行くほど、そのずれは拡大していくので。仕事への誇りはいかがですか。
梅村 収益という意味で、病院の歯車の一つとして機能しているというのを感じます。
小倉 実感を持つことが大事だよね。購入金額が下がって、損益分岐点が少しでも下がると大きな動きになるからね。
梅村 やりがいがありますね。
丹下 自分の仕事が患者さんのところまでつながっているというところまで日ごろ思わなかったので、余計頑張ろうかなと思いました。
小倉 順応性と素直さがいいね。決して年齢じゃなくて、心が柔らかいかどうかが大切ですね。
従業員満足の最前線に立つ
小倉 民間企業の社長からアイデア、参考にされている。反映されやすい部署。調達はうちに入ったものを支払う大きな場所なので、全体が見えていますよね。まさにそこが利益を出す部署なので、収入って、病院は決まった金額掛ける患者数。公定価格なので。どれだけ利益を出すかは調達係。その中で自分のやったことがまさに反映されていく。全体に鳥瞰、鳥の目で見る感覚を持っていると、すごく自分の仕事が単なる歯車ではないというのが分かると思います。人事労務は、従業員の満足なくて患者の満足はありません。福利厚生はまさにその最前線。一つ一つの作業で、従業員が働きやすくなります。その現場にいるスタッフがしっかりとしたポリシーと実力を備えていると安心です。総務課に期待するのは患者さんとの橋渡し。支出を減らすことによって利益が生まれ、従業員も新しい機械を購入でき、患者さんにより良いサービスが提供できます。何となく事務部って、自分の目の前の仕事を細切れで考えがちで、全体の流れを見失いがちになるので、若いうちに全体の流れの中で、どの流れを担当しているのか、一つの歯車がずれることでどれだけ影響が大きくなっていくのか、考えるだけでもかなり違うと思います。益々やりがいが増していくと思います。総務はまさに大学病院の根幹を支えていただいています。一つ一つの仕事ではなく、全体を見渡して、さらに事務官として成長していただいて、大学病院全体を底上げしていただきたいと思います。
【過去の様子】