第15回 病院長のゆかい仲間たち

イベント
メイン画像

【検査部】検査結果を迅速かつ正確に医師に提供

病院長×臨床検査技師

岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長

検査部 臨床検査技師  渡邉 恒夫  大森 由佳里

正確な診断を導くためのアシスト

小倉 臨床検査技師の仕事を簡潔に言うと、どういうお仕事になりますか。

渡邉 血液や生体からの情報など、患者さんから得られるデータを臨床医に提供しています。臨床医が正確な診断が出来るためにアシストしていくのが私たちの役割であると思っています。

大森 検査の中で、私は生化学や免疫、遺伝子検査などの血液検査を担当していますが、診療前検査はもちろん、こちらでは高次救命救急センターに力を入れていますので、検査の結果をより早く正確にお返しできるように業務にあたっています。

渡邉  私は生理検査を担当しているので、心電図、超音波検査、脳波検査といった患者さんに対して行う検査をしています。

小倉 検査するところに至るまで、どのような流れになりますか。

渡邉 例えば、お腹が痛くて病院に来られて診察を受けられた時に、主治医が「超音波検査と血液検査をしましょう」と指示を出したとします。そうすると、超音波検査でお腹の腸管が腫れているかどうかを見たり、採血して炎症があるかなどの血液データを提供したりしています。その結果から臨床医は病気を絞り治療するという流れになるかと思います。

小倉 検査の数は1日どれくらいになりますか。

渡邉 外来採血だけで400件ほどしていると思います。

小倉 全部で何人くらいの臨床検査技師が業務に充たっていますか。

渡邉 すべての臨床検査技師を含めると、50人弱くらいです。

小倉 臨床検査技師は検査部のほかに、病理部や輸血部にもいらっしゃいますね。ほかの部署ではどんな仕事になりますか。

渡邉 病理部は病気の最終診断を下す非常に重要な部門になります。仕事の内容としては、手術で摘出された臓器を顕微鏡で観察できるように処理し、標本を作成します。また、乳房のしこりなどに細い針を刺して、注射器で吸い出した細胞を顕微鏡で観察し、悪い細胞がいないかを検査する細胞診という検査も行っています。

大森 輸血は夜間や土日などの時間外にも依頼がありますので、時間外業務を担当する臨床検査技師の誰もがトレーニングをしています。

小倉 輸血に関しては、特に夜になると、救急搬送などで大量に使うことが多くあります。その時点で必ず血液がないと困るので、しっかりとした体制を取っていただいています。

臨床現場でより研究を深めたい

小倉 臨床検査技師になろうと思ったきっかけは。

渡邉 就職する時以来、考えたことがない質問ですね。

小倉 どれくらいになりますか。

渡邉 もう20年くらいですかね。

大森 私は3年目です。元々、医療に携わる仕事がしたいと考えていて、大学に進学する時に、臨床検査技師の仕事があることを知りました。病気を診断するために必要な検査を行う仕事ってかっこいいと思いました。

小倉 ご家族が医療関係者ですか。

大森 はい、姉が看護師をしていました。

小倉 医療には親しみがあったんですね。岐阜大学病院を職場に選んだ理由は。

渡邉 以前は他の病院で働いておりましたが、より研究を深めたく大学病院に来ました。今は勉強ができる環境に感謝しています。

大森 大学院で研究をしてきて、臨床の現場で働きながら研究も続けていける環境を探していて、こちらの病院はそんな理想的な環境だと思いました。

小倉 研究への意識が高いですね。

渡邉 私たちは単なるインフォメーションを提供するのではなく、自分たちの知識を高めていく必要性を感じています。もし、私たちが間違った情報を提供してしまうと、先生たちの誤診につながり、患者さんにとって良いことはありません。知識を高めることで、臨床医により正確かつ有益なデータを提供できると考えていますので、もっと勉強をしていかないといけないと思っています。

小倉 判断の基になる知識をいただくので、単純な情報ではなく、インテリジェンスですからね。

渡邉 私たちが取り扱う検査の内容はセンシティブであると同時に、迅速性と正確性が求められていると感じています。ですので、なるべく早く主治医に結果が返せられるように努めています。

小倉 この仕事を選んで良かったと感じることは。

渡邉 私たちは患者さんから直接「ありがとう」と言われることは少ないのですが、生理検査をしていて、早期のがんを見つけた時に、主治医から「小さいのに見つけてくれたおかげで、あの患者さんは助かったよ」と聞くと、やっていて良かったなと思います。

大森 検査の結果をただ返すだけでなくて、例えば、パニック値といわれるような生命にかかわるような検査値が出た時に、主治医の先生にすぐ連絡するようにしています。検査技師としてお役に立つことができたと思う瞬間はうれしいです。

小倉 パニック値というのは本当にやばい。かなり異常な数値のことで、ドクターでもデータを見た瞬間にぎょっとしますからね。報告する基準があるんだよね。

大森 はい、基準を設定していて、滞りなく先生方に連絡できるようにしています。

小倉 連絡つかない時は。

大森 カルテを見て、主治医の次に診ている先生に確認しています。

小倉 必ず誰かに伝えるんですね。

大森 最低でも、近くにいる看護師さんに伝えています。

精度管理を徹底 当たり前のことを当たり前に

小倉 仕事に誇りを持って業務に携わっている使命感というか、責任感が伝わってきますね。

大森 臨床の現場に検査結果を早く返すことはもちろん、質の高い検査ということを大事にしています。特に内部精度管理を徹底しており、毎日外来採血が始まる30分以上前から準備をしていて、24時間項目では夜勤者が病棟採血の始まる前から準備をしていますが、いずれにしても検査がすぐに行えるようにしています。例えば、その患者さんのコレステロールの値が100という値だとすると、その機械で測ると120という値が出てしまってはいけません。本来の100という値がしっかり100と出るように毎日メンテナンスと精度管理を行っています。

小倉 それって、オートキャリブレーション、ほぼ自動なんですよね。それはどうやって管理するんですか。

大森 固定した値が出る精度管理用の試料がありまして、毎日測っていて、同じ値がでるかどうか確認しています。

小倉 始業前に毎日やっているの?

大森 はい。1日に何回も測定しますので、検査が始まる前と終った時には、必ず合っているかどうか確認しています。

小倉 だいたい150種類くらいの検体検査がありますよね。

大森 精度管理試料もたくさん種類があって、生化学や免疫など項目によって使い分けて測定しています。また、検査部内で行う精度管理だけでなく、年に数回、外部精度管理があります。国際的な基準に合致しているかどうかを確認することもしています。

小倉 日ごろから「当たり前のことを当たり前に」と言っていますが、本当に徹底的にやってくださっていますね。

大森 24時間運営しないといけないため、担当者以外の方が機器を触ることもありますので、どの臨床検査技師がいつ検査を行っても同じようにしっかり値が出るようにしています。

臨床検査技師の認知度を高めていきたい

渡邉 検査をする側の者として、臨床の先生たちが求めているのは迅速性と正確さ、加えて精度が保たれていることだと思っていますが、ほかにこんな検査をしてほしいと希望されることはありますか。

小倉 この15年間、常に満ち足りているので、今の状態でストレスはないですね。完全に信じていますからね。

大森 これからもちゃんとした結果をお返しできるように努めたいです。

小倉 1回でもダメなことがあると、一気に信頼を失うからね。ドクターヘリでもそうだけど、10年間無事故でも1回事故するだけで、不安になってしまうので。

渡邉 本当に「当たり前のことを当たり前に」ということですね。

小倉 病院は高信頼性組織といって、高い信頼の下で、忙しいけれど、信頼度を保っている組織なので。

大森 今後も努力を続けていきます。

渡邉 病院というと、医師や看護師は皆さんすぐに思いつくのですが、私たち臨床検査技師の名前を挙げる方は少ないのではないでしょうか?一般の方の認知度は低いと思います。チーム医療を紹介するスライドなどでも、私たちの名前はなかなか挙がってこないので、少し落ち込みます...。もっと院内、院外でも貢献するような活動を行い、認知度を高めていきたいと思っています。

小倉 ラグビーで例えるならば、試合中は監督からの指示は入らない。だから、キャプテンを含めたメンバーのまさに統合された意思でプレーが決まる。まさにチームなんですよね。いまチーム医療というワードが流行りの傾向がありますが、必要なメンバーが集まっていったらチームになるという気がします。これからも高いレベルで安定した状態を続けてください。

【臨床検査技師とは】

医師の指示に基づき、患者さんの血液や尿、心電図や脳波などを検査する医療技術者。検体検査では、患者の血液や尿などを調べ、病気の原因を探したり、組織や細胞の検査をしたりしている。生理学的検査(生体検査)は、脳波検査や心電図検査、超音波検査など、患者の身体の表面や内部の器官からのデータを採る。また輸血業務や製剤管理なども行っており、病気の早期発見だけでなく救急医療にも貢献している。

【過去の様子】

第一回 病院長×保安職員

第二回 病院長×医療ソーシャルワーカー

第三回 病院長×誠仁会

第四回 病院長×リハビリテーション科

第五回 病院長×クラーク

第六回 病院長×がんセンター

第七回 病院長×公益財団法岐阜県ジン・アイバンク協会

第八回 病院長×MEセンター

第九回 病院長×(株)トーカイ

第十回 病院長×アシスタントコンシェルジュ

第十一回 病院長×シダックス㈱

第十二回 病院長×セントラルヘリコプターサービス㈱

第十三回 病院長×視能訓練士

第十四回 病院長×総務課

[次のお話へ]

▲渡邉 恒夫
▲渡邉 恒夫
▲大森 由佳里
▲大森 由佳里