第17回 病院長のゆかいな仲間たち

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【薬剤部】患者さんと医師との橋渡し役を担う

病院長×薬剤師

岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長

薬剤部 薬剤師     加藤 寛子  西田 承平

安心して薬の治療ができるように手助け

小倉 薬剤師の皆さんは病院でどのように働いているか、あらためて教えてください。

加藤 薬剤部には、中央業務を行う大きなセンター部門があって、50人ほどの薬剤師が在籍しています。そこから各病棟の業務も兼任しています。そのほか、外来の化学療法室にも交代で8人ほどが携わっています。

西田 中央業務の仕事は、医師が処方した薬剤を正しく調剤して、患者さんのもとに送るという調剤業務を主にしています。また服薬指導では、「なぜ飲む必要があるのか」という説明や、使う時の注意点などを伝え、患者さんが安心して薬による治療を受けられるお手伝いをしています。

小倉 救急の場合は感染症や敗血症も多いので、薬剤師の中でも感染症担当の薬剤師の皆さんと毎週、ディスカッションしています。いろんな病棟を担当するんですか。

西田 チーム制を取っていて、数人で各フロアを担当しています。一人一人メインの診療科を持っていて、この人に聞けば、この診療科のことはわかるという体制にしています。一方で、一人では業務の全てをできないので、お互い助け合いながら業務にあたっています。

小倉 具体的にどのような業務を担当されていますか。

西田 主でやっている仕事は、調剤業務と病棟での服薬指導です。担当している診療科は、糖尿病内科と神経内科と皮膚科になりますが、特に糖尿病の患者さんは、血糖値が多少高くてもつらいという自覚症状があまりないので、「どうして薬を飲むのが大事なのか」をお話しています。また、入院されていない患者さんに対しては数カ月に1回、病棟の患者さんに対しては2週間に1回、糖尿病教室を開いています。

加藤 病棟の業務に加えて、外来化学療法室も担当しています。外来では、抗がん剤治療を行っている患者さんに対して、診察前面談、服薬指導などを行っています。患者さんが診察では緊張して先生にうまく話せないことを、ベッドサイドに行って聞いたり、時間があれば、先生の診察前にお話を伺って、先生に事前にお伝えしたりしています。また、看護師さんとカンファレンスを重ねながら、患者さんをどのようにフォローしていくかを考えています。

小倉 何人くらいの患者さんと関わっていますか。

加藤 病棟の入院患者さんでは、重症や軽症、入れ替わりもあるので、その時々によって異なりますが、平均すると、10人から15人くらいです。

小倉 外来の患者さんに対しては。

加藤 実際、外来でいらっしゃるがん患者さんを診ることが多くなってきています。日常生活を送りながら、治療も進めていくので、その中で抗がん剤治療が効果を示すかどうかや、副作用が生活にどれくらいの影響を及ぼしているかなど、日常生活への支障が最低限に抑えられるように、うまく副作用をコントロールすることに携わっています。

治療を続けていけるようにサポート

小倉 業務で気を付けていることは。

加藤 まずは患者さんがいまどういう状況にあるのかをしっかり確認しています。また、一番多い訴えは副作用なので、どうしてあげたら、生活に困らず、治療を続けていけるかを大事にしています。外来の患者さんについては、来院された日以外の症状がわからなくて、患者さんも良くなると症状を忘れてしまうので、日誌のようなものをお渡しして付けるように指導しています。そうすると、どの時期に副作用が出たかどうかが分かります。記録を見ながら対策を考えて、カルテに記載していきます。基本的に先生方は私たちが副作用を診ているという認識を持っていただいているので、処方についても薬剤師から提案して、先生がご判断されて、お薬を変えていくこともあります。

小倉 副作用の分析が大事になりますね。

加藤 気持ち悪いという症状でも、「食べられないほど」とか「食べられるけれどむかむかする」など細かな指標があるので、それに応じて薬をどれにするか選択していきます。

小倉 確かに抗がん剤は患者さんと薬によって症状が違うからね。

加藤 症状が強いと、治療をやめたいという方が結構いらっしゃいます。患者さんは、先生方が治ることや良くなることを考えて治療しているという思いを受け止めて、なかなか言えないことがあるので、薬剤師が患者さんの気持ちも汲み取って、最終的に患者さんがどうしていきたいかを考えながら指導しています。

小倉 先生への橋渡し役もされているわけですね。困ったことはどんなことですか。

西田 糖尿病の方は、普段しんどくないので、薬が出されているのにもかかわらず、薬を飲まないという人がいらっしゃいます。危機感がないため、気付けば薬がどっさり余っている方も多くいます。飲み忘れる理由を聞いてみると、ある方は、お昼は仕事がバタバタしていて飲めないという理由だったので、先生と相談して、朝食か夕食に寄せて、忘れずに飲めるという形に調整したケースもありました。治療に納得していただいて退院になったと記憶しています。

小倉 それでも飲まない患者さんもいるんじゃないですか。

西田 何度も病院に戻ってこられる方も中にはいらっしゃいますが、しっかり説明して納得してもらえると、その後、糖尿病が悪くならない傾向はあります。

加藤 外来では、化学療法している患者さんには薬剤師が面談しています。また、調剤室ではお薬相談室を設けて、相談がある人が立ち寄れるようにしています。

研究する環境が整う岐阜大学病院

小倉 薬剤師になろうと思ったきっかけは。

西田 本当はドクターになりたいと思っていましたが、最終的には岐阜薬科大学に進学しました。薬剤師の立場から患者さんにしてあげられることは多いので、今となっては良かったかなと思っています。

小倉 今は昔のような頂点にドクターがいるチームではなく、関わるスタッフの機能が組み合わないとチーム医療が成り立たないので、薬剤師は非常に重要な部分を担っています。特に、課題を見つけて介入してその結果を見ることができるわけだから。

西田 頑張ります。

加藤 私も医療に興味があって、その中でも薬は、自分が飲んだ時に治るというのがすごいことだと感じて関心を持ち始めました。漢方にも興味があって、幅広く薬について学びたいという思いと、ずっと医療現場で働きたいと考えた時に資格を取得できる薬学部に進学しました。

小倉 薬剤師として実際に働いてみて、いかがですか。

加藤 岐阜大学病院で働けて、とてもやりがいを感じます。先生方との関係も良く、やりたいと思ったことをどんどんやっていける職場なので、働き続けたいと思います。

小倉 薬剤部の良いスタイルなので、そのままであってほしいですね。

加藤 研究に興味があるので、臨床で気になったことを調べて報告して論文にしたり、発表したりしています。また、薬剤師の中でもみんなで考えて広げていける環境が良いと思います。

西田 私も研究に興味がありました。岐阜大学は、研究がしっかりできる環境が整っていて、先生方も親しくしていただいているので、恵まれていると感じています。

小倉 全国的に見ても、岐阜大学の薬剤部は論文の数が多くて、全国でも有数の数を誇っていますね。PDCAサイクルが回っていますね。

加藤 関心の高い人が集まっているという環境要因もあると思いますね。

小倉 目的意識を持った薬剤師が多いということですね。

目の前の患者さんを少しでも良くしたい

小倉 薬剤師になって良かったことは。

西田 患者さんが退院されていく時に、「この病院に来て良かった」「西田さんで良かった」と言っていただくと、頑張ってきて良かったなあと思います。

加藤 私も患者さんが良くなったり、ちょっとしたことで感謝されたりするとうれしいです。患者さんの反応が一番ですね。

小倉 こんな薬剤師でありたいという思いは。

加藤 目の前にいる患者さんが、私と関わったことで良くなればそれだけで十分で、その積み重ねだと思います。最後までそういう薬剤師でありたいと思っています。

西田 私も目の前の患者さんを少しでも良くしたいという気持ちを持ち続けて働いていきたいと思っています。この病院ではそれが実現できるので、とても満足しています。

小倉 一人一人の思いが重なって組織としての方向性が進んでいくと思います。ぜひその思いを大事にしていただいて、上席になっていってもその思いを忘れずにいていただきたいですね。薬剤部が薬剤部のための薬剤部にならないように、常に「患者を」という思いを持ち続けて、業務にあたっていただきたいと思います。

【過去の様子】

第一回 病院長×保安職員

第二回 病院長×医療ソーシャルワーカー

第三回 病院長×誠仁会

第四回 病院長×リハビリテーション科

第五回 病院長×クラーク

第六回 病院長×がんセンター

第七回 病院長×公益財団法岐阜県ジン・アイバンク協会

第八回 病院長×MEセンター

第九回 病院長×(株)トーカイ

第十回 病院長×アシスタントコンシェルジュ

第十一回 病院長×シダックス㈱

第十二回 病院長×セントラルヘリコプターサービス㈱

第十三回 病院長×視能訓練士

第十四回 病院長×総務課

第十五回 病院長×検査部

第十六回 病院長×医療支援課

[次のお話へ]

▲加藤 寛子
▲加藤 寛子
▲西田 承平
▲西田 承平