第18回 病院長のゆかいな仲間たち

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【医事課】診療報酬全般に関わる業務を担う

病院長×医事課

岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長

医事課 診療報酬係 柴田 峻次  診療情報管理係 平野 沙知

会計処理のシステムを構築

小倉 医事課が行っている業務内容について、院内の医師でも知っている人は3割くらいかもしれないですね。かみ砕いきながら、紹介していただきたいと思います。

柴田 医事課には、医事係、診療報酬係、診療情報管理係、収入係の4つがあります。職員は25人で、一部業務委託をお願いしているニチイ学館職員を含めると、倍以上のスタッフ数になります。

平野 一番多いのが診療情報管理係で7人。医事係7人、診療報酬係5人、収入係4人です。

小倉 では、まず医事係の仕事内容について教えてください。

柴田 さまざまな業務を担っていますが、主に施設基準の届出業務に携わっています。岐阜大学病院の施設が基準を満たしているかどうか、体制が整っているかどうかなどについて確認し、届出を更新したり、報告したりしています。

小倉 厚生労働省との窓口で、大学を経営していく上で中枢部門の一つですね。収入係は。

平野 患者さんの未収金問題などに取り組んでいます。

小倉 診療報酬係は、患者さんが検査したとすると、どこの部分に関わってきますか。

柴田 直接患者さんと接することはありませんが、例えば、検査するために、先生方は電子カルテにある検査項目のボタンをチェックします。そのボタンを作っています。

小倉 注文できる画面がないと、手で書いて、また拾い出して入力するのが大変なので、そういうボタンをあらかじめ作っておくということですね。

柴田 昔は紙カルテで、事務方が紙から書き起こしていましたが、今は電子カルテなので、そのボタンを作る必要があります。新しい手術や検査を始める際に、算定基準と照らし合わせて、本院で算定が可能かどうかを判断した上で、カルテのオーダーを作っています。

小倉 すべての医療行為は点数が決められているので、医師がチェックした後、点数が会計処理で何点と出てくるまでのシステムを担っているのが診療報酬係の仕事。点数を基に会計処理するところは、ニチイ学館に業務委託して、収納を受けるのは収入係というわけだね。患者さんにとっては、紙一枚の請求書が来て、どうしてこの値段になるのか分からないと思うかもしれないけれど、見えないところで、実はいろいろなプロセスをたどっているということだね。医事課のイメージはお金を計算してもらうところというざっくりとしたイメージだけど、お金の入口と出口のところは医事課でしっかりコントロールしているんだね。

包括医療費支払制度のデータをハンドリング

柴田 入院患者さんの場合は、診療情報管理係が担当になります。

平野 入院レセプト担当者と協同して、診療報酬の明細書であるレセプトを作ります。医療費は、包括医療費支払い制度(DPC)といって、医療資源を最も投入した検査の病名に対して、薬を含めた総額が決められています。医師が選んだ病名に対して、その病名で良いかどうか、カルテを見ながら確認しています。

小倉 完全に定価制で、しかも一つの病気で同じ値段なので、超えたらすべて病院の持ち出しになる。大学病院に来る患者さんは複雑な病態が多くて、いくつもの病態が重症化しているのに選べる病名は一つだから、その中で最も医療資源を投入した病名を選んだとしても損をしていることが多い。その包括医療費支払い制度に関わるデータをハンドリングしているのが診療情報管理係というわけだね。診療情報管理士という資格を持っているんだよね。どうして目指そうと思ったの。

平野 大学では医療経営情報学科で医療知識や診療報酬に関することを勉強してきました。たくさん診療内容がある中で、先生がどうしてこの手術や処置を選んだのかが理解できるようになると、正確なレセプトを作成できるようになるので、やりがいを感じています。

小倉 まさに推理だね。

平野 カルテが読めるようになると面白いです。

小倉 読めますか。

平野 時間はかかりますが、何回もカルテ読み続けています。迷った時は先生に相談しています。

小倉 いろいろな症例がありますよね。知識もないと推理できないね。

平野 担当の診療科を持っているので、その診療科についての知識は深めています。

小倉 いくつくらいの担当科を持っているの。

平野 私の場合は、産婦人科、耳鼻科、総合内科、精神神経科です。

小倉 うまくいく時といかない時がありそうだけど。

平野 さっぱりわからない時もあります。

小倉 治療も複雑な場合があるからね。

平野 総合内科が難しいですね。

小倉 可能性が広がっていくからね。やっていて大変だなあと思うことは。

平野 専門知識では、先生方が何を話されているのかを理解するまでに難しい時があります。一方、先生方に診療報酬のルールを説明して、理解してもらうことに難しさを感じることもあります。

小倉 確かにね。医者は医事知識が少ないからね。柴田さんの専攻は。

柴田 医療福祉大学で電子カルテやシステムの勉強をしてきました。医療にもパソコンにも興味があって、ちょうどその頃、電子カルテも過渡期だったので、その分野に関心を持ちました。

小倉 最初は、実際にカルテやシステムに組み込む「医療情報係」という部署に配属されていたよね。医事課と交流した人事を覚えているよ。要するに、医事は医事、医療情報は医療情報と課が違うと、交流があまりされていなくて、そのうち、「それはうちの仕事ではない」という雰囲気になって。「いくつかの領域は一緒にやらないといけないよね」という話をしていて、そのパイオニア的な存在だね。

柴田 医療情報係には10年ほどいました。それまでは、依頼を受けてから、システムに組み込むという仕事でしたが、今はその前段階として、先生方から依頼を受けて、手術や検査をする時に、本院でできるかどうか話し合って、次の担当者に依頼する側になりました。以前は医事のことは分かりませんでしたが、どちらも分かるようになったので、ありがたいです。

保険制度と治療とのギャップを埋める

小倉 事務システムで、苦労している点は。

柴田 適用されない手術の相談を受けた時に判断に困ります。

小倉 確かに、自費で入院して手術するなら、医学的に正しいことをどこまでも追求できるけれど、患者さんに対しては、保険に合わない診療をすることはできないからね。それは、患者さんとの契約違反になる。保険診療ということは、範囲内で手術や検査を行うということを宣言しているからね。

柴田 海外では十分な事例があったとしても、日本では認められていなかったり、許可されていなかったりというパターンのほうが多いですね。

小倉 先進医療を手掛けている大学病院だけにね。

柴田 海外で勉強してくださった知識もあって、合致した患者さんがいたら、助けるために治療したいと思うのは当然なんですが、日本ではまだということがありますね。

小倉 確かに矛盾はあるよね。うまく制度と医療、治療がかみ合えば、最低のお値段で最高の治療ができることにつながっていくと思います。

診療報酬制度の根幹に携わる

小倉 大学病院で仕事をしていて、働き甲斐を感じることは。

平野 先生方が優しいなあと思いました。助けられる部分もたくさんあるので感謝しています。

小倉 そういうドクターが増えてきているよね。経営感覚も持って、やったことをちゃんと反映させようという意識が芽生えているよね。

柴田 医療情報係に配属されていた時は、電子カルテに不具合があると、よく怒られる先生がいらっしゃいました。「ほかの病院に行き出して、うちのカルテはまともだったんだね」と言っていただいた時はうれしかったです。今のシステムは、大学病院が現在の場所に移転した時にカルテを見直して作り直しましたが、知識のある方々が立ち上げに携わってくださったシステムで、そのようなシステムを扱っているという誇りを持って仕事を続けていきたいと思います。

小倉 これから益々診療報酬制度がどんどん変わっていきますが、病院の根幹に関わっている業務にあたっていただいているので、これからも頑張ってください。

【過去の様子】

第一回 病院長×保安職員

第二回 病院長×医療ソーシャルワーカー

第三回 病院長×誠仁会

第四回 病院長×リハビリテーション科

第五回 病院長×クラーク

第六回 病院長×がんセンター

第七回 病院長×公益財団法岐阜県ジン・アイバンク協会

第八回 病院長×MEセンター

第九回 病院長×(株)トーカイ

第十回 病院長×アシスタントコンシェルジュ

第十一回 病院長×シダックス㈱

第十二回 病院長×セントラルヘリコプターサービス㈱

第十三回 病院長×視能訓練士

第十四回 病院長×総務課

第十五回 病院長×検査部

第十六回 病院長×医療支援課

第十七回 病院長×薬剤部

[つぎのお話へ]

▲柴田 峻次
▲柴田 峻次
▲平野 沙知
▲平野 沙知