【経営企画課】病院経営の中枢を担う
病院長×経営企画課
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
経営企画課 経営分析係 大宮 公治 医療情報係 山下 龍士
経営判断となるデータを分析 医師に還元
小倉 経営面の中枢を担っていただいています。具体的に、どういうお仕事をされているかご紹介をお願いします。
大宮 予算企画係、経営分析係、医療情報係、臨床研修支援係という4つの係があります。臨床研修支援係は少し特殊で、研修医に関連する係になります。私は経営分析係で、病院経営の分析や企画などを担当しています。
山下 医療情報係は、医療情報システムの企画や開発、運用や支援、電子カルテシステムの維持管理などを担当しています。
小倉 病院で情報と言うと、患者さんの診療に関わる情報と、それに基づいて動くお金の情報があります。病院経営は、患者さんと保険者からお金をいただいて、使った費用を支払うという仕組みですが、経営分析係は、「適切に行えているか」とか「何か過剰な支出をしていないか」という分析について、病院長が最終判断するための材料を作っています。いわば財務部のような部署で、財務面の分析をしてもらっています。
大宮 ものすごく膨大なデータや情報がある中で、病院の経営、医療の質の向上のために生かしていくことが、これからは多くの場面で求められます。ITの普及が拍車をかけています。ほかの病院と比較しながら、良いところは維持し、改善すべきところは「なぜそうなるのか」を分析して、現場の先生や看護師さんにフィードバックしています。
小倉 患者さんや経営的なデータを使って、院内で利活用する役目を担ってもらっています。全国にある同じ規模の国立大学病院の中で、「どういう順位にいるのか」など、いろいろな資料があります。例えば、岐阜大学病院の場合、新入院患者数1位とか、在院日数が最も短いなどのデータが集まってきます。経営の要として、経営者である病院長や医師がほしいデータを集約するシステムができています。まさに、情報を一元集約して、病院長や医師フィードバックするハブ的な部署ですね。
電子カルテシステムの安定稼働に努める
小倉 医療情報係はどのような仕事になりますか。
山下 中央に電子カルテシステムという大もとのシステムがあります。本来、薬剤部や検査部、放射線部などにはそれぞれのシステムが稼働していますが、中央にある電子カルテと連携させて、一つの大きなシステムを構築しているのが特徴です。365日24時間、安定して稼働しているのが大前提ですので、日々サーバーをチェックしたり、アプリケーションソフトが正常に動いているかどうかツールを使いながら監視したりしているところです。
小倉 ダウンしたら病院長は呼び出されるからね。
山下 毎日、先生方、看護師が使われていて、不具合も出てくるため、業者の方と連携して、安定稼働につなげています。
小倉 各部門にシステムがあるから、それぞれはやりやすいけれど、そこからデータを飛ばして受け取るというプロセスが発生するので、中央のコンピューターに対して負荷が高いという現実はあるね。
山下 今のシステムは、2016年1月1日に稼働し始めましたが、当初から速度に関して課題があり、患者さんにもご迷惑をおかけすることがありました。少しでも電子カルテの速度を改善できないか、日々検討して対応しています。
小倉 自分のパソコンでも便利になるようにソフトウエアを入れるけれど、入れれば入れるほど遅くなるのと同じだよね。時々断捨離が必要ですね。
岐阜大学病院は「宝の山」
小倉 今の仕事のやりがいは。
大宮 やっていて面白い仕事です。実感として、岐阜大学病院のポテンシャルは、まだまだあると感じています。課題もありますが、歯車がかみ合えば、さらに好転するような気がします。
小倉 部分最適化は進んできたので、方向性は正しいと思っています。
大宮 最初に小倉先生とお会いした時に、岐阜大学病院は「宝の山」と言われたのを覚えています。埋もれている中から、手探りで見つけていき、病院長や先生にしっかりお返ししていくことが大切と感じています。先生方に納得していただいた時は、モチベーションが上がりますね。
小倉 どういう時に。
大宮 先生方が疑問に思われていたことをデータでお持ちして、「ここを改善したらいいんだね」と言われた時ですね。
小倉 PDCAサイクルがしっかり回っています。部署ができる前はデータをお願いしてもなかなか出てこなかった。ドクター側も「良い診療をすればいい」という職人気質のような感覚なんですが、その中で意識が芽生えてきているのは確かですね。職人でさえ、疑問を投げて、その返事に対してレスポンスがあるので。意識は確実に変わってきていますね。
山下 システムは安定稼働しているのが前提なので、ほめられるより怒られることのほうが多いですね。
小倉 確かにディフェンスだもんね。
山下 はい。稼働し始めた直後は数日間、電話が鳴りやまないくらい不安定な時で、感謝されることもなく、やりがいを見つけることはできませんでした。つらい時期でしたが、今は安定してきて、現場の方から追加の要望や意見があって、意向を取り入れたシステムが実現した時に感謝されるとやりがいを感じます。システムが大きいので、原因がどこにあるのかは経験を重ねないと難しいところもあります。先生方は患者さんを待たせて迷惑を掛かけていることを考えていらっしゃるので、怒られて当然なんですが、もう少し安定して、迷惑を掛けないようにしたいと思っています。
小倉 忍耐力がいりますね。システムエンジニアの中で、開発に行きたいというエンジニアがほとんどで、メンテナンスをしたいというエンジニアは少ない。システムがちゃんと動くようにするのは大変で、華やかではないけれど、それをやらないと病院のシステムがちゃんと動かないというのはあまり知られていない。まさに縁の下で支えてくれています。
PDCAサイクルを回して病院の安定経営を
小倉 これからの目標を聞かせてください。
大宮 情報はどんどん更新され、分析も永続的に続ける必要がありますが、先生方の努力に報いることができたら良いと思っています。
小倉 医者の努力を経営に結びつけることが大事ですね。
大宮 先生方は、どうしたら病院の経営がうまく回転していけるようになるかということに耳を傾けてくださるのでありがたいです。
小倉 促進力も全然違いますね。それは具体性があるから動けるわけで。頑張れとだけ言っても動かない。こうしたら頑張れると示すことが重要なポイントです。目標に対する材料をもらうのが経営企画課。まさに、ダイヤモンドの原石を見つけて加工まで、磨きをかけている部署ですね。
山下 とりあえず、目の前の不具合を直すという業務がしばらく続いていくと思いますが、システムは更新していくので、次の医療情報システムを構築するのにあたって、先生や現場の方々の要望をできる限り吸収していきたいです。今のシステムで実現できなかったとしても、次のシステムでは反映させて、ユーザーの満足度が高いシステムを構築するのが目標です。
小倉 現場に近いスタッフから、この病院にとって正しいかどうかということも含めて、次世代のシステムはどうあるべきか、何と何をトレードオフするべきかを考えて、次世代のコンセプトを提案していってほしいと思います。次の更新がすぐ始まるので、一生懸命考えて早めに提案してくれるとうれしいです。また、経営企画課は、経営のコアな部署になります。病院はこれからも続いていきますが、情報を出し続けてPDCAサイクルを回していかないと存続し得ません。頑張って情報を出し続けていただきたいと思います。
【過去の様子】