【看護部】患者さんに一番近い最前線の医療スタッフ
病院長×看護師
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
看護部 看護師 服部 将英（手術部） 澤田 早紀（病棟）
「外来」「病棟」「放射線」「手術」を担当
小倉 病院の中では、患者さんとの接点が一番多い職種だと思います。院内には600人ほどの看護師がいますが、どのように配置されているか、教えてください。
澤田 外来、病棟、放射線科、手術部とそれぞれ分かれています。私は病棟を担当していて、西8階というように、病棟のフロアごとに担当しています。
服部 手術部を担当していますが、病棟の看護師とは違って、手術室に1日詰めています。
小倉 1日の流れはどのような感じですか。
澤田 病棟は2交代で、日勤と夜勤があります。日勤はその日の患者さんの予定を把握して、熱や血圧を測ったり、傷を見たり、点滴を交換したり、体をふいたり、診療の補助で先生の処置の介助についたりしています。高齢の方も増えて、特に最近では認知症の方も増えているので、付き添ったり、がん患者さんには、お話を聞いて今後どのようにしていきたいかなど、精神的な支援をしたりしています。夜勤は長くて16時間。夕食から翌日の朝食が食べ終わって、日勤に引き継ぎます。夜は何しているのとよく聞かれますが、結構忙しくて。患者さんは夜に不安になったり、眠れなくなったり、痛みが増したりします。ナースコールもよく鳴るので、患者さんに対応しています。
小倉 まだほかにも業務はあるよね。
澤田 事務的な業務も多くて、カルテの看護記録を書いたり、患者さんが転院になると、情報を提供しないといけないのでお手紙を作ったり。そのほか、委員会や係があって、例えば、感染対策や医療安全、褥瘡、床ずれ予防などがあります。新人も毎年何十人という単位で入ってくるので新人教育も行っています。私も副師長として、師長を筆頭に、病棟の運営を一緒にやらせていただいています。
小倉 手術部の流れは。
服部 医師の隣で、手術の状況を見ながら、迅速に正確にメスなどの器機を手渡す「器械出し」や、患者さんの状態を観察しながら、外回りから手術をサポートする「外回り看護師」がいます。そのほか、手術の日程を調整するリーダー業務（管理業務）があります。
小倉 手術も長短がありますよね。
服部 長いと1日中手術につくこともあれば、1日に2、3件入ることもあります。
小倉 10時間を超えることもあるからね。
服部 集中力も必要になるので、途中で交代しています。
多職種を束ねる調整役を担う
小倉 チーム医療での役割は。
澤田 一人の患者さんにいろいろな職種のスタッフが関わっています。例えば、先生、栄養士、薬剤師、退院調整をしているソーシャルワーカー、リハビリを担う理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などがいます。私たちは患者さんに常に一番近い、長く一緒にいる存在で、情報も持っていますので、カンファレンスを開いた時には、患者さんの思いをつなぐために、職種間の調整役という役割を担っていると思っています。
小倉 患者さんに一番近い最前線として、ほかの医療スタッフと情報共有する時に、ナースが要となって多職種とのコーディネートをしているのは、収まりがいいよね。
澤田 先生方は病気を治すというところに主眼があって、信念を持ってやっていらっしゃいますが、私たちは患者さんが「どう生活していきたいか」「どのように最期を迎えられたいか」と患者の思いに寄り添いがちになりますので、医師、多職種の専門的な知識を入れながら、患者さんにとって何が一番いいかを考えて取り組んでいます。
小倉 そういう時は、だれが招集して司会を務めるの。
澤田 結構、看護師がしますね。
小倉 やっぱりそうなんだ。多職種を束ねる扇の要はやっぱりナースなのかな。オペ室でもそうだよね。
服部 先生方の間に立つことが結構ありますね。
小倉 その場所における看護師の役割という意味では共通しているところがあるね。日頃から大切にしていることは。
澤田 患者さんにとっては、すべてが初めてのことで、不安な気持ちや身体の痛みを抱えている方も多くいらっしゃるので、少しでも気持ちに寄り添えたらいいなあと思います。かつて上司に、「患者さんの前では女優になりなさい」と言われたことがあります。ナースコースで何回も呼ばれたとしても、その患者さんの前では笑顔で優しい声を掛けて、カーテンを閉めたら一呼吸するようにしています。
小倉 医者も同じだね。手術中は患者さん、寝ているから、あまり会話はないよね。
服部 手術の時間こそ大切にしたいと思っています。患者さんにとっては不安でどうしようもないけれど、「まな板の上の鯉だからね」とよく言われます。「どうしようもないからお任せします」という言葉を真摯に受け止めて、一番不安な時間を任さられているというプライドを持って従事しています。意識がないとはいえ、「この人の命を助けたい」「少しでも今後良い人生を歩めるような手助けをしたい」という思いです。
患者さんが元気に帰られるとうれしい
小倉 看護師を目指したきっかけは。
澤田 小さいころに入院した経験があって、看護師さんは身近な存在でした。大学では大学病院の研修もあり、充実した環境で仕事ができる職場に入ることができました。
服部 両親が看護師をしていて、元々医療に興味がありました。その中で、救急に携わりたいと思ったのは、小学校の時に家の近くで、交通事故を目の当たりにしました。その時、周囲の人たちは、救急車より先に警察に連絡していました。私は「違うんじゃないか」と思いました。少しでも早く医療者が駆け付けられる体制があるべき姿なんじゃないかなと。そこから救急に興味を持ち始めて、患者さんに寄り添っていく職種として看護師を目指しました。ちょうどそのころ、岐阜大学にドクターヘリが導入されると聞いて、フライトナースにもあこがれて、ここで務めたいと思いました。少しでも救急に関わりたいと思い、心肺蘇生のインストラクターの資格も取って活動していますが、救命の輪を広げていきたいです。
小倉 意欲のある看護師がいるのはうれしいね。
服部 手術室しか学べないこともあるので、一つの土台と思っています。配属されたことに感謝して、知識や技術を磨いていきたいです。
小倉 ドクターヘリでは胸を開けることもあるからね。
服部 そういう時にも力になりたいです。
小倉 看護師の仕事の魅力は。
澤田 患者さんが元気になって帰ってくれるのはうれしいです。がんは付き合っていくことが多くなり、外来通院となりますが、おおもとの病気は治ってからも、合いに来てくださる方やお手紙くださる方がいて、「あの時のケアが助かった」「話を聞いてくれて救われた」と聞くとうれしいです。私たちがいることで、つらい治療や療養生活の役に立てていると思うとうれしいです。一方で、亡くなっていく方も当然いらっしゃいます。一緒に泣きながら、納得されて最期を迎えられる方を見ると、関われて良かったと思います。
小倉 管理職の立場としてはいかがですか。
澤田 後輩が成長して、患者さんにより良い看護を提供できているところを見ると、良かったと思います。
最善の看護を患者さんに提供したい
小倉 岐阜大学病院の誇れるところは。
服部 手術部は先生とのつながりです。私たちから発信したら、先生たちはそれに応えてくれて、話し合いの場を設けてくださり、折り合いがつくところを探そうとしてくださるところです。
澤田 教育に力を入れている点です。研修では、時代背景に合わせた教育がされています。専門的な知識だけでなく、最新の知識や治療に関して勉強するチャンスが多いと思っています。患者さんに対しては、「最善の看護を提供しよう」という思いが強いところです。毎年目標が高くなっていますが、患者さんに還元されていると自負しています。
小倉 研修医を育てるだけでなく、医師も看護師も育てるという教育するための病院なんです。
澤田 先生から看護師に期待することはありますか。
小倉 笑顔とあいさつでしょう。ニコニコしてもらっているだけで幸せになれるから。
澤田 病棟で伝えます。先生も笑顔が素敵ですもんね。
小倉 600人いる看護師の中から、澤田さんは病棟管理者として、物事を冷静に考えられて信頼の厚い人、服部さんは、短期、長期の目標をもって着実にキャリアアップしているスタッフと看護部長から聞いています。それぞれの立場でもリーダーシップを発揮されていますが、さらに生かして、これからの人材を育ててほしいと思います。大学病院の大家は看護部で、医師は下宿しているような感じです。ここに集まる人たちが、居心地の良いような大きな家を作って頑張っていただきたいと思います。
【過去の様子】
