【放射線部】患者さんを不安にさせない放射線治療を
病院長×放射線部
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
放射線部 放射線技師 松山 勝哉 岩田 竹史
レントゲン撮影からシステム管理まで
小倉 放射線技師は、患者さんにとってもイメージしやすい仕事内容が多いと思いますが、具体的には、どのような仕事をされていますか。
松山 レントゲン撮影やCT、MRIをはじめ、病院によっては超音波検査などがあります。私は放射線治療を担当しています。
岩田 当院のように、病院によっては、医療安全にも力を入れていたり、電子カルテや病院の検査システムを管理したりする業務もあります。私のメイン業務は、電子カルテとは別にある放射線部専門のシステムの維持、管理を担当しています。
小倉 患者さんからすると、レントゲンのイメージはありますが、システムを維持する仕事もあるというのは知らないかもしれないね。放射線部には何人の技師の方がいますか。
松山 42人います。技師長が1人、副技師長3人、8人の主任が各部門に専従でいて、若い技師が各部門をローテーションして回っています。
岩田 システムを取り扱っているのは3人の技師が担当しています。
小倉 8人の主任の内訳は。
松山 血管造影、CT、アイソトープ、MRI、放射線治療、画像情報、一般撮影、安全管理です。
患者さんと信頼関係を築く
小倉 どうして放射線技師を目指そうと思ったのですか。
松山 そもそもそういう職種があることを知らなくて、高校のころ、進路を考えている時にたまたま冊子を見ていて知りました。いま思うと、そのころ放射線に興味があって、専門に学んでみたいと思って進学しました。
岩田 姉が看護師で、医療現場での仕事の話を聞いていたのと、手に職と言われるように、資格を持っているのがいいと思って目指しました。
小倉 実際に現場で働くようになって、心掛けていることは。
岩田 患者さんを不安にさせたくないので、話し方は極力気を付けてやっています。また、検査によってはきつい体勢もあるので、どうしたら負担がかかりにくいような検査をできるか考えています。
松山 技師になったころ、上司から最初に患者さんの接し方について、徹底的に指導されました。例えば、ホテルマンと同じ感覚で、ワントーン上げて明るく話すように言われたことを今でも実践しています。
小倉 まさにサービス業だね。医者はあんまりやっていないよね。
松山 患者さんの目線になりますね。上から話さないようにしています。
岩田 それが普通で、当たり前のように育てていただきました。
小倉 苦労していることは。
松山 普通の検査ですと、1回行ったら、その患者さんと次にお会いする機会は少ないのですが、放射線治療の場合、一度始まると、毎日患者さんが通ってこられて、毎日顔を合わせますので、コミュニケーションを取って、患者さんと信頼関係を築くことが大事になってくると思います。
小倉 一般撮影のレントゲンよりも患者さんと接する機会は多いですか。
松山 毎日、決まった時間に顔を合わせますので、気軽にお話する関係になることもあります。
小倉 そうすると、患者さんの緊張感もほどけやすくなりますね。
松山 初めて経験される方が多く、緊張される方もいらっしゃるので、リラックスして受けていただけるかが大切だと思います。
求められる的確な技術 照射の誤差は1ミリ以内
小倉 お仕事のやりがいや誇りに感じていることは。
松山 メインが放射線治療になりますが、根治照射の方もいらっしゃれば、緩和照射の方もいらっしゃいます。痛みがある患者さんに照射して、痛みが和らいだり、引いたりした時に、「ありがとう」と言ってもらえるだけで、疲れが吹き飛んで、モチベーションも上がっていきますね。
小倉 治療はだいたいどれくらいするんですか。
松山 早い方は10分もかかりませんが、長い方で1時間くらい。放射線の当て方にもよります。その治療を20回から30回、月曜日から金曜日まで毎日やります。
小倉 技師の皆さんはどのように治療に関わるんですか。
松山 放射線治療でも照射と機械を管理する担当がいます。かつては照射を担当していましたが、今は管理を担当しています。照射は、治療室に入ってもらって、患者さんの位置を合わせて、あてる場所が本当に合っているかどうか、写真を撮って確認しています。先生にも確認してもらい、位置があっていて問題なければ、放射線をあてていきます。
小倉 かなり的確な技術が求められますね。
松山 精度の高い照射だと1ミリ以内です。場所にもよりますが、頭部の誤差の許容範囲は1ミリです。
小倉 「これくらいでまあいいか」というのは許されないからね。
松山 放射線の量も多いので、あて損なうと影響が出てしまいますからね。当てる位置を間違えてはいけないので、かなり神経を使います。治療は基本的に技師2人でダブルチェックしています。
小倉 位置の確定が一番気を使うね。
松山 患者さんが寝ている間に、少しでも動くとずれてしまうということもあります。
小倉 長い場合は、少し動いてしまいそうだね。
松山 今は監視する技術が進んでいて、体の上に赤外線を反射するマーカーが付いていて、動くと数値が動いて、体が動いたことが分かる仕組みもあります。
小倉 もし患者さんが動いたら、どうするんですか。
松山 一度止めて、合わせ直します。
小倉 なかなか1時間もじっとしていられないよね。
松山 基本は仰向けで寝た状態になります。患者さんと話し合って、理解していただいています。
小倉 システムは、通常に動いて当たり前というのが大前提になるけれど、気を使っているところは。
岩田 動いていて当たり前、止まったらだめという感覚は常に持っています。基本的に、使っている医療者が少しでもいいシステムと思ってもらえるようなシステムにしたいと思って日々考えています。止まった時には、少しでも早くリカバリーできるように努めています。
小倉 システムの開発は、設計上こういうシステムにしたいという要望を技術者に伝えているんですか。
岩田 はい。現場で働いていて、こういうのが使いやすいというシステムの内容を提案して、一緒に開発していきます。
小倉 できあがって違うことはありませんか。
岩田 誤差を少なくするために話し合いを重ねています。デモ版が入った時に思い描いたものになるように修正しています。
技師としての使命感、喜びを発信してほしい
岩田 先生方のお立場から、放射線技師に期待することはありますか。
小倉 技師の人数は、かつて司町にあったころから比べると、倍以上の42人に増えました。人数が増えたことにより、症例数だけでなく、質も確実に上がっていると思っています。一方で、職員にはしっかり伝わっていないような気がします。もっともっと情報を発信していってもいいと思います。放射線部便りのようなものを発行して、「うちの放射線部はこんなにすごいんだ」というように、技師さんは技師さんの立場があって、面白さやミッション、喜びを伝えて、もっとアピールしてほしいと思います。病院の中の非常に重要な部門を担っていることは誰もが分かっているので、そこにとどまらず、もっと攻めよう。ディフェンスだけでなくオフェンスも心掛けて、将来にわたって、がんばっていただきたいと思います。
【放射線技師とは】
医師の指示を受け、検査や治療のためにX線やそのほかの高エネルギー放射線を人体に照射する医療技術者。レントゲンなどの一般撮影をはじめ、血管造影、CT、アイソトープ、MRI、放射線治療、画像情報、安全管理などの業務を担っている。
【過去の様子】