【日本ステリ㈱】器機の滅菌から薬の仕入れ管理、搬送まで
病院長×日本ステリ(株)
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
日本ステリ㈱ 河内 雅広 棚橋 正貴
手術室の清掃、器具のセットを担う
小倉 かつては看護師がしていた手術室の清掃や器具のセットという業務を担っていただいています。
河内 滅菌事業をメインにしている会社で、岐阜大学病院では、物流センター、薬剤部、材料部、手術室の清掃業務に携わっていて、延べ50人ほどが担当しています。
小倉 ステリライズ(Sterilize)という言葉自体が、英語で殺菌するとか滅菌するという意味ですよね。
河内 そうなんです。全国で約250、岐阜県内では7つの病院を担当しています。岐阜大学病院は司町にあったころからやらせていただいています。
小倉 具体的にどういう業務をされているんですか。
河内 メインは手術室の清掃から準備、滅菌、組み立てまでを約20人のスタッフが担当しています。病棟外来では、機材の回収から洗浄、セットを組み立てています。セットは滅菌パック、専用のケース、コンテナなどです。滅菌装置には3種類あり、高温滅菌、低温滅菌などを行っています。
小倉 どのように組み立てていくのですか。
河内 セットする前に、超音波洗浄機で高温処理して洗浄してから組み立てていきます。滅菌は機械がやりますが、洗浄は手で洗うものが多いので、重点を置いて取り組んでいます。
小倉 洗浄して滅菌する時は、セットにしてから滅菌するんですか。
河内 そうです。滅菌は袋のものもあれば、手術の道具が200くらい入っているセットもあります。それをコンテナと呼んでいますが、小さなものから大きなものまであります。手術は1日20~30ほどありますので、すべてのセットを組んでいます。
小倉 セットは何種類くらいあるんですか。
河内 300は超えていると思います。
小倉 手術の内容ごとに細分化しているということですね。
河内 各科に基本のセットがあります。一番多いのは整形外科ですね。また、長い手術も多いので、ほとんど使わない器機でもバックアップを用意しています
小倉 物流センターは。
棚橋 倉庫管理をしています。在庫管理をしながら、スタッフが各病棟を回り、仕入れ管理をしています。購入に関しては調達係でやっています。私たちは決定した商品を決まった数だけ病院側の決定に従って、在庫に置くという業務になります。
小倉 管理はバーコードですか。
棚橋 二次元バーコードを使って、ピッキングリストからピッキングして、配送する仕組みです。物品にはバーコードの入ったシールが貼ってあります。使った物品のシールを台紙に貼って、その台紙を毎朝回収して、病棟で使われたことを確認して、その分を補充していきます。
小倉 それ以外の物はどうされているんですか。
棚橋 外注品もありまして、その分は調達係が出すシールがあります。そのシールを物流センターで検品して、受領書を発行して業者に渡して、病棟に運んでもらっています。物流センターでは、10名ほどのスタッフが担当しています。薬剤スタッフは薬剤部から病棟外来まで薬を運ぶ搬送業務がメインになります。
小倉 薬の運搬業務もステリさんのお仕事なんですね。
棚橋 オーダーが来たら、ピッキングリストからピッキングしていきます。薬剤師のダブルチェックが入ってOKが出たら搬送に出るという流れです。人数は常時3名が担当しています。
小倉 定期の処方になりますか。
棚橋 定期は注射薬と内服薬に分かれています。注射薬は大きなワゴンでの搬送、内服薬はスーパーのかごのような入れ物が各病棟に分かれていて、カートで搬送する形です。臨時の場合は看護師の方が取りに来ることもあります。
個々の働き方に合わせたシフトづくり
小倉 当院からの契約は一括業務委託ですよね。
河内 3年単位で契約を結ばせていただいています。業務は朝7時半から夜10時までとなりますので、パートで来られている主婦の方はだいたい4~5時間ほど働かれるので、時間を穴埋めしながら、シフトを組んでいます。
小倉 パートの方も今の働き方に合っているところがあるんでしょうね。
河内 私は統括責任者として、会社からの指示の伝達をはじめ、勤務の管理や面接を行っています。入れ替わりもありますので、2カ月に1回ほど、新規の方の採用面接をしています。
小倉 これからの時代は、人をどうやって雇用するかが難しくなってきますよね。パートで務めている方は、どれくらいの期間で働いていますか。
河内 長い方は20年近い方もいらっしゃいます。融通が効くので働きやすいと感じていただいていて、調整しながら組んでいます。家庭の事情などで毎年どうしても2、3人の入れ替りはありますが、辞められる方は少ないです。ほかの病院では、医療スタッフにきつい言葉をかけられてやめていかれる方がいるのを聞きますが、大学病院ではそういうことはないので、本当に感謝しています。
「パートナー」として良好な関係を継続
小倉 岐阜大学病院の特性はありますか。
河内 洗浄や滅菌スペースを確保していただいて、環境が整っています。鋼製小物のセットもたくさんご用意いただいています。開腹セットは市中の病院で4~5セットですが、こちらは10セットあります。ほかの病院ですと、急いで滅菌しなければなりませんが、大学病院では次の日に基本セットを急いで使うというケースはないので、とても充実しています。
小倉 それは無駄の投資にならないの。
河内 使いすぎますと痛みも早いですし、急ぐと、アクシデントやインシデントの間違いが起きやすくなります。
小倉 医療スタッフとの連携はいかがですか。
河内 私たちの会社は滅菌して当たり前、洗浄して当たり前、掃除して当たり前と思われていて、通常は業者として扱われるのですが、今までの看護師長さんは、私たちのことを「パートナー」と呼んでくださり、そのように言っていただけると、看護師さんにも浸透して、良い関係、良い環境でお仕事をさせていただいていると思っています。
棚橋 以前もSPD(サプライ・プロセシング・ディストリビューション)業務に関わっていて、名古屋市内の病院の薬剤部にいました。SPDは、物品の供給や在庫などの物流管理を中央化したり、外注化したりすることで、診療現場の物品を柔軟で円滑に管理する方法として知られています。岐阜大学病院に来て、業務リーダーをやらせていただきましたが、初めての環境で緊張しましたが、スタッフや薬剤師の先生に、「分からないことは聞いてください」と言っていただき、助かりました。また、私を含めてパートスタッフに対して、薬の取り扱いなどについて、勉強会の機会を作っていただきました。向精神薬や毒薬の説明をして下さり、とても助かりました。スタッフも先生方とコミュニケーションが取れ、人間関係がうまくできているのがすごいと感じました。
小倉 大学病院のスタッフは、ドクターが約400人、ナースが約600人、それ以外は職員やメディカルスタッフを含めて800人くらい。800人がパートナーと呼ばれる方々です。下請けとは思っていなくて、むしろ対等だと思っています。根幹となる業務をお願いしていますから、信頼関係はパートナーシップがないとやれないと思っています。
患者さんの手術を遅らせない
小倉 何もないことが当たり前という業務が毎日続いていると思いますが、気を付けていらっしゃることは。
河内 一番大切なことは、患者さんの手術を遅らせないことと思っています。例えば、物を滅菌していなかったということだけは絶対にないように気を付けています。信頼を得るのはすごく時間がかかりますが、失うのはあっという間なので、大切にしていますね。
小倉 病院や航空機、F1チームには、高信頼性組織というのが基本にあって、本当に時間がない中でギリギリのチームメンバーで、しかし、信頼度を一つ間違えると大事故につながる組織。そういう仕事をしてもらっているのでパートナーですね。
棚橋 これから責任者として引き継いでいきます。前任者からの意思を引き継いで、ミスのない業務を続けていけるようにしていきたいです。
小倉 病院にとってかけがえのない業務をしていただいているのを実感しました。今後ともよろしくお願いします。
【過去の様子】